EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2014.01.24
REACH規則の重要構成要素のE(Evaluation)(評価)については第41条で規定されています。その規定では、トン数範囲ごとに登録文書の5%についてECHAは法令順守のチェックを行い、情報が不備・不足する場合には登録者に追加情報の提出が要求されます。
ECHAはREACH規則の規定に則り、2010年の第1回の期限の登録文書について法令順守のチェックの結果を2014年1月15日に発表しました1)。
今回のコラムではこの内容を簡単に紹介します。
発表によりますと、2010年の第1回に登録された1000t以上および100t以上の水性環境毒性の物質の評価が行われています。2010年までに登録された約2700物質についての1万9772の登録文書の5%、すなわち898件が評価されるべきことになりますが、実際は1130件が評価されています。
そのうち321文書は全面的な評価、809文書についてはターゲットを決めて評価が行われています(30:70の比)。また、共同登録された文書については、リード登録者とメンバー登録者の両方の登録文書の評価が行われています。その結果、5%の898件よりも多い評価が行われ、2010年の段階的導入物質約35%に相当する957物質のチェックが行われています。評価年ごとの内訳は下表の通りです。
評価年 | 評価のタイプ | 合計 | |
---|---|---|---|
全評価 | ターゲットを決めた評価 | ||
2010年 | 7 | - | 7 |
2011年 | 42 | 80 | 122 |
2012年 | 47 | 221 | 268 |
2013年 | 225 | 508 | 733 |
合計 | 321 | 809 | 1130 |
評価は、物質の同定の情報と安全情報に関して行われます。
全評価においては、安全に使用するに必要な項目すべてについて評価されます。他方、ターゲットを決めた評価では、選択された登録文書の特定の部分に焦点が絞られています。絞るにあたっては、ITスクリーニングにより標準化された1つのエンドポイント、あるいは数個のエンドポイントから深くチェックをするためにより多くのエンドポイントをチェックし、必要な場合は全評価がなされます。
なお、この期間には400件超の文書についてコンプライアンスチェックが行われていますが、この数値は上記の評価実績の数値には含めていないとのことです。
評価の結果は、下表の通りです。
評価結果 | 評価年 | 合計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
2010年 | 2011年 | 2012年 | 2013年 | 件数 | (%) | |
追加情報要求あり(件数) | 3 | 110 | 171 | 497 | 781 | 69 |
要求事項なし(件数) | 4 | 12 | 97 | 236 | 349 | 31 |
合計 | 7 | 122 | 268 | 733 | 1,130 | 100 |
評価文書の69%に対して何らかの情報追加要求が出されています。
今回公表された2013年までの評価において、追加情報要求が出された個々の内容について記述がありません。2013年の評価報告書において追加情報の提出を求められた内容はまとめて表されると思いますが、これまでに出されていた報告からは、物質の同定のための情報に不備・不足があり、その追加情報の提出要求が出されていました。
REACH規則のスタート段階であったとはいえ、物質の同定のための情報について、REACH規則の登録に要求される情報については周知が十分でなく、登録者の理解も不足していたことになります。
物質を安全に使用するためには、その物質の特性を正確に把握していることが重要であることは言うまでもありません。最近、日本国内では化学物質の事故が多発しています。REACH規則の登録で要求されていることは、言い換えると化学物質管理の基本であるとも言えます。改めて化学物質管理の現状を見つめなおし、改善すべきところは早急な対応が必要と感じます。
(林 譲)