EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2010.07.16
2010年7月1日に、ECHAは第2回の附属書XIV(認可対象物質リスト)に収載を勧告する候補として、8物質を発表し、2010年9月30日まで意見、特に認可要求から除外する用途に関するコメントの募集が開始されました。今回の8物質は、2010年1月13日にSVHCとして特定された物質から、優先するものとして出されています。第1回に勧告された7物質と合わせますと、合計15物質となります。これらの状況を以下の表にまとめました。
今回、DIBPが勧告されています。前回、DEHP、BBP、DBPの3種類のフタル酸エステルが勧告されています。これらの4種類のフタル酸エステルは、いずれも生殖毒性カテゴリ2の有害性があることからSVHCに特定されています。そのため、先の3種の"Sunset date"と、今回勧告されたDIBPの"Sunset date"をできるだけ近づけるとしています。
candidate list パブリックコメント期間 | candidate list公布日 | 附属書XIV収載優先物質(認可対象物質)勧告のためのパブコメ期間 | 欧州委員会への附属書XIV収載勧告日(認可対象物質) | 附属書XIV収載日から認可申請期限日までの期間 | 附属書XIV収載公布日からSunset dateまでの期間 | |
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第1回 附属書XIV(認可物質リスト)収載の勧告 | ||||||
5-tブチルー2,4,6トリニトロ‐m-キシレン(ムスクキシレン) | 2008年6月30日 ~ 2008年8月13日 |
2008年10月28日 | 2009年1月14日 ~ 2009年4月14日 |
2009年6月1日 | 24カ月後 | 42カ月後 |
4,4'-ジアミノジフェニルメタン(MDA) | 24カ月後 | 42カ月後 | ||||
短鎖塩素化パラフィン(C10~13)(SCCP) | 27カ月後 | 45カ月後 | ||||
ヘキサブロモシクロドデカン(および全ての主要なジアステレオマー) | 27カ月後 | 45カ月後 | ||||
フタル酸ビス2-エチルへキシル(DEHP) | 30カ月後 | 48カ月後 | ||||
フタル酸ベンジルブチル(BBP) | 30カ月後 | 48カ月後 | ||||
フタル酸ジブチル(DBP) | 30カ月後 | 48カ月後 | ||||
第2回 附属書XIV(認可物質リスト)収載の勧告 | ||||||
フタル酸ジイソブチル(DIBP) | 2008年8月31日 ~ 2009年10月15日 |
2010年1月13日 | 2010年7月1日 ~ 2010年9月30日 |
? | 最短12カ月 | 最短30カ月 |
三酸化二砒素 | 18カ月後 | 36カ月後 | ||||
五酸化二砒素 | 18カ月後 | 36カ月後 | ||||
クロム酸鉛 | 21カ月後 | 39カ月後 | ||||
ピグメントイエロ‐34 | 21カ月後 | 39カ月後 | ||||
ピグメントレッド‐104 | 21カ月後 | 39カ月後 | ||||
リン酸トリス(2-クロロエチル) | 24カ月後 | 42カ月後 | ||||
2,4-ジニトロトルエン | 24カ月後 | 42カ月後 |
しかし、認可申請のために少なくとも12カ月に期間を取るとしています。認可申請は"Sunset date"の18カ月前まで出すことが求められています。これらの関係を以下の図に示します。この図からわかりますことは、第2回の勧告の附属書XIV収載決定は、第1回の収載決定から遅くても18カ月後までには出されることになります。
欧州委員会に、2009年6月1日にECHAからの第1回の附属書XIVに収載する7物質を認可対象物質とする勧告が提出されていました。しかし、1年以上経過した2010年7月10日現在、欧州委員会からは収載決定の発表は出されていません。REACH規則には、欧州委員会が勧告を受領してから決定までの期限についての規定が設けられていませんが、少し時間がかかり過ぎているように思います。この原因についての詳細な情報を入手できていませんが、CLP規則の発効に伴い、"制限条件の不整合"や"認可要求を除外する用途"の説明理由に矛盾があるために、紛糾しているのではないかと想像します。
次回のコラムでは、"除外の理由"の説明から、少し話題のもととなる情報を紹介したいと思います。
(林 譲)