EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2009.12.04
2009年11月3日に台湾の行政院労働者委員会(CSNN)が既存化学物質届出制度の2009年第四版の既有化學物質提報作業指引(Guidance for Existing Chemical Substance Nomination:ECN)注1)を公開した。ECNは試験運用期間が2009年12月まで、全面運用期間(届出可能期間)が2010年12月31日(当初は8月)までと明確になりました。2009年4月からの動きを以下に整理してみます。
2009年4月 ECNガイダンス文書(初稿)およびECNツールのテスト版
2009年6月 ECN試行説明会・ECN試行開始
2009年9月 ECN試行説明会・化学物質のWeb届出試行
2009年11月 全面運用開始
2010年12月 12月31日で受付終了
2011年6月 既存化学物質リスト公表・新規化学物質届出
ECNは台湾REACHとも言われていますが、EU、米国、日本、カナダ、オーストラリアなどの諸外国の化学物質管理システムを参考にしながら、ECNを国内の化学物質関係団体などの意見を広く受け入れた既存化学物質の届出制度を構築してきました。
ECNの目的は、既存化学物質リストの作成、2008年公表の第1段階危険有害物質優先適用リストに次ぐ第1段階危険有害物質優先適用リストの作成、職場の作業者の安全と健康の進歩への対応や新規化学物質の届出制度の構築などとなっています。
期限内に届出しなければ、既存化学物質リストに登録されていない化学物質は新規化学物質とみなされ、新規化学物質としての届出が義務付けられます。
届出者は、1993年1月1日から2010年12月31日の期間までに、製造、輸入、処置や販売した実績のある物質について、製造者、輸入者、使用者や販売者などに届出が要求されています。
用語の定義や除外の範囲、物質命名原則、UBCB命名原則などはREACH規則と同様です。この中で気になるのが、除外項目に成形品がありますが、用語の定義では成形品は通常の使用条件では放出物質がないとされています。意図的放出物質の定義はありませんが、製品からの意図的放出物質は届出対象になる可能性があります。
届出情報はつぎのようです。
届出はツール(ZIPファイルのExcelの表)が用意されており、ツールの必要事項を記入して送付する仕組みです注2)。届出情報の営業秘密などの保護規定も盛り込まれています。
ECNはREACH規則の予備登録に似た仕組みですが、積極的な届出を事業者や関係機関に呼びかけています。
基本はEU REACH規則と類似した定義や運用ですが、成形品の意図的放出物質の扱いなど未確定情報があります。今後の動きなどに留意しておくことが必要なようです。
なお、新規化学物質届出は生産量により提出データが異なります注3)。
(1)10kg〜100kg
届出: 届出者の基本情報(製造場所など)、新化学物質の英文名称とCAS No.、物理的状態の記述(物質の外観、色)や保管や輸送の安全取扱情報など
(2)100kg〜1t
簡易届出: 基本情報(General Information)、 GHSによる分類と標示、安全取扱情報(Safe Use Information)、ポリマー弁別データ(Polymer Identification Data)など
(3)1t〜
完全届出:申告者の基本情報(General Information and Identification)、GHSによる分類と標示(GHS Classification and Labelling)、物質の製造、使用および暴露(Manufacture, Use and Exposure)、物理と化学の特性(Physical and Chemical Properties)、生態毒性情報(Ecotoxicological Information)、毒性情報(Toxicological Information)、分析方法(Analytical Methods)、安全使用情報(Safe Use Information)、参考の文献(Literature References)、評価の報告(Assessment Reports)など
既存化学物質と新規化学物質の届出データは差異があります。2010年6月から12月の間に既存物質として届出を推奨するコメントも増えているようです。
(松浦 徹也)
同英文抄訳注2:
http://csnn.cla.gov.tw/content/image/fck/file/Nomination%20Tool.zip(ZIPファイル)