EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2010.09.10
前回に続き、TSCA改正案の内容を紹介します。
「製造と加工の届出」の下院の改正案の内容は以下の通りです。
現行と同じく製造・加工の90日前までですが、対象が新規化学物質に加えて、新混合物や新用途についての届出が必要となります。
新用途については以下のように規定されています。
なお、用途がつぎに該当する場合以外は届出が必要です。
また、新規でない化学物質・混合物の安全基準が決定されていない場合は、製造・加工後6カ月以内に、その用途の"宣言書"の提出が必要です("宣言書"については「8条」の項に記載)。なお、他の事業者がその用途の"宣言書"を提出していても提出が必要です。
届出の内容には、(i)宣言書、(ii)最小データセット(MDS:前回のコラムを参照)、(iii)化学物質・混合物は、安全基準で適合あるいは適合し続けることが、合理的に予測できることの声明とその根拠が要求されています。
製造・加工の事業開始後30日以内の届出の要求は、現行と同じです。
「危険有害性物質と混合物の規制」は「優先、安全基準決定、および、リスク管理」と修正されています。
下院の提案では、現行の(a)項以降を(c)と項番をずらし、新たに「(a)安全基準決定の優先リスト」、(b)安全基準安全標準を決定」の二項が挿入されています。
優先リストとしては、改正TSCA施行時点で、ビスフェノールA、フォルムアルデヒド、n-ヘキサンやフタル酸エステル等の13種19物質とするとし、12カ月以内に少なくとも300物質がリストされます。安全基準が決定された物質は、リストから削除され、新たに物質が追加されます。除外物質を除いてすべての物質が対象となるように、リスト物質数は少なくとも300物質が保たれます。また、混合物についても優先物質にリストされます。(なお、上院の提案では具体的な物質はリストされておらず、施行18カ月以内に少なくとも300物質をリストすることになっています)。
安全基準は、化学物質・混合物への"aggregate exposure"を考慮に入れ、すべての用途に対して公衆の健康に危害を発生させないことが合理的に確実であること、および公衆の福祉を保護することを確保する基準として適用されるものです。
決定では、化学物質・混合物のすべてのライフサイクルの要因や蓄積の影響に関する情報が検討されます。製造者・加工者は安全基準を順守していることを証明する義務があります。
個々の物質や混合物の意図される用途が、既存の条件や管理を考慮した安全基準に適合しないと場合は、"a critical use"とされます。"a critical use"とされた場合、国の安全にかかわる、経済を崩壊する、代替物質がない、その便益が大きい等の理由で申請すれば、5年間ごとの更新申請が必要ですが、認められれば製造、加工、使用することができます。REACHの"認可"に類似した規制です。
現行の条項に、現在の製造・加工の「宣言書」の提出義務が追加されています。内容は、REACHの登録に要求されている情報の内容に類似しています。下院の改正案では、以下の内容の宣言書を施行1年、または事業開始後1年の早い時期に提出することが要求されています。
この宣言書は少なくとも3年に1回、または新しい情報が出れば直ちに更新することが必要です。
改正案の内容の一部だけ紹介しました。今後、上院、下院で修正内容の調整が行われ合意されることになります。最終的な修正内容がどのように落ち着くかわかりませんが、REACHの規制に近づくのではないかと考えます。今後の動きには注意する必要があります。
(林 譲)