EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2008.01.11
REACH規則は複雑で分からないことが多くあります。気になっている事項を、2点ご紹介します。
「ここが知りたいREACH規則」2007年12月14日付けのコラムで、成形品中の物質の義務についての疑問点をご紹介しました。このほかに、英国のガイダンス文書には奇妙なことが書かれています。
英国環境・食糧・農村地域省(DEFRA)でも、REACHに対する説明を行っています。その中に、2007年8月に更新された「Next steps - timetable」が掲載されています。
http://www.defra.gov.uk/environment/chemicals/reach/pdf/reach-timetable.pdf
この資料は、REACH施行のスケジュールが時間を追ってまとめられていて、参考になるものです。しかし、「成形品の物質の登録と届出」が「2008年 12月1日」となっています。EU加盟国のイギリスの政府機関のホームページに掲載されていることでさえ、このような状況です。域外の日本において、混乱があるのは仕方がないことかも知れません。
段階的導入物質の定義は、第3条20項に、次のように定義されています。
なお、b、cに関しては、2007年1月1日の加盟したブルガリアとルーマニアに対応するための修正提案が2007年7月26日に提出されています。また、c項の疑問点については、「ここが知りたいREACH規則」2007年11月2日のコラムに疑問点を書きましたので、それもご参照ください。
a、c項については、EU域外企業に適用されることは明らかですが、bについては解釈が分かれるところです。
REACH施行前15年間に「製造されていた」が「上市されなかった物質」についての意味です。この文言は、指令67/548/EECで届出が必要でなかった年間10kg以下でサンプル供給などをしていた企業に対して、その物質がELINCS掲載物質であっても予備登録を認めることになります。
ここで問題なのは、「加盟国で製造された」が「製造者又は輸入者」により上市されたことがない物質の表現です。ここに、なぜ「輸入者」が入っているのか、その意味がまだ分からないでいます。1つの考えとして、新規加盟国で「製造」した物質を、旧加盟国の業者が輸入したことを想定していると考えることができます。しかし、「新規加盟国で製造した」証拠があれば、その輸出先は問題にならないので、「輸入者」の文言を入れることは不要ではないかと考えます。このように考えますと、域外の企業は関係ないことになり、域内の企業だけを優遇しているように取れます。勘ぐれば、REACH規則の導入の目的の一つである、EUの化学企業に競争力付けさせるためとも読み取れます。
しかし、「輸入者」に意味があり、拡大解釈となり、解釈に無理があるかもしれませんが、「製造」には、「製造と輸入」を意味すると考えることができるとします。このように考えることができますと、これまで10kg以下の試験サンプルを輸出していた日本企業にも予備登録の恩恵が与えられることになります。
REACH規則には、まだまだ解釈に迷うところが多く、EU域外の企業にも同じ土俵上でビジネスができるように、運用されることを期待したいものです。
(担当:林 譲)