安全は重要な懸案であることから、REACH規則における情報要求は企業の売上や従業員数には無関係に、化学品中の物質の生産量や用途および物質の特性などを対象としています。
中小企業の大部分は対象物質の生産量は年間1〜10tのレベルの登録であると考えられます。この場合には、規則の発効後11年間は登録が猶予され、登録料金も安く設定されます。また、このレベルの生産量の場合の情報要求は、年間10t以上の生産量の場合と比較すると軽くなっており、しかも、CSR (化学物質安全報告書) は作成しなくてもよいことになっています。
現行の法令では、新規化学物質の登録は年10kg以上からとなっていますが、REACH規則では登録が年1t以上に改められたことは、大企業はもちろんのことですが、中小企業者においてもこの面での負担が軽減されることになり、新規化学物質の開発に弾みがつくことになります。
また、REACH規則の影響を被る中小企業の多くは、川下ユーザーであることから、彼らに課される義務が軽減されるようにシステム設計がなされています。
中小生産者の便益
以下に中小の化学品生産者の主な便益について列挙します。
- 製品や工程指向の研究開発 (PPORD) に使用される物質に対するテストの免除。
1t/年以下の研究に対する登録の義務が免除されています。
- 低生産量物質に対する情報要求の軽減
1t/年以下の生産量、輸入量の場合の情報要求の免除、1t以上10t未満の物質については主にin vitroテスト要求。
付属書?のすべてのデータセットが供給される場合は、手数料は要求されません。
中小企業のコストをさらに低減するために的確なシステムが導入されます。すなわち、付属書の先行的な基準を守った物質にのみ完全なデータセットが創出され、提供されるために必要でその場合は、登録料は必要ではありません。
付属書においては、ほかの物質に対しては、物理化学的な情報のみの提供でよく、そのほかの毒物学的な情報やエコ毒学的な情報は入手可能なものを提供すればよいことになっています。
- 中小企業者の試験コストを回避するように情報要求は多様な方法が適用されています。
曝露の統制は、中小企業者の試験の回避を認めるように登録時の情報の削減を適正化しています(ANNEX?1.3)。
- さらに、多くの情報要求の引き金となっている数年分の生産量を累積、集計する現行法令の条項は取り下げられました。このことは、毎年、少量の物質を固定的に生産する中小企業者に利益をもたらすことになります。
- 予備登録プロセスの中で、管理とコストの負担は登録者間で部分的にシェアすることができます。
- コンソーシアムの形成が推奨されています。(11条)
このことによって、一式文書の準備コストをシェアすることで、中小企業者のかなりの費用が削減されます。
- 一式文書の準備コストをシェアすることで相当な金額を節減できます。
- 中小企業者には、低料金が適用されます。
- 年間1トン〜10トンの生産、輸入にはCSA(化学物質安全性評価) は要求されません。
- 動物実験に対する強制的なデータのシェアとその他のデータの要求に基づくシェアとは、中小企業者の登録の利益をもたらします。
川下ユーザー
- 特定用途
各登録は、すべての特定用途をカバーしていなければなりません。川下ユーザーは、サプライヤーが登録に際して、記載すべき用途を特定する権利をもっています。この場合、サプライヤーが安全性評価をすることになります。
川下ユーザーが用途を秘密にしたい場合は、川下ユーザーが安全性評価をしなければなりません。
- 川下ユーザーの1t/年以下の物質使用については、CSRは要求されません。
- 費用と時間を浪費するプロセスの回避
1つの企業に認められた許可物質は、顧客が許可された条件で使用するのであれば、認められます(56条)。
- サプライチェーンを下方に伝えられる情報
最適なSDSの使用は、セクター内ですでに熟知されているが、REACH規則の目的に適合するように拡張されます。
委員会は中小企業者が仕事を遂行するのを手助けするために、ガイダンスドキュメントとソフトウェアツールを開発しています(ガイダンスドキュメントに対する情報は下記のURLを参照してください)。
http://ecb.jrc.it/REACH/
(瀧山 森雄)