EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2016.12.02
同じ化学物質でも異なる名前が付けられることがあり、労働安全衛生法で求められているラベル、SDSやリスクアセスメントへの対応についてご相談を受けることが多くあることから、前回のコラム(2016年11月4日)では、化学物質の命名法についてご紹介しました。
コラムでは海外の化学物質の法規制の情報をご紹介しています。出来るだけ法規制の内容を正確にお伝えするように、コラムの執筆では努力をしています。その場合、翻訳には苦労をいたします。翻訳で困るときには、辞書にない言葉や、時には筆者の考えを入れて意訳をしてご紹介しています。そのようなこともあり、時には、読者からご質問や内容の確認の連絡を頂くことがあります。
筆者は約2年前(2015年9月18日)に中国の「危険化学品(2015年版)試行」について紹介しました。先日、このコラム内容について読者から確認のメールを頂きました。頂いた内容は下記のとおりです。
「中国「危険化学品目録2015」の実施ガイド(試行)の公表におきまして、「危険化学品目録(2015版)」に収載されている物質については、「危険化学品分類情報表」の分類に従うことが必須です。」という記載がありますが、実施ガイドは、「危険化学品分類情報表」等に基づいてGHS分類することを要求しているものの、罰則は定められていないとの認識でおります。」
このコラムの「必須」に該当する言葉は、実施ガイドの説明文にはありません。そのために、今回お問い合わせがあったものと思います。ご指摘の様に、実施ガイドでは、罰則規定は設けられていませんが、「危険化学品分類情報表」の分類に従うことを求めています。当局が要求していることを、対応すべき当事者(今回の場合、製造者か輸入者になります)がすべきこととして意訳するのに苦労します。ご支援をする立場として、当局が要求していることを、少し厳しい表現をしているかもしれません。国内の法律では「しなければならない」は「義務」を意味しますが、これに倣ってコラムでは「必須」という言葉を使いました。今回頂きましたメールのような疑問を抱かれました場合は、このような考えでコラムを執筆していることをご理解いただきたくお願いします。
次に、最近経験した法律の規定で解釈が難しい例を紹介いたします。
K-REACHでは、韓国既存化学物質リストに収載されている物質は、年間1トン以上の物質は年間報告が求められています。なお、リストに収載されていない物質は新規化学物質の登録が求められています。
K-REACHの既存化学物質は第2条第3項で下記のように定義されています。
有害化学物質管理法では、新規化学物質の有害性審査完了の3年後に審査結果が官報に告示されることになっています(但し、有毒物や観察物質の場合は即時告示)。K-REACHが施行されてから、間もなく2年になります。従い、2014年12月31日までに有害性審査が完了していても、まだ公示されていない物質があることになります。これらの物質は、新規化学物質の扱いになることになります。また、有害化学物質管理法で有害性の審査が終わり、その公示がされた後は、有害化学物質管理法によるリストの更新はされないことになります。
他方、K-REACHでは新規化学物質で登録された物質が既存化学物質リストに収載するという条項はありません。言い換えますと、K-REACHでは定義で規定される「新規化学物質」は今後とも「新規化学物質」であり続けることになり、EU REACHと同じく、すべての製造者・輸入者は登録する必要があります。
産業安全保険法でも新規化学物質については「新規化学物質の有害性・危険性の調査」の届出が必要です。調査が不要な物質は産業安全保健法第32条では、下記のように決められています。
産業安全保健法施行令第32条(有害性・危険性の調査を除く化学物質)
法第40条第1項各号以外の部分の「大統領令で定める化学物質」とは、次の各号に該当する化学物質をいう。
- 元素
- 天然に算出された化学物質
- 放射性物質
- 法第40条第3項に基づいて雇用労働部長官が名称、有害性・危険性、処置、および年間製造量・輸入量を公表した物質として公表された年間製造量・輸入量以下で製造し、又は輸入した物質
- 雇用労働部長官が環境部長官と協議して告示する化学物質のリストに記録されている物質
なお、上記の4項で引用されている「法第40条第3項」は下記の通りです。
産業安全保健法 第40条第3項
雇用労働部長官は、新規化学物質の有害性及び危険性の調査報告書が提出されると、雇用労働部令で定めるところにより、その新規化学物質の名称、有害性及び危険性、対策などを公表して関係省庁に通知しなければならない。
施行令第32条5項から、既存化学物質リストに収載されている物質は、K-REACHと同じく、従来通り届出は不要です。しかし、4項で公示されない限り、産業安全保健法でも新規化学物質の届出が必要になります。公示されますと、産業安全保健法では届出は不要ですが、K-REACHでは登録が必要です。
また、ポリマーの新規化学物質の登録・届出で注意しなければならいことがあります。K-REACHでは施行令第2条第3項で、2%ルールのポリマー(注)は既存化学物質として扱われます。従い、2%ルールが適用されるポリマーはK-REACHの新規化学物質としての登録は不要です。しかし、産業安全保健法では、2016年3月9日付で告示された「雇用労働部告示第2016-14号1)」で、2%ポリマーは有害性・危険性の調査は免除されますが、免除確認の届出が必要です。
韓国の新規化学物質の登録・届出で、K-REACHと産業安全保健法で異なる場合があることに注意しなければならないことになります。
注:重量比2%以下のモノマーを除いた単量体で構成されたポリマーが既存化学物質
1)雇用労働部告示第2016-14号:
http://kiha21.or.kr/?page_id=140&uid=975&mod=document
(林 譲)