EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2015.08.28
マネジメントシステムといえば従来からISO9001(品質管理)やISO14001(環境管理)があり、多くの企業でも取り組まれていることと思います。ISO9001および14001については現在改訂作業が大詰めを迎え、近々発行される見込みです。
製品含有化学物質管理の分野でいえば、電気電子分野の「IEC/TR62476(電気電子機器における物質の使用制限に対する製品の評価のためのガイダンス)」や日本の工業規格であるJIS Z7201(製品含有化学物質管理-原則及び指針)、それに準拠したアーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)の「製品含有化学物質ガイドライン」などが挙げられます。
また、RoHS指令に関連する各国の規格として、EUの整合規格である「EN50581(有害物質の使用制限に関する電気・電子製品の評価のための技術文書)」や中国の国家標準である「GB/T 31274-2014(電子電気製品における使用制限物質の管理体系 要求事項)」なども製品含有化学物質の評価・管理を求めています。
これらの文書類については本コラムでも取り上げており、読まれた読者も多いかと思います。
上述以外にも業界別等、さまざまな取組みが行われていますが、今回のコラムでは、アパレル業界の大手ブランドメーカー等で構成する「有害化学物質排出ゼロ(ZDHC)」グループが7月に公開した「化学物質管理システムガイダンスマニュアル」を紹介します。
アパレル業界がその製造工程で有害化学物質を使用し、途上国の従業員の健康や環境汚染を引き起こしているとして環境NGOのグリーンピースが大手ブランドメーカーを追及したことを受け、アパレル業界全体で化学物質管理に取り組むためのツールやプログラム開発を目的に2011年にZDHCグループが設立されました。
ZDHCグループは「2020年までにサプライチェーン全体の有害化学物質排出をゼロにする」ことを目標として掲げ、製造時使用制限物質リスト(MRSL)、工場の監査プログラムやその試行結果などを順次公開してきましたが、今回新たに「化学物質管理システムガイダンスマニュアル」を公開しました。
ZDHCの化学物質管理(CMS)の構成要素を表に示します。各要素はPDCAサイクルに基づいた5つのフェーズに体系化されています。また、各要素はさらに細分化されており、細分化された要素ごとに、ZDHCが定めた監査項目が併記されるとともに、「基礎的な項目」「さらに取り組むべき項目」「先進的な取り組み項目」の3段階に分類され、組織が段階的に取り組むことが可能な構成となっています。
【Plan:計画段階】 | 【Do:実行段階】 |
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1 CMSへのコミットメント 1.1 経営層による表明 1.2 CMSの範囲 2 評価及び計画・優先順位づけ 2.1 使用・保管する化学物質の体系的な 特定と文書化 2.2 法規制評価 2.3 購買およびサプライヤー管理 2.4 化学物質のリスク評価 2.5 懸念のある化学物質および工程 2.6 目的と実施計画 |
3 化学物質管理 3.1 組織体制 3.2 教育 3.3 文書類の整備 3.4 文書管理 3.5 化学物質管理業務の実践 3.6 緊急時対応 |
【Check:監視段階】 | 【Act:見直し段階】 |
4 監視 4.1 監視及び測定(継続的改善) 4.2 内部監査 4.3 外部監査 4.4 変更管理と是正対応 |
5 マネジメントレビュー 5.1 使用する化学物質の情報開示 5.2 ステークホルダーレビュー 5.3 マネジメントレビュー |
なお、ZDHCの製造時使用制限対象物質(MRSL)は、フタル酸エステル類など16物質群、約150物質を収載しており、各物質について、混合物メーカーに対する要求事項として含有制限値を、混合物を用いて部品や製品を製造するメーカーに対して製造時の意図的添加の禁止を求めています。
このMRSLと本マニュアルを組み合わせることで、源流となる混合物の管理とそれら混合物などを用いた製造工程を管理し、製品含有化学物質はもとより、製造時の労働安全衛生や環境排出の管理も包含した内容となっています。
今回取り上げたZDHCの「化学物質管理システムガイダンスマニュアル」は、アパレル業界のサプライチェーンを対象としたものであるため、他業界にとってはすべてが当てはまるものではないかもしれませんが、自社における化学物質管理の具体化を検討する上で本マニュアルの内容は参考になるものと考えます。
(井上 晋一)