EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2015.04.24
欧州化学品庁(ECHA)は、4月1日のe-Newsで鉛およびその化合物の上市制限対象範囲の改定に関連するガイドライン案について、6月11日まで意見募集を開始しています。
REACH規則は、附属書XVIIエントリー63で宝飾品に関する鉛およびその化合物の使用を制限していますが、幼児が口に入れる可能性があり、0.05wt%超の鉛を含有する製品の上市や消費者向け製品中への使用制限を追加するREACH規則附属書XVIIの改定案が2014年10月に欧州委員会から公表されています(ガイドライン案のANNEX-5)。
制限対象製品の範囲を定義する基準の明確化が必要であると判断され、制限対象製品の用語定義の明確化や制限対象製品リストを提供するガイドライン案が作成されていました。
今回の意見募集はガイドライン案に対する意見募集です。
以下に今回の意見募集の対象となっているガイドライン案の概要を紹介します。
本ガイドラインの対象者は成形品の生産者、輸入者、および物流業者とEU加盟国の国家執行当局である。
鉛およびその化合物は消費者成形品の多様な材料中に存在しており、例えば特定の色または要求される機械的特性のような機能を供給するために成形品の生産過程において以下の態様で使用されている。
新エントリー63は、重大で不可逆的な神経毒性影響の可能性がある成形品による鉛の慢性ばく露により引き起こされる消費者、特に年齢6歳から36カ月の子供に対するリスク低減を目的としている。最もばく露が大きいのは幼児による成形品を舐める行為である。
本制限の適用範囲の定義では、子供の舐める行為および子供により口に入れやすいことが予期される以下の3条件に適合する消費者成形品を特に考慮している。
EU市場においては、以下の幅広いカテゴリーの口に入れやすい消費者向け成形品が特定されている。
スエーデン化学物質庁(KEMI)がEU市場で行ったテスト結果、EU市場で利用可能な子供が頻繁に口に入れ、他の規制法がカバーしていない消費者成形品の約10%は平均濃度が少なくとも1%の鉛を含んでいることが判明している。
口に入れる(Placing in the mouth)という概念は、フタル酸エステルに関するREACH規則附属書XVIIエントリー52に先例がある。
欧州委員会は、ECHAと連携し2014年に更新された概念の解釈に関するガイドラインを発行している。それはQ&A No 748としてECHAのwebsite上で利用可能である。このガイドラインによれば、「口に入れる(Placing in the mouth)とは成形品または成形品の部品を舐めたり、噛んだりするよう口に入れ、口の中に保持することである。対象物が単に舐められるだけであれば口に入れる(Placing in the mouth)とは見做されない」。
以下の場合、一般公衆向け成形品はこの制限の範囲内に含まれるかもしれない。
成形品の寸法については、用語「口に入れられる可能性(mouthability)」の適用範囲の定義には以下の2つの追加的な基準(criteria)が必要である。
RAC/SEACの意見および「一般公衆向け成形品中の鉛およびその化合物」に関す裏付け文書において提出された分析に基づく結論は、「本制限で表現されている成形品は、一般公衆向け成形品で、それらの成形品がすべての接触可能な部品中に鉛または鉛化合物(他のEU法令で規制されていない)を含んでいる場合に幼児により口に入れられる可能性がある成形品である」。
更に、文節2.2における議論に従い、本規制による成形品の該否はその適用範囲で定義している口に入れる可能性/接触可能性/通常および予期される使用条件のような概念を注意深く考慮した後に判断されなければならない。
本ガイドラインの附属書1は結果的に子供が口に入れることおよび接触可能であるとして、潜在的に制限の範囲内であると見做される消費者成形品の幅広いタイプの例を以下のように附属書において提供している。
更に、以下のカテゴリーの成形品は制限の適用範囲に該当するものと見做されている。
本ガイドラインにおいて、子供向け成形品の例示リストが附属書表1-Gに提供されている。
本ガイドラインは、以下のような多様な理由によって、本制限の適用範囲外の例を提供している。
更に、成形品カテゴリーに対しステークホルダーから提出された多数のコメントの分析に従って、ECHAの科学委員会(RAC/SEAC)は以下の結論に至っている。
(1)アウトドア製品
これらは通常は家庭外で見出されるので、少なくとも通常の環境下では、幼児が接触可能とは見做されていない。一般に、子供が室内および室外の両方で口に入れるような方法および合理的な最悪ケースのシナリオを考慮すれば、本来、室内用途が意図された消費者成形品へのばく露の確率がより高いことが想定されていた。しかし、主に、室外用途が意図されている、例えば、地面に置かれている彩色され、その寸法と外観のために子供が口に入れることができるガーデン用のホースは除外することはできない(附属書-3、図a参照)。
幾つかの除外については、安全性(例えば、重いまたは鋭利な潜在的に危険なガーデン用ツール、フィッシングギア等)、または衛生(例えば、スノースキー、フットウェア、花瓶、ガーデン用デコレーション)の理由で親がケアする当然のレベルを想定すれば大抵の室外成形品は通常または合理的に予見できる使用条件下では子供が接触できるとは考えられない。
室外成形品の例の概要は、附属書4に提供されている。
(2)塗装された成形品
パブリックコンサルテーションにおいて提出されたコメントにしたがい、塗装された成形品または成形品の部品(例えば、眼鏡フレーム、カーテンの重り)が調査された。塗装された鉛含有成形品からの潜在リスクが鉛のミグレイション防止における塗装の効果に依存していることが考慮される必要がある。この点に関するかぎりは、時間当り、0.05μg/cm2(0.05μg/h)の確立されているミグレイションのリミットが本問題を表現する適合する方法として考慮される。
成形品の少なくとも2年間の通常使用期間の摩耗テストシミュレーション後、もし塗装された成形品からの鉛のミグレイションがミグレイションリミット値以下であれば、成形品は十分に保護され、その故に、そのような成形品は、制限の適用範囲外であると見做される。
しかし、鉛含有のすべての塗装された成形品が適用範囲外であると見なされないため、適切にケースバイケースの判断がなされねばならないことに注意しなければならない。
2年間の摩耗抵抗は、鉛のミグレイション防止に十分な効果的であり、合理的な塗装の完全性の指標と見なされてきた。この方法は、エントリー27のニッケルのミグレイションに関連して使用されている方法を類推して使われ、既存の欧州標準EN 12472を参考にしている。
(3)中古成形品および在庫中の成形品
発効後1年以前に初めて上市された成形品に対し、緩和が適用される。それ故、執行可能性の理由およびForumアドバイスに従い、中古市場成形品および在庫は制限から除外される。
本セクションまたはガイドラインの附属書において、除外されるよう言及されていない多くのその他の消費者向け成形品タイプがある。それらに対しては、相当する量の鉛の成形品中への存在または不在についての現在の制限に結びつけるプロセスを通して利用できるエビデンスがない。
そのようなアイテムの例は、紙または純粋な繊維で作られた消費者向け成形品である。制限のナレイティブな適用範囲への該当のための、鉛化合物の存在について、関連するまたは疑わしい場合には、鉛含有またはミグレイションを決定するために関連する調査が顕在的に適用できる。
(瀧山 森雄)