EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
REACH規則では、SVHCの濃度計算基準は容器包装材の総量や容器包装済みの製品全体の重量に対する包装材に含有するSVHCの総重量比ではなく、異なる機能を持つ容器包装材ごとの重量に対する、としています1)。それらに含有するSVHCの重量比0.1%を超えて含有する場合、届出や情報提供の義務があります。
REACH規則では、フタル酸エステル類のうち、以下の4種類の物質がSVHCと特定されています。
フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)
フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)
フタル酸ブチルベンジル(BBP)
フタル酸ジイソブチル(DIBP)
個別の包装材に、これらの物質の一種が0.1%を超えて含有される場合は、それぞれに届出や情報提供義務があります。
ご質問では、フタル酸エステルがビニル袋単体で、重量比で18%含有されているとのことですが、上述の物質個々で0.1%以上含有する物質について、義務が発生することになります。
SVHCを重量比0.1%超えて含有する成形品を製造または輸入する事業者には、SVHCの総重量で1tを超えるとき、以下の場合を除いて届出の義務が発生します。
(1)通常条件での使用および廃棄に関して、人または環境への暴露を回避
できる場合
(2)物質が同一用途において既に登録されている場合
規制を受けるのは貴社ではなくEU域内の輸入業者です。SVHCの総重量が1tを超えるかどうかは、輸入業者が他の取引先から仕入れた成形品と合算して判断します。貴社としては、フタル酸エステルが自社と同一用途ですでに届出されていないか輸入業者に確認するとともに、川上企業から物質についての情報(含有量、用途、分類など)を入手しておき、輸入業者からの各種問い合わせに対応できる体制を構築しておくことをお勧め致します。
SVHCを重量比0.1%超えて含有する成形品では、顧客には最低限でも物質名と安全取扱情報を提供する義務があります。この義務は、消費者からの求めに応じて45日以内に無償で提供する義務もあります。
なお、紙パックやそれらを保護するために包むビニル袋等の包装材については、別途、容器包装指令が適用されます。容器包装指令では重金属4種類(鉛、カドミウム、水銀、六価クロム)の含有がそれらの総合で100ppmに規制されています2)。
また、EUには食品容器に関する規制があります。「食品への接触を意図したプラスチック材や成形品に関する指令2002/72/EC」と「食品への接触を意図したプラスチック材や成形品の構成物の移動テストに使われる模擬品リストを備えた指令85/572/EEC」です。指令85/572/EECは2007年3月30日付けで改定され、ANEXXIIIにフタル酸エステル類が追加されていますのでご注意下さい。改訂後の第2条には「プラスチック材および成形品は食品または模擬食品㎏あたりの構成物でその移動量が60mg超えてはならない」と規定しています。
参考資料
1)http://guidance.echa.europa.eu/docs/draft_documents/Draft%20Guidance%20on%20requirements%20for%20SiA_CARACAL.pdf
2)
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=CONSLEG:1994L0062:20050405:EN:PDF