ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

Q
2017年3月24日更新
Q.496 工業用セラミックヒーターの製造時に使用するセラミックボンドにホウ酸が2%含まれているとの情報をサプライヤから入手しました。完成した成形品は800gで使用する接着剤は0.3g程度ですが、この場合にREACH規則の成形品に関する義務への対応が必要となりますか?

貴社が使用されているセラミックボンドに含有するホウ酸は、REACH規則の認可対象候補物質リスト(Candidate List1))に収載されている高懸念物質(以下、SVHC)であり、REACH規則の以下の義務を順守する必要があります。

  • 成形品(ご質問では完成したセラミックヒーター)に、含有するSVHCを0.1wt%以上を含有し、年間1t超える場合は当該物質を化学物質庁に届出する。
  • 成形品に、年間1t未満であっても、0.1wt%以上の高懸念物質(SVHC)を含有している場合は以下の情報伝達をする必要がある。
    • 当該物質名を含む当該成形品を安全に使用するに十分な情報を川下企業に提供する。
    • 消費者から要求があった場合は、45日以内に無償で、当該物質名を含む当該成形品を安全に使用するに十分な情報を提供する。

工業用セラミックヒーターの接着工程で使用するセラミックボンド中のホウ酸が他の成分と反応して固化して別の物質になる場合と、接着工程時に接着剤は固化するがホウ酸成分がそのまま残留する場合に分けて考察します。

(1)ホウ酸が反応して固化し別の物質になる場合

セラミックボンドが接着工程でホウ酸が反応する場合は、ホウ酸とは異なる別の物質になります。例えば、ホウ酸が反応して別の物質になるケースとして、ガラスが考えられます。この場合は、ガラスはUVCB物質として扱うとするという合意形成がされており、欧州ガラス産業常設委員会(CPIV)にて、以下の見解を発表しています。
 「REACH規則7条2項の成形品中のSVHCの届出や、33条の情報提供の義務は、ガラスがSVHCとして特定されていなければ発生しない」
 また、JEITAでは「電子部品中のセラミック物質表記に関するガイドライン(第2版)2)」において、「実際にはセラミックになった時点で化学反応により他の物質に変化しており、危険・有害物性等の評価の観点からはセラミックとしての物質の情報を伝達することが望ましいと」しています(Q.328、Q.367参照)。

以上より、セラミックボンドが固化し、ホウ酸が反応して0.1wt%以上含有しなくなる場合は、REACH規則のホウ酸に対する義務は生じないことになります。

(2)固化せずホウ酸がそのまま残留する場合

セラミックボンドが固化はするが、ホウ酸が残留する場合は、成形品中のホウ酸の含有濃度が0.1wt%以上あるかを確認する必要があります。0.1wt%以上の場合は、REACH規則の届出や情報伝達の義務が生じます。

ご質問のケースでは、完成したセラミックヒーターは一体の成形品と考えられますので、下記の通り、成形品中のホウ酸の濃度は0.1wt%未満であり、上記の届出や情報提供の義務はないことになります。
 成形品中のホウ酸濃度(%)≒0.3/800×2/100×100=0.00075(%)

以上いずれの場合も、成形品中のホウ酸含有濃度は0.1%未満となりますのでホウ酸のREACH規則の義務は適用されないことになります。

1)https://echa.europa.eu/candidate-list-table
2)http://home.jeita.or.jp/ecb/ceramic_guideline_2.pdf.pdf

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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