EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2013.01.18
2012年12月19日に新たに54物質がSVHCとして特定され、candidate listが更新されました。これまでに、これらの物質については本コラムで2回に分けた紹介しましたが、表1に纏めて改めて記載します。
今回54物質が追加されたことにより、すでにcandidate listに収載されていました84物質と合わせて合計138物質となります。ECHAの計画では2012年末までに136物質を特定する目標を立てていましたが、それを達成したことになります。
ECHAの発表によりますと、#1から#23までの23物質については、意見が提出されたことから加盟国委員会の審議を経てリストに収載されています。他の31物質は意見が出されなかったことから、加盟国委員会の審議にかけられることなくリストに収載されています。
# | 物質名 | EC 番号 | CAS 番号 | 有害特性 |
---|---|---|---|---|
1 | DecaBDE | 214-604-9 | 1163-19-5 | PBT、vPvB |
2 | ペンタコサフルオロテトラデカン酸 | 276-745-2 | 72629-94-8 | vPvB |
3 | トリコサフルオロドデカン酸 | 206-203-2 | 307-55-1 | vPvB |
4 | ヘンイコサフルオロウンデカン酸 | 218-165-4 | 2058-94-8 | vPvB |
5 | ヘプタコサフルオロテトラデカン酸 | 206-803-4 | 376-06-7 | vPvB |
6 | アゾジカルボンアミド | 204-650-8 | 123-77-3 | EQC |
7 | シクロヘキサン-1, 2-ジカルボン酸無水物 |
201-604-9, 236-086-3, 238-009-9 |
85-42-7, 13149-00-3, 14166-21-3 |
EQC |
8 | メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、 全ての異性体 |
247-094-1, 243-072-0, 256-356-4, 260-566-1 |
25550-51-0, 19438-60-9, 48122-14-1, 57110-29-9 |
EQC |
9 | 4-ノニルフェノール,炭素数9個のアルキル基(分岐および直鎖)が4位の結合した物質、個別の異性体、および、これらの混合物で、UVCBおよび組成が特定された物質を含む | - | - | EQC |
10 | 4-(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)フェノール、エトキシレート | - | - | EQC |
11 | メトキシ酢酸 | 210-894-6 | 625-45-6 | 生殖毒性 |
12 | N,N-ジメチルフォルムアミド | 200-679-5 | 68-12-2 | 生殖毒性 |
13 | ジブチルジクロロスズ | 211-670-0 | 683-18-1 | 生殖毒性 |
14 | 酸化鉛 | 215-267-0 | 1317-36-8 | 生殖毒性 |
15 | 四酸化鉛(オレンジ鉛) | 215-235-6 | 1314-41-6 | 生殖毒性 |
16 | ホウフッ化鉛 | 237-486-0 | 13814-96-5 | 生殖毒性 |
17 | 塩基性炭酸鉛 | 215-290-6 | 1319-46-6 | 生殖毒性 |
18 | チタン酸鉛 | 235-038-9 | 12060-00-3 | 生殖毒性 |
19 | チタン酸ジルコン酸鉛 | 235-727-4 | 12626-81-2 | 生殖毒性 |
20 | ケイ酸鉛 | 234-363-3 | 11120-22-2 | 生殖毒性 |
21 | ケイ酸バリウム、鉛ドープ | 272-271-5 | 68784-75-8 | 生殖毒性 |
22 | 1-ブロモプロパン | 203-445-0 | 106-94-5 | 生殖毒性 |
23 | プロピレンオキシド | 200-879-2 | 75-56-9 | 発がん性 |
24 | フタル酸ジ-ペンチル、分岐および直鎖 | 284-032-2 | 84777-06-0 | 生殖毒性 |
25 | フタル酸ジ-イソペンチル | 210-088-4 | 605-50-5 | 生殖毒性 |
26 | フタル酸n-ペンチル-イソペンチル | - | 776297-69-9 | 生殖毒性 |
27 | エチレングリコールジエチルエーテル | 211-076-1 | 629-14-1 | 生殖毒性 |
28 | 塩基性酢酸鉛 | 257-175-3 | 51404-69-4 | 生殖毒性 |
29 | 塩基性硫酸鉛 | 234-853-7 | 12036-76-9 | 生殖毒性 |
30 | 二塩基性フタル酸鉛 | 273-688-5 | 69011-06-9 | 生殖毒性 |
31 | ジオキソ二ステアリン酸三鉛 | 235-702-8 | 12578-12-0 | 生殖毒性 |
