EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2011.07.29
EU委員会は、指令2000/53/EC(ELV指令)の付属書IIの除外8(i)に対する科学と技術の進歩適用に関するステークホルダーコンサルテーション開始を発表しました1)。
このステークホルダーコンサルテーションは、関連する利害関係者グループに対し、2011年7月14日から同年9月11日の期間で意見を求めています。
このステークホルダーコンサルテーションの目的は以下のとおりです。
EU加盟国は、ELV指令(指令2000/53/EC)は第4条(2)(a)の要求((禁止4重金属の非含有要求)に従い、2003年7月1日以降に上市される車両の材料および構成部品には鉛、水銀、六価クロムおよびカドミウムを含まないことを確実にしなければならないとされています。
ただし、この規定からの除外を適用されている限定された数の製品は、同指令の第4条(2)(b)(iv)に従い、除外の適用範囲、除外期限および適用可能であれば表示要求を含めて付属書IIにその製品名が記載されています。付属書IIのいくつかの除外項目は見直し(レビュー)時期が義務付けられています。
直近でこれに該当するのが2012年1月1日に以前に見直しが義務付けられている除外項目8(i)です。というのは、この除外項目8(i)は除外期限日が2013年1月1日となっており、タイムリーに見直しを行う必要があるためです。このような背景がありEU委員会は、付属書IIの除外項目8(i)の見直しについて、Oeko-InstitutおよびFraunhofer IZMと契約を締結しています。この契約にはステークホルダーへの諮問と必要な場合の除外に対する修正文言の提案が含まれています。
今回のコンサルテーションの範囲は下表に示される除外8(i)です。
No | タイトル | 範囲と適用期限日 | レビュー日時 | 応募者/利害関係者 |
---|---|---|---|---|
8(i) | 積層されたグレイズのはんだを除くガラス上の電気グレイズ適用品のはんだ中の鉛 | 2013年1月1日以前に認証された型式の車両および同車両用部品 | 除外は2012年1月1日以前にレビューしなければならない | Antaya/ACEA/CLEPA and non-European automotive and automotive supplier associations such as JAMA,KAMA |
上表の除外8(i)について、Review of Exemption 8(i)AnnexII to Directive 2000/53/EC(ELV)の質問表に回答することを要請しています。
現行のELV指令付属書II除外8(i)が科学と技術の進歩の適用について、ステークホルダーコンサルテーションに取上げられるまでの経緯は以下のとおりです。
2008年8月の委員会決定おいて、はんだ中の鉛は付属書II除外8(a)および8(b)として以下のようになっていました。
8(a)Solder in electric circuit boards and other electrical applications except on glass
(ガラスを除く電子回路基盤その他電子応用品に適用するはんだ)
8(b)Solder in applications on glass
(ガラス上の電子適用品中のはんだ)
上述の除外8(a)、8(b)に対するOeko-InstitutおよびFraunhofer IZMからの勧告は2009年9月にCIRCAのページに報告されました。
上述の除外8の採用に関する勧告に従い、EU委員会は指令2000/53/EC付属書IIの第4次改版を行っています。修正付属書IIはEU官報(Commssion Decision 2010/115/EU of February 2010)に公示されました。
「指令2000/53/EC(ELV)附属書IIの除外8(i)への科学と技術の進歩の適用に関するOeko-institutの報告書2010の抄録」はネットでも見られます。
その抄録において除外8(b)の現行の文言は次のようになっています。
「2010年12月31日以前に認証された型の車輌および同車両用予備部品のガラス上の電気応用品中のはんだ。この除外は、2009年にレビューすることが義務となっており科学と技術の進歩が適用されなければならない」
この報告書抄録には当該ステークホルダーコンサルテーションの利害関係者からの報告について、背景、除外の正当性、共同テスト結果、共同テスト結果要約、テスト結果からの結論および利害関係者からの報告の引用先等の幅広い情報と課題等が報告されています。
最後にレビュワー(Oeko-instituteおよびFraunhofer IZM)としての最終勧告として以下の記述があります。
【レビュワーの最終勧告】
「除外8(b)の除外期限は、維持されるべきで、2012年末まで延長すべきである。積層されたグレイズ内部のはんだには特別な除外を導入し、除外期限を2014年とする。
一方、提案された鉛フリーソリューションはグレイズ適用品の鉛はんだを代替することができる十分な証明はできているが、積層されたガラス内部のはんだに有効であるという証拠は存在しない。そのため第4条(2)(b)(ii)により除外の継続を許容すべきである」
レビュワー(Oeko-instituteおよびFraunhofer IZM)による勧告は、以下のとおりです。
「2013年1月1日以前に認証された型の車輌の積層されたグレイズ中のはんだを除く、ガラス上の電気グレイズのはんだ中の鉛」および「積層されたグレイズのはんだ中の鉛」
上述の勧告は、委員会決定(2010/115/EU)において附属書IIの除外8(i)と8(j)となっています。
そしてコラムの冒頭に述べましたように、除外8(i)の除外期限が2013年1月1日であることから、ステークホルダーコンサルテーションの意見募集が開始されています。
2010年3月12日付けコラムにおいて関連事項を紹介していますので、ご参考ください。
(瀧山 森雄)