EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2014.06.20
昨年(2013年)の5月31日に100~1,000トンの段階的導入物質の登録が締め切られました。それからまだ1年しか経っていませんが、2014年5月にECHAで開催された第9回ステークホルダーデーで、2018年の1~100トンの段階的導入物質の最後の登録の準備について発表されています1)。
そこでこの時の資料を中心に注意すべきことを整理して紹介します。
ECHAでは、これまでの経験を反映させて、2016年までに、手続き、IT-ツール等を登録者に便利なように適合させ、スリム化させる計画を立てています。
他方、登録される方には、まず登録する物質を明確に特定することが重要になります。
ご承知のように段階的導入物質の登録に当たっては、同じ物質について複数の登録者がいる場合は、原則データの共同提出が求められています。そのためにはSIEFまたはpre-SIEFに参加する必要があります。このような複数の登録者の物質が本当に同じであるかを確認するためには、登録する物質を明確に特定する必要があるわけです。
例えば、ECHAから出された「Evaluation under REACH - Progress report 2013」によりますと、登録文書の順法チェックの結果、附属書VI第2節(物質の特定)、および附属書VII第7節(物質の物理化学的特性に関する情報)に関連した物質を特定するための情報の追加提出の要求が、突出して多く出されています。
物質の特定に当たっては、ガイダンス(Guidance for identification and naming of substances under REACH and CLP)に詳細な説明がありますが、以下の手順が必要になります。
そのためには、附属書VI第2節の物質特定で要求されている以下の項目を明確にする必要があります(環境省仮訳より引用)。
また、附属書VII第7節の物理化学的特性の情報は以下のデータが要求されています(環境省仮訳より引用)。
基本的には以上のデータから物質を特定し、SIEF(pre-SIEF)における物質の同一性を判断することになります。しかし、上記附属書VIの第2節の2.3.1~2.3.4については製造法や製品によって異なることが多く、どこまでの相違なら同じ物質であるかとするかは、SIEF(pre-SIEF)で十分な議論と合意が必要です。
特に不純物等を含有する場合の分類をどのようにするかは気になるところです。
上述の情報はすべてのトン数帯に共通して提出しなければならない情報です。さらに登録に当たっては、トン数帯が増加するに従い毒性学的情報および生態毒性学的情報の項目が順次追加されて要求されています。その詳細は、REACH規則第12条では「トン数に応じて提出しなければならない情報」に規定されています。
ただし1~10トンの登録では、第12条の第1項(b)で以下のような特例が設けられています(環境省仮訳より引用)。
ここで、附属書III「1~10トンの量で登録する物質に関する基準」は以下の通りです。
附属書III
第12条(l)(a)及び(b)で参照される1~10トンで登録する物質に関する基準は以下のとおり。
この規定によれば、物質がGHS分類で人の健康や環境への危険有害性がなければ、物理化学的情報だけで登録ができる可能性があります。
また、REACH規則第74条の「手数料および料金」の第2項では下記の規定があります。
附属書VIIの情報には、上記の第7節の物理化学的の情報以外に、第8節の毒性学的情報、第9節の生態毒性学的情報があります。しかし、人の健康や環境への危険有害性がなければ、代理人等の費用は掛かりますが、SIEF(pre-SIEF)での第8節、第9節の情報利用料(LoA)は不要となりますから、1~10トンの登録に係る費用は、第7節の自社での物理化学的データの取得のための分析費用で済むことになります。
なお、10~100トンの物質については、附属書VII、VIIIで要求される情報に加えて、暴露シナリオを含む化学品安全報告書(CSR)が必要になります。
2018年期限の登録を迎えられる企業の方は、上述なような背景を考慮されることも有用ではないかと考えます。
(林 譲)