ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

2017.03.31

REACHにまつわる話(66)-登録に関する最近のニュースから(2)-

前回の2017年3月3日のコラムでは、REACH規則での登録の情報提出から登録情報の公開まで下記の5段階のステップのうち、2番目の技術的完全性のチェックについてご紹介しました。

  1. ビジネスルールチェック
  2. 技術的完全性のチェック
  3. 登録料の請求
  4. 登録の決定
  5. 登録情報の公開

今回は、5番目の登録情報の公開についてご紹介します。

ECHAのウエブページには、登録物質の情報が定期的に更新され、公開されています。3月27日時点で、58,817件の登録文書から15,468登録物質の情報が公開されています。これらの登録物質の情報公開については、REACH規則の第119条で下記のように規定されています。第1項では必ず公開される情報、第2項では申請が認められれば企業秘密として開示されない情報が規定されています。

1.第119条第1項;必ず公開される情報

  • (a)第2項(f)と(g)を侵害することなく、CLP規則附属書Iの次の危険有害性の分類またはカテゴリの基準を満たす物質についてのIUPAC命名法の名称:
    • -危険有害性クラス2.1から2.4,2.6および2.7,2.8型AおよびB、2.9,2.10,102および2.13カテゴリ1および2 2.14カテゴリ1および2,2.15型AからF;
    • -有害性クラス3.1から3.6、3.7、3.8麻薬効果以外の影響、3.9および3.10;
    • -ハザードクラス4.1;
    • -危険クラス5.1
  • (b)EINECSによる物質の名称
  • (c)物質の分類及び表示
  • (d)物質に関する物理化学的データ及び経路や環境中の運命
  • (e)毒性学的及び生態毒性学的試験結果
  • (f)推定無影響レベル(DNEL)および予想無影響濃度(PNEC)
  • (g)安全使用指針
  • (h)附属書IX又は附属書Xに求められる場合の、環境に排出された場合には危険有害性の物質を検知することが出来る、および、人への直接ばく露を測定することが出来る分析法

2.第119条第2項;申請が認められれば公開されない情報

  • (a)分類及び表示に不可欠な場合、物質の純度及び危険有害性であることが知られている不純物及び/又は添加物の識別
  • (b)物質が登録されている場合、合計トン数帯域(即ち、1~10トン、10~100トン、100~1000トン又は1000トン超)
  • (c)第1項(d)及び(e)の調査要約書又はロバスト調査要約書
  • (d)第1項にリストされた情報以外の安全性データシートに含まれる情報
  • (e)物質の商品名
  • (f)CLP規則の第24条に従うことを条件として、本条第1項(a)に言及された非段階的導入物質のIUPAC名(6年間の適用)
  • (g)CLP規則の第24条に従うことを条件として、以下の一つ又はそれ以上の目的のみで使用されものについて、本条第1項(a)に言及されたIUPAC 命名法による名称
    • (i)中間体
    • (ii)科学的な研究開発
    • (iii)製品や工程を見極めるための研究開発

どの様な場合に企業秘密の申請が認められるか、あるいは、認められないかについては、2016年4月に公表されています「Dissemination and Confidentiality under REACH Regulation」に分かりやすく説明されています1)

2項の(a)や(b)については、物質の製造法等の企業秘密を守るために申請が出来ます。(c)については試験研究費の分担や知的財産権を保護するために申請が出来ます。(d)については下記に記載します第118条で企業秘密として保護がされるべきものと規定されている事項にも関連します。(f)や(g)は新規物質の名称の開示に係ることです。EINECS収載の物質(段階的導入物質)等については、登録に際してはその名称を使用することになりますが、新規物質についてはEC名称がなく、IUPAC名で登録することになります。しかし、有機物の場合、IUPAC名からはその構造が分かります。物質の詳細な構造を非開示にするためには出来る限り総称名で登録する必要があります。上記の説明書には、IUPAC名から総称名にする方法が記載されています。
 企業秘密の申請は評価されます。現在公開されている登録物質の情報は企業秘密の申請が評価され、認められた企業秘密は非開示になっています。
 公開情報の登録物質の名称を調べてみますと、その中には、Alkylated Naphthaleneや[No public or meaningful name is available]等、物質を特定できない登録物質があります。

なお、REACH規則第118条では、企業秘密として保護されるものとして、下記の項目が挙げられています。すなわち、これらの情報は企業秘密を守ることができます。

  • (a)混合物の組成に関する詳細な情報
  • (b)物質、混合物の正確な用途、機能等の情報
  • (c)製造若しくは上市した物質又は調剤の正確なトン数
  • (d)製造者あるいは輸入者とその流通業者あるいは川下使用者との関係

ただし、非常事態のような、人の健康、安全又は環境を保護するため、緊急な行動が不可欠な場合には、ECHAからこれらの情報は開示されることになります。

1)https://echa.europa.eu/documents/10162/22308542/manual_dissemination_en.pdf/7e0b87c2-2681-4380-8389-cd655569d9f0

(林 譲)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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