EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2007.10.05
REACH規則に限らず、法律の文章は、規制国の文化や価値観をベースにして記述されていますので、基本的、常識的事項の記述は割愛されています。これらが、行間に込められていますが、この理解は困難です。当局のFAQ、RIPの報告書、EUのほかの法令や諸外国の規制などの情報から、行間を読み取る必要があります。
成形品の義務では、成形品の構成物質の登録義務はありませんが、意図的放出物質が登録対象になっています。その理由はREACH規則の本文や用語の定義には記載されていません。
アメリカの有害物質規制法(TSCA:Toxic Substances Control Act)では、FAQで次のような解説をしています。
REACH協議文書(2003年5月)のPoint63「成形品の上市の注意義務」で「上市する成形品から放出されるあらゆる物質の暴露によるヒトの健康と環境への悪影響を与えない使用をすることを確実にする」ことを求めています。この文言は、2003年10月の提案書では割愛されていますが、意図はここにありそうです。
成形品の意図的放出物質であっても、その使用のために登録されていれば、登録義務が免除されます。誰かがその使用を登録していればよいのか、自社のほかの成形品(製品)で登録してあればよいのか、REACH規則の条項には明記されていません。
REACH協議文書の「Point64 成形品中の物質の登録義務」の2項で「サプライチェーンの上流の行為者によって、その使用が登録されている物質には登録義務は適用しない」と記述されていました。2003年10月の提案書の第6条で成形品についての義務を同様に記述しています。
2006年6月に第1読会後の修正文書が公開されましたが、「サプライチェーンの上流の行為者によって」の部分が削除され、2006年12月の公布文書も同じ表現になっています。
「その使用」の登録は、自社のサプライチェーンの上流で登録されていることを求めていると解釈できます。
REACH規則では、ポリマーの登録義務はありませんが、そのモノマーは登録義務があります。成形品にはその構成物質の登録義務を明記していないのに、第6条でポリマーの義務を明記しているのはなぜでしょうか。ポリマーについて前文や用語の定義などで、登録の義務はないとしつつも記述が多くあります。また、第138条でポリマーの登録を示唆した文言もあります。ポリマーに関する考え方や登録免除の背景を見てみます。
REACH協議文書「Point16 ポリマーの登録」では、「67/548/EEC(危険物質の分類、表示と包装指令)」の危険のクライテリアを満たすポリマーの登録義務がありました。このなかでは、分子量が10,000ダルトン以上は対象外となっており、ポリマーは分子量が10,000以上という説が流れた背景です。
2003年10月の提案書の第14条で、ポリマーの登録は免除することと、ポリマー生産者と輸入者が未登録モノマーの登録義務が明確にされました。しかし、提案書段階での低分子量ポリマー規制の考えは残っているようです。さらに、第138条の見直し規定にもその意図がみられます。
注:ダルトンとは、大まかには通常の分子量と同じ意味です。
そのほか、第3条の段階的導入物質の定義で「欧州共同体又は1995年1月1日も若しくは2004年5月1日に欧州連合に加盟した国において製造されたが、本規則発効前の15年間において少なくとも一度も製造者又は輸入者により上市されたことがない物質(環境省訳)」があります。REACH協議文書、提案書(2003年10月)の用語の定義では、「その物質が欧州共同体内で製造されたが、製造業者または輸入業者によって1t以上の量が上市されなかったもの」と量の概念が示されています。
条項に書いていないことは、分からないのですが、いろいろな関連文書を読むことで、意図するところは見えてくるようです。
参考文書
http://ec.europa.eu/enterprise/reach/consultation_en.htm
(松浦 徹也)