EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2011.02.25
環境サミット合意を踏まえ、EUにおいてはREACHが施行されるなど、国際的に化学物質管理の強化が求められています。この流れにしたがって、わが国においても化学物質の安全性評価についての措置を見直すとともに国際的な動向を踏まえた規制合理化のための措置等を考慮にいれた化審法の改正が平成21年度に行われました。施行は、平成22年4月と平成23年4月の2段階で施行されることとなっていました。第2段階の施行が1カ月後に迫っています。
今回の改正化審法においては、従来の化学物質の有害性のみに着目したハザードベースの管理から、人や環境中の生物が化学物質に暴露される量(環境排出量)を加味したリスクベースの管理に移行されており、暴露量を把握するためにすべての化学物質について製造数量等の届出を行なうことになっています(表1参照)。
改正前の管理方法 | 改正法での管理方法 (平成23年度以降の届出) |
製造・輸入量の届出の必要性 |
---|---|---|
第一種監視化学物質 | 監視化学物質(名称変更) | 必要(改正前と同様) |
第二種特定化学物質 | 第二種特定化学物質(改正前と同様) | 必要(改正前と同様) |
第二種監視化学物質 | 一般化学物質または優先評価化学物質(新設) ※平成23年度の届出では、平成23年4月1日(予定)に官報で指定された物質のみ「優先評価物質」として、その他の物質は「一般化学物質」として届け出る。 |
必要 |
第三種監視化学物質 | ||
既存化学物質 | 一般化学物質または優先評価化学物質(新設) ※平成23年度の届出では、すべて「一般化学物質」として届け出る。 |
必要 ※法改正により新たに届出義務が生ずる。 |
新規公示化学物質 | ||
公示前の判定通知を受けた新規化学物質 |
以下に第2段階施行に関連するトピックスを記載します。
改正化審法では第8条において、毎年度、前年度の一般化学物質等の製造数量または輸入数量その他経済産業省令で定める事項を経済産業大臣に届出ることが規定されています。ただし、第2条2項(第1種特定化学物質)、同条第3項(特定第2種化学物質)のいずれにも該当しないと認められる化学物質、その他同条第5項(優先評価化学物質)に規定する評価を行う必要が認められないものとして厚生労働大臣、経済産業大臣および環境大臣(以降「3大臣」)が指定する化学物質を製造または輸入した場合の届出は不要です。(第8条1項三号)
上記の3大臣が指定する届出不要化学物質は、平成23年4月1日に3大臣から告示(仮称)される予定です。告示に先立ち、届出不要物質告示案が出され、案に対する意見(パプリックコメント)募集が平成23年1月24日に主管官庁等のHPに掲載されています(募集期間は平成23年1月24日~2月22日)。
上記のただし書きに該当する化学物質選定は以下の考え方に基づいています。
平成23年1月21日に薬事・食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会化学物質調査会、化学物質審議会審査部会および中央環境審議会保健部会化学物質審査小委員会において優先評価化学物質の審議が行われています※1。
審議会における優先評価化学物質の審議において確認が必要とされた4件の事項がありましたがその確認結果は以下のとおりでした。
(1)第二種監視化学物質 No.802 ニトロ三酢酸
本物件の発がん性について確認が必要となっていましたが、IARC上2Bに区分されており、事務局案どおり優先度マトリックスにおける発がん性クラス「2」が確認され、優先評価化学物質相当と判定されています。
(2)第二種監視化学物質 No.908 ジトリデカン-1-イル=フタラート
本物件の一般毒性の重大性に関する不確実係数の付与について確認が必要となっていましたが、不確実係数の付与の根拠としていた膀胱の移行上皮過形成が重篤な変化では無いことが確認されたことから、当該不確実係数は事務局案の「1」から「0」と修正することとされ、優先度は「中」と変更され、優先評価化学物質相当ではないと判断されています。
(3)第二種監視化学物質 No.164 1,3-ジクロロプロペン
本物件の藻類成長阻害試験の急性毒性と慢性毒性が通常想定される以上に大きく異なるため、慢性毒性値の信頼性について確認が必要となっていましたが、用量反応性については適切に評価されていることから、当該試験は信頼性があり、事務局案どおり有害性クラス「1」であることかが確認されていることから本物質は優先評価化学物質相当と判断されています。
(4)第二種監視化学物質 No.166 3,6,9-トリアザウンデカン-1,11-ジアミン
本物質のミジンコ遊泳阻害試験、ミジンコ繁殖阻害試験および藻類成長阻害試験の被験物質の純度が低いため、試験で得られた毒性値の信頼性について確認が必要となっていましたが、今後、不純物の成分の精査等を行う予定であり、現時点では信頼性の確認はできていない。したがって、本物質の判定は保留とされています。
優先評価化学物質の審議結果は、上記の4件の確認を経て、1)人健康影響の観点から優先評価化学物質相当と判定された物質として75物質、2)生態影響の観点から優先評価化学物質相当と判定された物質として20物質、が優先化学物質相当と判断されています(その中には両方に影響があるとされている物質があり、その結果、優先評価化学物質として重複して判定されている物資が7物質あります)。
平成22年12月の経済産業省製造産業局化学物質管理課化学物質安全室による「一般化学物質及び優先評価物質の製造数量等の届出 事前準備資料」中の「優先評価化学物質の指定について」には以下の記載があります。
「優先評価化学物質は、国によるスクリーニング評価を経て、随時、大臣によって指定される予定です(スクリーニング評価手法の考え方については、厚生労働省・環境省・経済産業省合同審議会で検討を行いました)。
ただし、平成22年度中は、平成22年度4月1日現在で第二種・第三種監視化学物質に指定されている物質の中から優先評価化学物質が指定される予定であり、具体的な物質選定については平成23年1月頃に予定されている審議会での議論を踏まえ、平成23年4月1日に官報告示される予定です。
上述しました関係省庁の審議会で審議された優先評価化学物質は、上記のように4月1日の官報告示に反映されることになると思われます。
※1 http://www.env.go.jp/council/05hoken/y051-108.html
(担当 瀧山森雄)