EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2009.01.30
厚生労働省、経済産業省および環境省の各審議会の化学物質審査見直し委員会の合同会合(化審法見直し合同委員会)で、「現在の化審法の制度改正の必要性、新たな制度の在り方について」の最終答申が平成20年12月22日に提出されました。
答申の骨子は、WSSD目標を達成するための戦略とし、REACH、TSCAなどの国際的な化学物質管理の動向との整合性を意識した内容となっています。
○現状は、既存化学物質の安全性評価が十分になされないまま製造・使用されているが、基本的にすべての化学物質を対象にリスク評価を段階的に進めていく。
○一定量以上の製造・輸入量の化学物質すべてについて届出を義務化。届出情報などを用いてスクリーニング評価を行い、「優先評価化学物質」(仮称) を絞り込み、国がリスク評価を行う。
○リスクが高いと判断される物質の製造、輸入、使用などを規制。
○2020年までに、すべての化学物質について一通りの対応を終える。
各項目の概容は次の通りです。
1.上市後のすべての化学物質をリスク評価の対象とする体系へと転換
(1)製造・輸入数量、用途情報などの届出とスクリーニング評価の実施
上市後、一定数量以上の化学物質の製造者・輸入者に定期的な製造・輸入数量など、および用途情報を国に届け出る制度の創設。
届出情報などによるスクリーニング評価で低リスク物質とそれ以外のさらにリスク評価の必要なものに分類。後者を、優先評価化学物質(仮称)に指定し、公表。
(2)優先評価化学物質のリスク評価
優先評価化学物質のリスク評価は国が実施し、一定の法的関与の下でハザード情報、詳細用途情報などの収集を事業者の協力により進める。
用途情報などの暴露情報は、製造・輸入事業者および使用事業者からも情報提供を求める。
優先評価化学物質リスク評価の結果、低リスクと判断されない化学物質は、長期毒性試験データを用いたさらなるリスク評価を実施。ハザード情報が不足している場合、現行の有害性調査指示と同様に製造・輸入事業者対し、長期毒性試験結果の収集・提出を求める。
以上のとおり、上市後の化学物質の段階的な情報収集とリスク評価を進め、ハザード情報などが得られないことを理由にリスク評価が進まない状況を回避し、2020年を目標とした迅速かつ効率的なリスク管理を進めることが期待できる。
優先評価化学物質は製造・輸入数量の変動、用途変更などへの対応を考慮し、定期的な見直しを行う。
現行法で製造・輸入数量の届出を義務付けて、管理対象としている第2種および第3種監視化学物質については、制度上廃止する。
2.新規化学物質事前審査制度の高度化
(1)事前審査におけるリスク評価の実施
国が優先評価物質を中心としたリスク評価を実施していくには、新規化学物質についても上市前の審査の際、従来のハザード評価に加え、上市後に想定される製造・輸入数量と予定用途に着目したスクリーニング評価を実施し、低リスクと判断できないものを優先評価化学物質に分類し、上市後の化学物質と同様にリスク評価を実施する。
(2)審査済み化学物質の名称公示のあり方
新規化学物質の重複申請を排除するには、IUPAC名称などによる公示、後発事業者による模倣防止、開発者の先行利益保護のためには、化学物質が特定できないような総称名による公示などを考慮すべきという意見があり、今後、知的財産制度の活用や名称公示までの適切な期間の設定等の評価、検討が必要である。
(3)QSARやカテゴリーアプローチの活用
試験に要する費用、期間の効率化、国際的な動物試験削減の要請に鑑み、化審法におけるハザード評価において、可能な場面より上記手法を活用することが適当である。
(4)少量の低リスク懸念新規化学物質の事前審査
少量新規化学物質は、制度の国際整合性を高め、事業者による主体的管理を推進。このため、低生産量の新規化学物質審査の特例制度との整合性を確保し、事業者単位(年間1tまで)で確認を行うことを基本とする。ただし、複数の事業者による重複が生じ、高リスクが懸念される申出については、少量新規としての確認を行わない。加えて、国は立入検査により、事後的に確認するなどの措置を行う。
(5)低懸念ポリマーの確認制度の創設
平均分子量、含有低分子の量、官能基などから判断して低懸念とされるポリマー (PLC)は、判断基準 (PLC基準)および審査制度の国際調和の観点から、事業者から新規化学物質がPLC基準に該当する旨の確認の申出に基づき、国がその確認を行った場合には、審査を不要とする。また、立入検査により、PLC基準への該当の確認を事後的に行うなどの措置を検討する。
3.厳格なリスク管理措置等の対象となる化学物質の取扱い
(1)第一種特定化学物質に関する国際整合
POPs条約で新たな化学物質が追加された場合に、化審法での規制措置の担保やエッセルシャルユースを一定の条件下、化審法で許容できるようにし、その場合、第一種特定化学化学物質が特定市場で流通する可能性に対し、川上事業者から川下事業者へ安全性や適切な管理などの情報の提供や、事業者による一般消費者への第一種特定化学物質使用製品の適切な情報提供など厳格な管理が必要。
(2)第一種監視化学物質に関する情報提供の強化
第一種監視化学物質による環境汚染の未然防止のため、第一種監視化学物質および使用製品を譲渡、提供する場合、その化学物質が第一種監視化学物質である旨および含有製品である旨、当該物質の取扱方法などの事業者間情報伝達制度の導入。
(3)高リスク懸念化学物質に関するリスク低減措置など
段階的リスク評価を実施した結果、高リスクと判断された化学物質を第二種特定化学物質に指定し、製造・輸入の制限、取扱いの適正化、安全性情報の伝達によるリスク低減措置を講ずる。同様に、第二種特定化学物質使用製品についても、当該物質が環境中に放出される形態・状態などにより、高リスクと判断される場合は、第二種特定化学物質と同様のリスク管理措置を求める。
今般の制度見直しで導入される優先評価化学物質について、国は情報伝達義務を導入すべきかどうか引続き検討し、必要に応じて対応すべきである。
(瀧山 森雄)