ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

2016.12.09

2017年に予定されるGHS関連各国法規制の動き

早いもので、2016年も残り1カ月を切りました。
 化学物質規制の中でも特にラベルおよびSDSへのGHSについては、先進国に限らず、多くの国々で導入が進んでいます。また、現状は同一物質であっても各国で危険有害性が異なる場合がありますが、OECDは「化学物質分類のグローバルリスト」の開発可能性を評価するパイロット調査の報告書1)が公表されるなどの新たな動きも始まっています。

GHSの各国への導入にあたっては、各国は自国の状況を踏まえながら国内法制化を行うため、対象範囲や対応時期は各国で異なっている状況です。今回はすでに法制化されているものの、2017年に対象範囲の拡大等の変化が予定されている国々について整理してみます。

  1. インドネシア
     インドネシアは、2013年4月に「GHSに関する規則(87/M-IND/PER/9/2009)の改訂規則(23/M-IND-PER/4/2013)2)を公布しました。これによりGHS第4版への対応について、物質は2013年7月12日から適用が開始されました。
     混合物については、2016年12月31日から適用される予定となっています。
  2. アルゼンチン
     アルゼンチンは、2015年4月に労働安全衛生分野へのGHS第5版の導入を定めた決議(801/2015)3)を発表し、その後の決議(3359/2015)4)によって、適用時期が延期されましたが、物質については、2016年4月15日から適用が開始され、混合物については2017年1月1日から適用される予定となっています。
  3. オーストラリア5)
     オーストラリアでは連邦労働安全衛生法および同規則によって、2012年からGHS第3版の導入が開始され、5年間の移行期間が設けられていました。移行期間中は旧法に準拠したラベル・SDSか、GHSに準拠したラベル・SDSのいずれかに対応していればよかったのですが、2017年1月1日からはGHSに準拠したラベル・SDSしか認められなくなります。なお、GHSに準拠したラベル、SDSの内容等についてはそれぞれ行動規範(Code of Practice)6)7)が定められています。
  4. タイ
     タイでは、有害化学物質法に基づき、2012年の工業省公示「有害物質の分類および危険有害性情報の伝達システム8)」によってGHS第3版が導入され、物質については2013年3月13日から適用が開始されていました。混合物については、2017年3月13日から適用が開始される予定となっています。
  5. カナダ
     カナダでは、2015年2月に危険有害性製品法(HPA)の改正と危険有害性製品規則(HPR)9)の制定によって、GHS第5版が導入されました。
     GHSの適用は段階的に実施されており、現時点では、旧法に準拠したラベル・SDSか、GHSに準拠したラベル・SDSのいずれかに対応していればよいのですが、2017年6月1日から製造者や輸入者にGHSに準拠したラベルやSDSの提供が求められる予定となっています。
  6. フィリピン
     フィリピンでは、2015年5月に環境・天然資源省(DENR)が行政命令「有害化学物質のSDSおよび表示要件へのGHS実施手続きおよび規則(No.2015-09)」10)を公表し、2015年また8月にはこの行政命令のガイダンス文書11)も公表されました。
     この行政命令も段階的に対象範囲を拡大する内容となっており、2016年から「化学品管理令(CCO)」や「優先化学物質リスト(PCL)」の対象となっている単一物質および化合物」に適用されました。2017年からは「高生産量有害化学物質」に対象範囲が拡大される予定となっています。
  7. ウルグアイ
     ウルグアイでは、2009年7月に政令(307/009)12)が公布され、その後政令(346/011)13)によって、適用時期が延伸されました。物質については、2013年1月から適用が開始されていますが、混合物については、2018年1月1日から適用が開始される見込みです。

今回取り上げた国々は、いずれも法規制自体は制定・施行済ですが、対象物(物質/混合物、対象物質)に応じて設定された対応期限によって、2017年に対応が求められる内容となっています。また、今回取り上げた国以外でも、EUのCLP規則における再表示・再包装の特例や、日本の労働安全衛生法によるラベルの経過措置が2017年5月31日までとなっていますし、2017年は2年に1度改訂される国連GHSの第7版も公表されるものと想定されます。
 GHS関連法規制は、世界的に共通な枠組みでありながらも、各国の法規制に応じて個別対応が必要なケースも多くあります。前述の国々をはじめ多くの国では、法規制の制定から完全施行までは、企業が対応するための移行期間が設定されています。そのため、自社の輸出先国の動向を定期的に確認しておくことが必要であると考えます。

1)OECD 化学物質分類のグローバルリストの開発可能性に関するパイロット調査報告書
http://www.oecd.org/officialdocuments/publicdisplaydocumentpdf/?cote=env/jm/mono(2016)43&doclanguage=en

2)インドネシア GHSに関する規則(87/M-IND/PER/9/2009)の改訂規則
(23/M-IND-PER/4/2013)
http://regulasi.kemenperin.go.id/site/baca_peraturan/2130

3)アルゼンチン決議(801/2015)
http://servicios.infoleg.gob.ar/infolegInternet/anexos/245000-249999/245850/texact.htm

4)アルゼンチン決議(3359/2015)
http://servicios.infoleg.gob.ar/infolegInternet/anexos/250000-254999/252805/norma.htm

5)オーストラリア GHSに関するページ
http://www.safeworkaustralia.gov.au/sites/swa/whs-information/hazardous-chemicals/pages/hazardous-chemicals-other-substances

6)オーストラリア ラベルに関する行動規範
http://www.safeworkaustralia.gov.au/sites/swa/about/publications/pages/labelling-hazardous-chemicals-cop

7)オーストラリア SDSに関する行動規範
http://www.safeworkaustralia.gov.au/sites/swa/about/publications/pages/safety-data-sheets-hazardous-chemicals-cop

8)タイ 有害物質の分類および危険有害性情報の伝達システム
http://www2.diw.go.th/Haz_o/hazard/lawsnew/11.pdf

9)カナダ 危険有害性製品規則
http://laws-lois.justice.gc.ca/eng/regulations/SOR-2015-17/

10)フィリピン 有害化学物質のSDSおよび表示要件へのGHS実施手続きおよび規則
http://server2.denr.gov.ph/uploads/rmdd/dao-2015-09.pdf

11)フィリピン ガイダンス文書
http://emb.gov.ph/wp-content/uploads/2016/03/DAO-2015-09-GUIDANCE-MANUAL.pdf

12)ウルグアイ 政令(307/009)
http://archivo.presidencia.gub.uy/_web/decretos/2009/07/T1397%20.pdf

13)ウルグアイ 政令(346/011)
http://archivo.presidencia.gub.uy/sci/decretos/2011/09/mtss_225.pdf

(井上 晋一)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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