32 | 脂肪酸鉛、C16-18 | 292-966-7 | 91031-62-8 | 生殖毒性 |
33 | シアナミド鉛 | 244-073-9 | 20837-86-9 | 生殖毒性 |
34 | 硝酸鉛 | 233-245-9 | 10099-74-8 | 生殖毒性 |
35 | 四塩基性硫酸鉛 | 235-067-7 | 12065-90-6 | 生殖毒性 |
36 | ピグメントイエロー41 | 232-382-1 | 8012-00-8 | 生殖毒性 |
37 | 塩基性亜硫酸鉛 | 263-467-1 | 62229-08-7 | 生殖毒性 |
38 | 四エチル鉛 | 201-075-4 | 78-00-2 | 生殖毒性 |
39 | 三塩基性硫酸鉛 | 235-380-9 | 12202-17-4 | 生殖毒性 |
40 | 二塩基性亜リン酸鉛 | 235-252-2 | 12141-20-7 | 生殖毒性 |
41 | フラン | 203-727-3 | 110-00-9 | 発がん性 |
42 | 硫酸ジエチル | 200-589-6 | 64-67-5 | 発がん性 |
43 | 硫酸ジメチル | 201-058-1 | 77-78-1 | 発がん性 |
44 | 3-エチル-2-イソペンチル-2-メチル-1,3-オキサゾリジン | 421-150-7 | 143860-04-2 | 生殖毒性 |
45 | ジノセブ | 201-861-7 | 88-85-7 | 生殖毒性 |
46 | 4,4'-メチレンビス-o-トルイジン | 212-658-8 | 838-88-0 | 発がん性 |
47 | 4,4'-オキシジアニリンおよびその塩 | 202-977-0 | 101-80-4 | 発がん性 |
48 | 4-アミノアゾベンゼン | 200-453-6 | 1960/9/3 | 発がん性 |
49 | 4-メチル-m-フェニレンジアミン | 202-453-1 | 95-80-7 | 発がん性 |
50 | 2-メトキシ-5-メチルアニリン | 204-419-1 | 120-71-8 | 発がん性 |
51 | ビフェニル-4-イルアミン | 202-177-1 | 92-67-1 | 発がん性 |
52 | o-アミノアゾトルエン | 202-591-2 | 97-56-3 | 発がん性 |
53 | o-トルイジン | 202-429-0 | 95-53-4 | 発がん性 |
54 | N-メチルアセトアミド | 201-182-6 | 79-16-3 | 生殖毒性 |
EQC:PBT,vPvB,CMR等と同等レべルの懸念のある物質(内部かく乱物質)
#1から#5の5物質は、PBTあるいはvPvBであるとしてSVHCとして収載されました。この中で#2-#5は、2011年に改定されたREACH規則附属書XIIIの基準でvPvBと特定されています。
#6、#7、#8は強い呼吸器感作性で人の健康へ、および#9、#10は生態系への内分泌かく乱物質として深刻な影響があることから、candidate listに収載されています。今回の特定で注目すべきことは、#10はそのものの特性からではなく、この物質が分解し、すでにSVHCに特定されている4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールを生成することからcandidate listに収載されていることです。
#10:4‐(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)フェノール、エトキシレート
4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール
#11-#54までの44物質はCMR物質としてcandidate listに収載されています。
candidate listに収載される物質、SVHC(その後、附属書XIVに収載され、認可対象になる物質)は1,500物質にもなると言われています。REACH規則が施行されてから5年間弱で138物質が特定されていますが、これからの約8年間で約10倍の物質が追加されますと、これまで以上の大きな負担が掛かってきます。今後は、SVHCへの対応は、業務への負担を少なくして、効果的に行うことが重要になると考えます。
REACH規則のSVHCの要求事項には、EU域内で使用する場合には日没日以降の認可の取得、EU域外で製造されたSVHCを含有する成形品を輸出する場合にはSVHCの届出、SVHCを含有する成形品の安全に使用するための情報提供があります。REACH規則においてこれらの要求をSVHCに課している背景は、可能な限りこれらのSVHCをより安全な物質に代替することにあります。この安全な物質への代替を推進するために情報提供が、インターネットのSubstitution Support Portal; SUBSPORTで行われています。このポータルサイトでは、企業からの提供情報や公開された文献等から、代替物質や代替技術の情報と共に代替の実例等200件以上の情報が紹介されています。自社でSVHC代替を検討する際に、参考にされるのが良いのではと思います。
(林 譲)