EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2015.07.31
最近取り上げたコラム(「成形品中のSVHC濃度判定時の分母に関する欧州司法裁判所法務官の意見」、「「REACH規則とRoHS指令の共通の理解」について」、「ECHAの執行情報交換フォーラムの取組み」で、成形品にかかわる解釈や執行監視等を取り上げました。
今回は、2015年4月にドイツ連邦環境庁(UBA)が公表した「輸入成形品に対するREACH規則の強化」と題した報告書について、その概要を紹介します。
現状、REACH規則の認可では、輸入成形品が対象外となっているため、輸入成形品中に含まれる物質がSVHCから認可対象物質となったとしても、EU域外の成形品への直接的な影響はありません。
しかしながら、UBAは、同じ成形品を製造するEU域内企業とEU域外企業で認可対象物質の使用に差があることについて、「REACH規則には、輸入成形品中の有害化学物質の規制において欠陥がある」と指摘し、大きく次の2点についての調査結果が示されています。
UBAは、輸入成形品に対する認可要件の拡大について次の2つの規制オプションを比較しています。
両規制オプションを比較した結果、制限アプローチは日没日以降に検討・制限手続きを行うため、制限が課されるまでに時間がかかることや、成形品中の認可対象物質に関する認可申請ができないことなどの理由から、認可手続きを修正するアプローチを取りあげ、その場合の国際貿易法との整合について各種の検討が行われています。
その結果、輸入成形品への認可要件の拡大は、国際貿易法上、問題ないものと結論づけています。
REACH規則による成形品中のSVHCに対する各義務で、現状の課題や対応するための7つの規制オプションを提示しています。
本報告書は、EUの一加盟国当局であるUBAの見解であり、輸出成形品に対する認可要件の拡大はもとより、成形品のSVHC関連義務の改善で提示された各規制オプションにおいても、多くはREACH規則の条文の改正が必要となる内容です。そのため、仮にこれらの規制が欧州委員会等で検討されるとしても、相応の議論と時間が必要であり、すぐにこれらの規制が実現するわけではありません。
しかしながら、日本企業にとっても関心の高い成形品に関する内容として、加盟国当局が考える課題認識や規制オプション案を知ることは、今後のREACH規則への対応において参考になるものであり、SVHCの追加等の1つひとつの動きとともに、視野を広げて大局を把握することも重要であると考えます。
(井上 晋一)