EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2014.01.31
経済産業省のホームページにRoHS指令やREACH規則の対応状況の調査報告書(製品含有化学物質の情報伝達の実証調査)が掲載されています。報告書の化学物質管理に関する相談受付状況を整理すると下の表のようになります。
中小企業の方々の要望はEU法規制の初歩(基礎)的事項にあります。「ここが知りたいRoHS指令」「ここが知りたいREACH規則」は中小企業を対象としていますので、基礎的事項を解説したいと思います。
まず、企業対応で苦心しているSVHCや認可と制限の基礎的事項について改めて整理してみます。REACH規則の附属書XIVの認可対象のCandidate List収載物質(いわゆるSVHC)は、半年ごとに追加されています。附属書XVIIの制限物質も多環芳香族炭化水素(PAH)類の制限内容の追加や塗料中のカドミウムに関する制限内容の意見募集がでるなどの動きがあります。
附属書XVII に制限が規定されている物質、混合物または成形品に含まれている物質については、制限の条件に合致していない場合には製造、上市または使用ができません。
制限は「物質」と「条件」により規制されます。例えば、ベンゼンの条件は以下になります。
制限の該否の要件は具体的になっています。
RAPEXを見ますと、中国製玩具にフタレート(DINP、DIDP、DNOP)を含有しているとして輸入禁止措置がとられました1)。
REACH規則に適合していないとEUに輸出できないことが現実として起きています。今回の摘発は、DEHPが22.7重量%含有していたので、微妙な違反ではなかったのですが、含有化学物質の判定は難しく、監視レベルは高いことがうかがえます。
附属書XIVに収載された物質が認可対象物質です。認可対象候補物質がCandidate Listに収載されます。Candidate List物質から認可対象が少なくとも2年ごとに追加されます。
附属書XIVには、次項が記載されます。
なお、認可物質になってもCandidate Listにはその物質は残っています。
(1)物質が附属書XIV に含まれる場合
附属書XIVによる日没日以降では、次の場合以外はその物質を使用するために上市、または自ら使用はできません。
ただし、日没日の18 カ月前に認可申請がなされたがその決定がされていない場合、およびその用途に関する認可がサプライチェーンの直下の川下使用者に与えられている場合は除かれます。
また、川下使用者は、物質の用途がその用途に関してサプライチェーンの川上の関係者に与えられた認可の条件に沿っている場合には、附属書XIV収載物質を使用することができます。
(2)適用除外要件
科学的な研究開発における物質の用途には認可の義務は適用されません。
また、植物保護製品(農薬)やバイオサイド製品や燃料の使用などには適用されません。
(3)認可の申請
認可の申請は、化学物質庁に対して物質の製造者、輸入者および(または)川下使用者の1つまたは複数の者が認可の申請を行うことができます。
(4)認可の申請時の提出情報
紙数の関係で要点のみ抜粋しましたが、認可の要件はかなり複雑になっていて、認可のハードルは高く見えます。
附属書XIV収載物質(現在22物質)は認可を申請し、認可されなければ使用できません。認可の手順は、ECHAのリスクアセスメント専門委員会(RAC)および社会経済分析専門委員会(SEAC)で申請を受けて意見案がまとめられます。意見をまとめるにあたり、代替物質や代替技術に関する幅広い意見をウェブで募集します。
意見案は申請者に送付され、申請者はその意見に対して論証を送ることができます。両専門委員会は申請者の論証を考慮に入れて最終意見をまとめます。ECHAはEU委員会、加盟国および申請者に意見を送付します。
2013年12月13日、リスクアセスメント専門委員会および社会経済分析専門委員会が12月の会議で、ロールスロイス社が提出していたフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(Bis (2-ethylhexyl) phthalate:DEHP、CAS番号117-81-7)の認可申請に対する意見案に合意し、申請者へ通知したことを発表しました2)。
申請者による意見案への論証を踏まえ、最終的な認可決定はRACおよびSEACが決定するところまで来ています。早ければ数カ月で第1号認可がでる可能性があります。
ロールスロイス社以外でも認可申請をしています。
認可と制限を並べてみますと、日本語の語感からは認可より制限のほうが厳しく思えます。
認可については、附属書XIVに記載されている日没日以降に認可申請しているか、または認可を受けていなければ使用も上市もできません。認可申請は製造業者、輸入業者、川下ユーザーが単独または複数でまとまって申請します。申請ごとに使用によるリスク、代替技術などとの社会便益から評価されます。代替技術などはWebで第三者からのさまざまな情報を受け、それらを考慮して認可の可否、条件などが決まります。
認可を受け入れられるか否かは読めない部分が多々あり、両専門委員会の意見案に対する論証は申請者にとって負担が大きいものがあります。
一方、制限は製造業者、輸入業者、川下ユーザーによってその条件が変更できるものではありませんが、その条件外は使用できます。
認可では、先行申請者の許可を得て後続申請者が申請時の情報を引用できますが、若干ハードルが低くなる程度に思えます。
認可と制限のイメージは次です。
附属書XIV収載物質は事実上の使用禁止物質です。Candidate Listは附属書XIVの候補物質ですから、附属書XIVに収載される前に対応を考えておくことが肝要に思えます。
注:法規制の内容は環境省の翻訳文3)4)を引用し要約しました。
(松浦 徹也)