EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
貴社が使用されているセラミックボンドに含有するホウ酸は、REACH規則の認可対象候補物質リスト(Candidate List1))に収載されている高懸念物質(以下、SVHC)であり、REACH規則の以下の義務を順守する必要があります。
工業用セラミックヒーターの接着工程で使用するセラミックボンド中のホウ酸が他の成分と反応して固化して別の物質になる場合と、接着工程時に接着剤は固化するがホウ酸成分がそのまま残留する場合に分けて考察します。
セラミックボンドが接着工程でホウ酸が反応する場合は、ホウ酸とは異なる別の物質になります。例えば、ホウ酸が反応して別の物質になるケースとして、ガラスが考えられます。この場合は、ガラスはUVCB物質として扱うとするという合意形成がされており、欧州ガラス産業常設委員会(CPIV)にて、以下の見解を発表しています。
「REACH規則7条2項の成形品中のSVHCの届出や、33条の情報提供の義務は、ガラスがSVHCとして特定されていなければ発生しない」
また、JEITAでは「電子部品中のセラミック物質表記に関するガイドライン(第2版)2)」において、「実際にはセラミックになった時点で化学反応により他の物質に変化しており、危険・有害物性等の評価の観点からはセラミックとしての物質の情報を伝達することが望ましいと」しています(Q.328、Q.367参照)。
以上より、セラミックボンドが固化し、ホウ酸が反応して0.1wt%以上含有しなくなる場合は、REACH規則のホウ酸に対する義務は生じないことになります。
セラミックボンドが固化はするが、ホウ酸が残留する場合は、成形品中のホウ酸の含有濃度が0.1wt%以上あるかを確認する必要があります。0.1wt%以上の場合は、REACH規則の届出や情報伝達の義務が生じます。
ご質問のケースでは、完成したセラミックヒーターは一体の成形品と考えられますので、下記の通り、成形品中のホウ酸の濃度は0.1wt%未満であり、上記の届出や情報提供の義務はないことになります。
成形品中のホウ酸濃度(%)≒0.3/800×2/100×100=0.00075(%)
以上いずれの場合も、成形品中のホウ酸含有濃度は0.1%未満となりますのでホウ酸のREACH規則の義務は適用されないことになります。
1)https://echa.europa.eu/candidate-list-table
2)http://home.jeita.or.jp/ecb/ceramic_guideline_2.pdf.pdf