EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
ご質問の内容を以下のように整理します。
以下にご質問に対する回答を記載いたします。
同じ物質を他社に生産委託して自社ブランドで販売するというケースは、自社の設備能力を補う場合などに使われる商慣習です。物質が他社で製造され自社ブランドで販売される場合、自社の別プラントで製造されたものと解釈すれば同一生産者の製品と解釈されますので、委託先(B社)の生産物質も含めて1物質として唯一の代理人を立て予備登録することになります。
この場合注意しなければならないのは製造面での同一性の確認ですが、この点に関しては、貴社の仕様により、生産委託されていますので問題はないものと考えます。この場合、製造物(A物質)の製造責任は、すべて貴社に帰属します。また、貴社は、唯一の代理人を任命した旨をEU域内のサブライチェーンの輸入者に通知する義務があります。この場合、当該輸入者は唯一の代理人の川下使用者に位置付けられます。
なお、REACH規則ではその物質が一定の危険有害性の基準に該当する場合、安全性データシート(SDS)をその製品の受領者に提供する義務があります。さらに、当該物質(A物質)が年間10t以上の輸入量に達する場合は、CSR(化学物質安全性報告書)の作成義務があり、CSRを作成した場合には、当該物質登録後に暴露シナリオをSDSの付属書として添付することが定められています。
これらの義務は、貴社が任命した唯一の代理人の義務となりますが、貴社は唯一の代理人を任命した非EUの製造者として、上記に関連して必要となるデータ、情報を唯一の代理人に提供するなどの対応が必要となります。
唯一の代理人を任命すればそれ相当の費用負担はありますが、メリットとして、貴社経由で販売するものはすべて顧客(輸入者)の登録は不要であり、ビジネス拡大のチャンスとなります。
(2015年10月追記:委託製造業者が「EU域内で定常的に物質を製造する個人または法人」に該当する場合には、委託製造業者が「製造者」となり、登録などの義務を履行することが求められます)