EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2012.01.20
2011年6月15日から9月14日まで意見募集が行われていました附属書XIVに収載する認可対象物質の第3回の勧告案が、2011年12月20日にECHAから欧州委員会に提出されました1)。 また、2010年12月17日に出されていました第2回の勧告物質2)と合わせて表にまとめました。
エントリー 番号 |
物質名 | ECNo | 附属書XIV 収載理由 | 認可申請期限*1 | |
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第2回勧告 附属書 XIV 収載物質 |
7) | フタル酸ジイソブチル (DIBP) | 201-553-2 | 生殖毒性1A | 発効から18カ月後あるいは2013年8月21日のいずれか遅い日 |
8) | 三酸化ヒ素 | 215-481-4 | 発がん性1A | 発効から21カ月後あるいは2013年11月21日のいずれか遅い日 | |
9) | 五酸化ヒ素 | 215-116-9 | 発がん性1A | ||
10) | クロム酸鉛 | 231-846-0 | 発がん性1B 生殖毒性1A |
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11) | ピグメントイエロー(C.I.34) | 215-693-7 | 発がん性1B 生殖毒性1A |
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12) | ピグメントレッド(C.I.104) | 235-759-9 | 発がん性1B 生殖毒性1A |
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13) | トリス(2-クロロエチル)フォスフェート (TCEP) |
204-118-5 | 生殖毒性1B | 発効から24カ月後あるいは2014年2月21日のいずれか遅い日 | |
14) | 2,4-ジニトロトルエン (2,4-DNT) | 204-450-0 | 発がん性1B | ||
第3回勧告 附属書 XIV 収載物質 |
(15) | トリクロロエチレン | 201-167-4 | 発がん性1B | 発効から18カ月後 |
(16) | 三酸化クロム | 215-607-8 | 発がん性1A 変異原性1B |
発効から21カ月後 | |
(17) | 三酸化クロムとそのオリゴマーから生成する酸:下記のグループ クロム酸 重クロム酸 クロム酸および重クロム酸のオリゴマー |
231-801-5 236-881-5 未指定 |
発がん性1B | ||
(18) | 重クロム酸ナトリウム | 234-190-3 | 発がん性1B 変異原性1B 生殖毒性1B |
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(19) | 重クロム酸カリウム | 231-906-6 | 発がん性1B 変異原性1B 生殖毒性1B |
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(20) | 重クロム酸アンモニュウム | 232-143-1 | 発がん性1B 変異原性1B 生殖毒性1B |
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(21) | クロム酸カリウム | 232-140-5 | 発がん性1A 変異原性1B |
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(22) | クロム酸ナトリウム | 231-889-5 | 発がん性1B 変異原性1B 生殖毒性1B |
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(23) | 硫酸コバルト(II) | 233-334-2 | 発がん性1B 生殖毒性1B |
発効から24カ月後 | |
(24) | 塩化コバルト | 231-589-4 | 発がん性1B 生殖毒性1B |
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(25) | 硝酸コバルト(II) | 233-402-1 | 発がん性1B 生殖毒性1B |
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(26) | 炭酸コバルト(II) | 208-169-4 | 発がん性1B 生殖毒性1B | ||
(27) | 酢酸コバルト(II) | 200-755-8 | 発がん性1B 生殖毒性1B |
*1:認可を取得していなければ製造、使用ができなくなるSunset dateはいずれも、認可申請期限から18カ月後です。
第2回の勧告については、2011年9月28日に既に委員会での投票が終わり、WTOへのTBT通告も終わっています3)。近々OJに公布されるものと推測されます。
第3回の勧告の説明文書では、発効は2013年2月と仮定して認可申請期限を説明しています。これによりますと、エントリー番号(15)は、認可申請期限は2014年8月になることになります。
なお、エントリー番号については、第2回勧告物質の委員会規則のドラフトで付されています番号を記載しています。第3回の勧告物質については、勧告の文書4)の掲載順序(認可申請期限の早いものから)に従って、エントリー番号を筆者が付しています。
第1回の附属書XIVに収載されたフタル酸エステルには認可免除の用途が特定されています。しかし、第2回、3回の意見募集では、幾つかの用途について認可免除の要望が出されていましたが、勧告ではこれらの要望は認められていません。
また、56条(3項)では、科学的研究には認可の条項は適用されませんが、製品・プロセス指向の研究開発(PPORD)については認可を免除するか、免除する場合にその数量を決めるとしています。
塩化コバルトについては、実験室での分析、特に、色分析には不可欠であるとして、認可申請免除の要望が出されていますが、これに対しては、上記の通り、科学研究には認可条項は適用されないと説明しています。ただし、科学研究は、第3条(23項)の定義で、年間1t以下で、管理された条件で使用する必要があります。また、軍事用の湿度の指示薬としては使用する場合については認可免除が適用されるかのコメントが出されていますが、原則的には軍事用でも認可免除は適用されないが、加盟国において防衛上必要であれば、認可の免除をする場合があるとしています5)。
REACH規則第60条の規定では、認可申請ができるのは、EU域内の製造者、輸入者、または/および、川下ユーザーとされています。すなわち、EU域外からは認可申請出来ないと説明されていたため、例え、その物質の市場が継続して存続しても、EU域外の製造者にとっては、ビジネスを継続することは大変困難なことになると予測されます。これに対して、第8条(2項)では唯一の代理人(OR)は、輸入業者の義務を果たすものとされていることから、ORが認可申請を出来るように折衝が進められていました。まだ、公式に発表はされていませんが、欧州委員会がORに認可申請を認める結論をしたとする情報があります。正確な情報を入手しましたら、改めてご紹介したいと思います。
4)http://echa.europa.eu/documents/10162/17232
/opinion_draft_recommendation_annex_xiv_third_en.pdf
5)http://echa.europa.eu/documents/10162/17232/rcom_cobalt_compounds_en.pdf
(林 譲)