EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2015.08.07
企業にとって順法違反、リコールなどは最も避けたいところです。EUでは、消費者向け製品のリコール等情報はRAPEX(緊急警報システム)で行われており、その状況は「ここが知りたいRoHS指令」「ここが知りたいREACH規則」のコラムやFAQで解説しています。
日本では、消費者向け商品について国民生活センターなどで評価しており、例えば消費者からの訴えにより「さわった指に苦味がした樹脂製の玩具」の調査などを行い、リコール情報も出しています。
CPSIAは、CPSAに玩具および育児製品への特定フタル酸規制条項を追加、FHSAに鉛含有塗料の規制を追加する修正法です。
アメリカでは、詳細規則は連邦規則(Code of Federal Regulations:CFR)に定められます。
CPSCが規制の対象とする製品とその規制基準は、「Regulations, Mandatory Standards and Bans」のページにリストされています。このリストは、酢酸のような化学物質、接着剤のような混合物、自転車、玩具のような製品(成形品)や特定フタル酸が列挙され、それぞれの製品には適用規則が示されています。
例えば、特定フタル酸については「Title15 Chapter47 Sec 2057c」に規則があります。Sec 2057cでは、玩具と育児製品(children's toy or child care article)は、di-(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)、dibutyl phthalate(DBP)、benzyl butyl phthalate(BBP)を0.1%以上含有することを制限しています。
12歳以下の子供が口に入れることのできる玩具(5cm以下)とおしゃぶりや歯固めのなどの育児製品は、当面の間diisononyl phthalate (DINP)、diisodecyl phthalate (DIDP)、 di-n-octyl phthalate (DnOP)を0.1%以上含有することを制限しています。
CPSCが規制するすべての製品について、規則による必須標準に違反がある場合にLOA(Letter of Advice)を発行します。LOAは警告状に相当しますが、違反企業に違反行為の内容を示し、対応として「以降の生産対応〔correct future production (CFP) 〕」「販売を中止し、以降の生産対応(CFP)」、「リコール、販売を中止し、以降の生産対応(CFP)」を助言します。
LOAへの対応が拒否された場合には法的手続きが取られ、罰則が適用される場合があります。罰則は違反内容により、CPSAやFHSAなどCPSCが対象とする法律の罰則が適用されます。
リコールは、危険性、商品名、写真、型番、輸入者、製造者名などを含めてCPSCが公開します1)。
これらCPSC関連の解説は「THE REGULATED PRODUCTS HANDBOOK」にあります。
2012年10月に発行されたLOAはWebで公開され、Excelでダウンロードできます。
7月27日現在で4,651件リストされていますが、公開内容はリコールと異なり写真などはなく次の項目です。
4,651件のLOAの状況を以下にまとめてみます。
1.発行数の推移
2012年:466件(3カ月)
2013年:1441件
2014年:1670件
2015年:1074年(7月途中現在)
傾向は顕著ではありませんが、若干増加傾向にあるように見えます。
2.違反事項
5件以上のLOAが発行された違反事項は約50項目でした。ワースト5の事項を表にしました。
第1位:子度向け製品への鉛含有(適用:16 CFR 1500)
第2位:12歳以下の子供向け消費者製品には追跡ラベル(tracking label)が要求される(適用:15 U.S.C. § 2063(a)(5))2)
第3位:特定フタル酸の含有違反(適用:Title15 Chapter47 Sec 2057c)
第4位:プールの基準違反〔適用:1404(c)(1)(A)(i)〕
第5位:3歳児以下の窒息を起こす小型部品違反(適用:16 CFR 1501)
違反事項 | 発行数 |
---|---|
Lead in Children's Product / FHSA | 1628 |
Tracking Label Violation | 731 |
Exceeds Phthalate Permanent Ban Limit | 426 |
Failure to install covers that meet ASME/ANSI | 256 |
Small Parts | 233 |
3.原産地国
原産地国は中国とメキシコを除けば、大差はありません。日本企業も8件発行されています。
EUでもアメリカでも消費者保護を厳しくしており、特に子供の保護は厳しいものがあります。ただ、子供の定義は国により若干異なります。
EUの玩具指令は14歳未満、アメリカのCPSIAでは12歳未満とし、日本では玩具に適用されているST マーク制度で14 歳未満の子どもを対象としています。
OECDは、化学物質の子供の健康への影響評価方法やツールを調査し公開しています3)。
さらに、脆弱な集団(社会的弱者:妊婦など)へのリスク低減での配慮へと広がりを示しています。
企業としてはこのような状況を踏まえ、販売する製品の使われ方については、EUの「The Blue Guide 2014」の2.7項が示すように「どのような方法で製品が使用されるかを合理的に考えることを深く考慮」することが重要に思えます。
(松浦 徹也)
1)http://www.cpsc.gov/en/Recalls/
2)http://www.cpsc.gov/en/Business--Manufacturing/Business-Education/tracking-label/
3)http://www.oecd.org/officialdocuments/publicdisplaydocumentpdf/?cote=env/jm/mono(2013)20&doclanguage=en