ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

2017.04.28

REACHにまつわる話(67)-認可対象物質(附属書XIV収載物質)に関する最近のニュースから-

今回は、認可対象物質(附属書XIV収載物質)の最近の動きについてご紹介します。

1.認可対象物質(附属書XIV収載物質)勧告案の意見募集について

ECHAから2017年3月2日に附属書XIVに収載する認可対象物質の第8次勧告案を公表しました。2017年6月2日迄意見募集が行われています1)。その内容を表1に示します。

#1につきましては「[1]と[2]とからなる反応生成物」として特定されていますが、収載案にはこのEC番号は記載されていません。ECHAの登録物質情報にはEC番号が記載されていますので、その番号を記載しています。また、登録物質情報には別名として「KARANAL」が記載されています。
 #2のNMPについては、既に収載勧告物質として検討されたものの収載が延期されているDMFやDMACと同じく工業的に広く溶剤と使用されている物質です。これらの物質の収載は、一緒に検討されるものと考えます。
 #7につきましては、フタル酸ジヘキシルの含有量を限定していますが、炭素数6から12のアルコールとフタル酸エステル類を幅広く包含すると解釈できます。
 #3から#6は、紫外線吸収剤で類似化合物を収載するとしたものと考えます。

なお、次節でご紹介します附属書XIVへの収載決定までには時間が掛かっていることから考えますと、これらの物質が附属書XIVへ収載されるのは、1から2年先以降と考えます。

表1:第8次附属書XIV収載勧告提案
物質名 EC No. 有害性 主な用途
1 5-sec-ブチル-2-(2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-5-メチル-1,3-ジオキサン [1], 5-sec-ブチル-2-(4,6-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-5-メチル-1,3-ジオキサン[2][[1]及び[2]或はその任意の組み合わせの個々のすべての立体異性体を包含する](「KARANAL」)
(413-720-9)
vPvB 香料
2 1-メチル-2-ピロリドン(NMP) 212-828-1 発がん性 高温乾燥塗料溶剤、塗膜剥離剤、電子部品工程洗浄剤、合成用溶剤、抽出剤
3 2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(UV-328) 247-384-8 PBT、vPvB 紫外線吸収剤
4 2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール(UV-327) 223-383-8 vPvB 紫外線吸収剤
5 2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(tert-ブチル)-6-(sec-ブチル)フェノール(UV350) 253-037-1 vPvB 紫外線吸収剤
6 2-ベンゾトリアゾール-2-イル-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール (UV-320) 223-346-6 PBT、vPvB 紫外線吸収剤
7 フタル酸ジC6‐C12アルキルエステルフタル酸ジエステル:フタル酸ジヘキシル(EC No.201-559-5)0.3wt%以上を含むフタル酸、デシル、ヘキシル、オクチルジエステル混合物 271-094-0
272-013-1
生殖毒性 可塑剤等
2.第5次附属書XIV収載物質案について

第4次の附属書XIV収載物質は2014年8月14日に公告されました。それから、3年近くになりますが、第5次附属書XIV収載物質案が2016年9月21日にWTOにTBT通報がされています2)。通報の内容からしますと、2017年5月に公告される見通しです。この収載案を、表2に示します。表中の“勧告ラウンド”はECHAの草案(draft)、欧州委員会に勧告案を作成したラウンドを意味し、また勧告ラウンド欄の“6”のカッコ内年は、ECHAが第6次の勧告草案、勧告案を作成した年を意味します。
 今回は第5次の勧告案物質から1物質、第6次の勧告物質から11物質が選ばれています。「エントリー#」は附属書XIVに収載された物質に付与される通し番号です。

エントリー#40のアントラセンは、ベンゾ[a]ピレンを0.005%(w/w)以上含有するアントラセンオイルとしています。
 気になりますのはフタル酸エステル類については既に4物質(DBP、BBP、DEHP、DIBP)が附属書XIVに収載されていますが、今回7種の物質が収載されています。また前記表1の#7を含めますと、可塑剤に使用されているフタル酸エステル類の多くが附属書XIVに収載されることになり、EU域内ではこれらの物質が使用できなくなる可能性があることです。
 なお、通報されている委員会規則案の前文には、第5、6次の勧告案物質のうち、DMF、ADCA(Diazene-1,2-dicarboxamide)、ホウ酸、三酸化二ホウ素、四ホウ酸ナトリウム、Al-RCF、Zr-RCF等については収載を延期する説明があります。

表2:第5次附属書XIV収載案
エントリー
物質名 EC No. 勧告ラウンド
(32) 1-ブロモプロパン 203-445-0 6(draft: September 2014; final: July 2015)
(33) フタル酸ジイソペンチル 210-088-4 6(draft: September 2014; final: July 2015)
(34) 1,2-ベンゼンジカルボン酸、炭素数7の側鎖炭化水素を主成分とする炭素数6~8のフタル酸エステル類 276-158-1 6(draft: September 2014; final: July 2015)
(35) 1,2-ベンゼンジカルボン酸、炭素数7~11の分岐および直鎖アルキルエステル類 271-084-6 6(draft: September 2014; final: July 2015)
(36) フタル酸ジ-ペンチル、分岐および直鎖 284-032-2 6(draft: September 2014; final: July 2015)
(37) フタル酸ビス(2-メトキシエチル) 204-212-6 6(draft: September 2014; final: July 2015)
(38) フタル酸ジペンチル(DPP) 205-017-9 6(draft: September 2014; final: July 2015)
(39) フタル酸nーペンチル-イソペンチル 6(draft: September 2014; final: July 2015)
(40) アントラセンオイル 292-602-7 6(draft: September 2014; final: July 2015)
(41) コールタール、ピッチ、高温 266-028-2 6(draft: September 2014; final: July 2015)
(42) 4‐(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)フェノール、エトキシレート(4-tert-OPnEO)〔特定物質及びUBCB、ポリマー及び同族体を含む〕 5(draft: 2013; final: February 2014)
(43) 4-ノニルフェノールエトキシレート〔ノニル基は、炭素数9の直鎖および分岐のアルキル の全ての異性体の単独物、および、混合物(UVCB)、エトキシレートの付加数は、単一のものからUVCB,ポリマー等全てのものを含む〕 6(draft: September 2014; final: July 2015)

(林 譲)

1)https://echa.europa.eu/addressing-chemicals-of-concern/authorisation/recommendation-for-inclusion-in-the-authorisation-list
2)https://members.wto.org/crnattachments/2016/TBT/EEC/16_3955_00_e.pdf
  https://members.wto.org/crnattachments/2016/TBT/EEC/16_3955_01_e.pdf

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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