EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2007.06.08
REACH制定の大きな目的は、化学物質のリスクによる人の健康と環境への影響の防止することとEUの化学産業の競争力を強化することにあるとされています。
前者のためには、化学物質に関わる情報を衆知させることが重要です。このためにREACHで策定されている、サプライチェーンでのSDSや情報伝達の義務については、すでに本コラムで紹介しました。今回は、欧州化学品庁が保有する文書の公衆への開示について紹介します。
EUでの行政機関の保有する文書の公開を定めた法令には次のものがあります。
欧州化学品庁が保有する文書には、理事会規則(EC) No 1049/2001が適用されますが、下記の情報の開示は、関係者の商業的利益の保護を損なうものと通常みなされるとされています。
ただし、緊急状態など、人間の健康、安全または環境を保護するために緊急措置が不可欠の場合には、これらの情報は開示されます。
具体的には、欧州化学品庁が保有する情報はウエブサイトで公開されますが、情報の扱いは次のようになっています。
(I)公開されるのは下記の情報です。
(II)他方、公開されると登録者や関係者の商業的利益が損なわれるとする証拠を提出して化学品庁が認めれば、次の情報は公開されません。
日本においての、化学物質の安全性の情報の公開については、先にコラム『日本の「化学物質管理」に関わる新たな動き』で紹介しました、産業構造審議会化学・バイオ部会化学物質政策基本問題小委員会の平成19年3月発表の「中間とりまとめ」で、次のように提言されています(抜粋)。
「今後、我が国としては、安全性情報のうち、ハザードデータといった化学物質に固有の情報に関しては、公益の観点からも、それらが企業・行政のいずれに帰属するかを問わず、国民、NGO・NPO、事業者が広く一般的にアクセスしうるものとして公表していくことを基本とすべきである。但し、その公表に関しては、当該情報をハザードデータ/試験サマリー/一次データ(試験レポート)といった階層で整理するとともに、費用負担者の権利が残置されるべき部分については一定の配慮が必要になると考えられる。
特に、(国に提出される)企業が財産権を有する一次データに関しては、その財産権の保護の在り方についても検討を深めておく必要がある。一方、国が財産権を有する一次データに関しては、国の一定の関与の下での利用についても認めていくことを検討すべきである。」
(林 譲)