EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2008.07.18
前回に続いて、アメリカのTSCA(Toxic Substances Control Act:化学物質規制法)の解釈を紹介します。
成形品に関する解釈
TSCAでは、成形品(製品)および成形品の構成物質は製造前登録(PMN)の対象となりません。REACH規則のRIP3.8のような報告書は確認できていませんが、解釈の手引きになるQ&Aなどがあります。
米国国内で製造されている車に使用するブレーキ液を生産すれば、その物質はPMNを受けます。商業目的のために新規化学物質をアメリカに輸入する者はすべて通知を提出しなければならないとされています。適用除外されるのは、不純物やTSCAの定義による化学物質でない物質などです。
物質か混合物が製品から意図して取り除かれなく、または最終用途で商業目的による分離されなければ、製品の一部として輸入されると考えられます。
同じブレーキ液を輸送目的でドラム缶に封じ込めた場合は、容器から移されて、最終用途か商業目的を容器から別々にすることを意図するのでPMNの条件となります。
ここで、「意図」とは、輸入者が製品から内容物質を取り出すか、取り出しを望んでいることです。
したがって、製品(例えば、輸入車のブレーキ装置)の成分として輸入すると、ブレーキ液は製品からの取り出しを意図していないのでPMNが免除されます。
製品の一部であり「その製品と異なる別の最終用途や商業目的をもたない」場合は、製品の一部としてPMNが免除されます。
REACH規則の成形品ガイド(May 2008)の成形品中の物質、調剤の考え方と同じです。REACH規則では、製品(成形品)に含有する物質、調剤(例えば、自動車のミッションオイル)で、製品を破棄するまで、製品と一緒になっている場合は、成形品中の物質、調剤として扱われます。
製品の構成物質はPMNから除外をされます。しかし、ペンはインクを意図的にリリースするのでPMN対象となります。一方、キャンドルの燃焼生成物は製品の最終用途での化学反応から生じる物で、それ自体製造や商業的に使用されないのでPMN対象ではありません。
ただし、その新規物質がペンやキャンドルの製造前に流通する場合はPMNの対象となります。
布地は成形品であると考えられます。その布地が最終用途機能の全体または一部の形かデザインに依存して、それらがどんな商業目的も布地から構成物が分離せず化学構成の変化なしで、最終用途において機能することが要件です。
炭素繊維のFAQでは「繊維形状が特定の最終用途に不可欠」、「繊維形状が最終製品の必須の特徴」であれば成形品とするとしています。
しかしながら、化学的に変質をさせるような、布地を中間物として別の化学物質の製造に使用されるのであれば、それは成形品とは考えられません。
TSCAはREACH規則の制定に大きな影響を与えていると言われています。REACH規則の成形品ガイド(May 2008)の事例とともに読むと理解が深まります。
なお、TSCA関連の情報は下記にあります。
TSCA本文
http://www.access.gpo.gov/uscode/title15/chapter53_.html
TSCAインベントリ
http://www.epa.gov/opptintr/newchems/pubs/invntory.htm
PMNフォーマット
https://cdx.epa.gov/SSL/PMN/Outbound/Electronic_PMN_Form_version2.pdf
TSCA FAQ
http://www.epa.gov/oppt/newchems/pubs/qanda-newchems.pdf
(松浦 徹也)