EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2015.11.06
REACH規則で規定されている成形品中に含まれる0.1wt%以上のSVHCのECHAへの届出および情報伝達に対し、(1)2015年2月に公表された「欧州司法裁判所法務官の意見」および(2)2015年9月10日の「欧州司法裁判所による先決裁定」はすでに本コラムで紹介しました1)、2)。
(2)の欧州司法裁判所の裁定結果に従えば、EU域外で製造された複合成形品の輸入者に対しては複合成形品全体ではなく、個々の成形品単位でSVHC濃度の管理を求める内容となっています。
今回のコラムでは、「欧州司法裁判所の先決裁定に関連し欧州商工会(EuroCommerce)から提出された意見」とECHAによる「成形品中の物質に対する要求のガイダンスドキュメント見直し」について紹介します。
ディレクターゼネラルのChristian Verschueren は以下のように発言している。
「我々はこの決定と共に生きる必要がある。しかしこの決定は、消費者に明白な利益をもたらさず、困難さと余分なコストを発生させるだろう。複雑なサプライチェーンにある製品の場合、特に輸入者に対し付加的な重荷を負わせるだろう。これらの新しい重荷は役に立たないが、この決定は経済主体に法的な確かさ、REACHの主要な面 (a key aspect) に対して欠けている何かを提供するというメリットを持っている」
この算出アプローチは煩わしいだけでなく、数十年間発展させてきた供給慣行を覆す。
サプライチェーンが急速にグローバル化する現在、これは輸入者に対して複雑なルールを追加する。輸入者はサプライチェーンに適合するための時間が必要である。ECHAは関連するガイダンスドキュメントを更新する必要がある。
それ故欧州商工会は、加盟国によりこの解釈が実行され執行される前に、これらのドキュメントが利用可能となるまでの間猶予を要求する。
我々は、司法裁判所のルールにより生じる重荷が均衡しているかどうかを見るために、欧州委員会がREACHの関連する規定の規則手順の文脈をもう一度調べることを望んでいる。
ECHAの発表内容の概要は以下のとおりです。
司法裁判所の判決に従い、ECHAは「成形品中の物質に対する要求に関するガイダンス」を2段階で更新する。
司法裁判所の裁定内容
ECHAは次の2段階でガイダンスを更新する。
1)裁判所の判定結果に一致していない0.1%の制限に関連する部品訂正に限定された数カ月でのクイック更新。
これはファーストトラック手続きを用いて行われる。更新に関しては、REACHとCLP(the CARACAL)のための権限ある当局のみによって協議される。
2)ドキュメントの一般的更新および再構築を考慮に入れるより包括的なエクササイズ。
これはガイダンスが発行されて以来のECHAにより得られた経験、および受領された質問に対する現在の事例の見直し(review)と同時に裁判所先決裁定に十分に一致している新しい事例の進歩を含んでいることが予見される。この更新は、認定されたステークホルダーのコンサルテーションを含む通常の3段階のガイダンスコンサルテーションプロセスを仮定している。
1)に紹介しているガイダンスのドラフト版「成形品中の物質に関するガイダンス(ドラフト第3版)」が、10月21日にECHAからファーストトラック手続きによりREACHとCLP(the CARACAL)のための権限ある当局に提出されたことが公表されています。
(瀧山 森雄)