EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2011.06.17
2011年5月20日、REACH規則附属書XVIIのカドミウムの制限に関する修正を行う委員会規則〔COMMISSION REGULATION(EU)No 494/2011〕が官報に公示されました。
以下、その概要を紹介します。
共同体行動プログラムに関する1988年1月25日の決議により、議会はカドミウムによる環境汚染と闘うため欧州理事会を招集しました。
REACH規則附属書XVIIの表の23項には混合物および成形品中のカドミウムの使用と上市制限が規定されています。カドミウムおよびカドミウム酸化物は、発がん性カテゴリー1Bおよび水性生物急性、慢性毒性のカテゴリー1に分類されています。
1992年以降、カドミウムは理事会指令76/769/EECにより、ポリマーや塗料の着色剤、製品中のPVC安定剤およびカドミウめっきの使用は禁止されていましたが、指令76/769/EECは廃止され2009年6月1日にREACH規則に置き換えられています。
委員会はカドミウムとカドミウム酸化物に対するリスク評価とリスク削減戦略の結果を2008年6月14日付けでコミュニケーションを発行し、ろう材と宝飾品中のカドミウムの上市と使用制限を推奨しています。このコミューションにおいてカドミウムを含むろう材および装身具用宝飾品の使用からのリスクを制限する特定措置の必要性に触れています。
専門家およびホビイストはろう付プロセスにおいてろう材の蒸気に曝され、子供を含む消費者は、皮膚接触あるいは経口により宝飾品中のカドミウムに暴露されます。
委員会は、「宝飾品、ろう付合金およびPVC中のカドミウムの上市および使用に関する制限の潜在的更新の社会経済インパクトに関する調査」を委託していましたが、2010年1月にその結果が刊行されました。
亜鉛を含む塗料に関連する既存の規定類は、高亜鉛含有の定義を明確にすることを求めており、同様に塗装された成形品に関する塗料に関連する規定類についても明確に説明されるべきであるとしています。
2001年以降、欧州のPVC業界は、指令76/769/EECでは、未だ規制されていなかった応用品に、新しく生産されたPVC中に安定剤としてカドミウムの使用を抑制するため、ボランタリーベースで主導的に活動を行ってきました。この活動は、明らかにPVC中のカドミウムの使用の廃止を主導してきました。
カドミウム使用の禁止は、カドミウム汚染と闘うという目的に適うようすべての成形品に拡大されるべきです。
例外としてPVC廃棄物から生産される、再生PVCといわれる混合物は、特定の建設資材として使用するために上市の許容を認めるべきです。
再生PVCの使用は、カドミウムを含んでいる可能性のある古いPVCの再使用を許可するため、一定の建築資材の製造において促進されるべきです。その結果、これら建築資材にはカドミウムに対するより高い制限値が認められるべきです。これは、PVCがごみ処理場に投棄され、ダイオキシンやカドミウムの環境中への放出を引き起す原因となる焼却を回避することになるからです。この規則は、オペレータが、この規則の規定類への遵法を確実にすることを可能にするため、規則発効後6カ月以降に施行されるべきです。
新しいPVC中へのカドミウム含有が禁止されることにより、再生PVCから製造される建築資材中のカドミウムの含有は減少することが予見されます。それ故、カドミウムの制限値は適宜レビューされるべきです。ECHAはREACH規則第69条に規定されている制限のレビューに関与すべきです。
REACH規則の第137条(1)aにおける移行措置に関する規定に従い、REACH規則附属書XVIIの修正が必要です。この規則において適用される措置は、REACH規則第133条において確立されている委員会の意見に従うべきです。
第1条においてREACH規則附属書XVIIは、本規則の附属書にしたがい修正されること、および第2条において本規則は、EU官報公示日の20日後に発効し、2011年12月10日から施行されるとされています。また、この規則はすべての加盟国に完全にまた直接適用されます。
(注)施行日については、当初2012年1月10日でしたが、直後に修正官報により、2011年12月10に修正されています。
REACH規則附属書XVIIにおいて物質、物質群および混合物の指定と制限の条件を規定している表は以下のとおりに修正される。
23項の第2カラムにおいて、文節1~4は以下によって置き換えられる。
23項の第2文節において、文節8、9、10および11が以下のとおり追加される。
8. 重量比0.01%かそれ以上の濃度のロウ付材を使用してはならない。
ロウ付材は、もし、カドミウム(カドミウム金属として表示される)の濃度が重量比0.01%かそれ以上であれば、上市してはならない。
この文節の目的上、ロウ付とは、合金を用いた接合技術で450℃以上の温度で行われるものである。
9. 例外として、文節8は、防衛、宇宙応用におけるロウ付材や安全の理由でのロウ付材には適用されない。
10. 金属重量比で0.01%かそれ以上の場合は、以下を使用もしくは上市してはならない。
(1)宝飾品製造用のメタルビーズとその他金属部品
(2)宝飾品および模造宝飾成形品とヘヤアクセサリー
―ブレスレッド、ネックレス、指輪
―ピアス用宝飾品
―腕時計、リストウェア
―ブローチ、カフリンクス
11. 例外により、文節10は2011年12月10日以前に上市された成形品と2011年12月10日において50年以上前の古い宝飾品には適用しない。
以上のように、今回のREACH規則XVIIの改正では、カドミウムのプラスチック材への使用制限追加や再生PVCの適用除外、さらにろう材と宝飾品への使用が制限されています。
(瀧山 森雄)