EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2017.11.24
10月6日付のコラムで米国のフタル酸エステル類規制の1つとして、米国消費者製品安全委員会(CPSC)が所管する消費者製品安全法(CPSA)と消費者製品安全改善法(CPSIA)を取り上げていました。
CPSCは1972年のCPSA施行とともに設立された大統領直轄の独立機関として位置づけられており、消費者製品に起因する火災や機械、電気、化学物質によるリスクから消費者を保護することを目的に活動しています。製品含有化学物質に関連する法規制としては、CPSA/CPSIAや連邦有害物質法(FHSA)等を所管しています。
今回はこのCPSCによる製品含有化学物質に関連する最近の動きを整理します。
CPSIAではCPSCに玩具および育児用品中のフタル酸エステル類および代替物質の影響について調査するために「慢性有害諮問委員会(CHAP)」を招集することが定められていました。その調査結果として、CHAPは2014年に14種のフタル酸エステル類と6種の代替物質に関する報告書を公表していました。
この報告書の内容を受けて、CPSCは含有制限対象とするフタル酸エステル類の見直しを検討し、最終規則を10月27日に発表1)し、2018年4月25日に施行することになりました。
含有制限対象となるフタル酸エステル類について現状と見直し後の比較表は次の通りであり、変更点は、次の3点です。
結果として、子供用玩具または育児用品の含有制限対象となるフタル酸エステル類が8物質に拡大したことになります。
対象製品 | 現状 (~2018年4月24日) |
見直し後 (2018年4月25日~) |
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子供用玩具または育児用品 (恒久措置) |
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3歳未満の子供の口に入る玩具または育児用品 (暫定措置) |
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CPSCは9月28日に特定消費者製品中の非ポリマー有機ハロゲン難燃剤(OFR)に関するガイダンス文書2)を発表しました。
発表されたのは法的拘束力のないガイダンス文書ではありますが、次の4種の消費者向け製品の製造者に対して、意図的にOFRを添加することを控えるよう要請する内容となっています。
また、輸入者や流通者、小売業者に対しては、購入前に製造者からOFRが製品に含有していないことの保証を得ること、消費者に対しては、小売業者にOFRが製品に含有していないことを確認するよう要請しています。
本ガイダンスは2015年にNPO団体から提出された請願が契機となっており、この請願では、FHSAによって上記4製品のOFR含有を禁止するよう求めていました。この請願を受けて、CPSCは9月20日にFHSAによる規制化の検討、CHAPへのOFRによる消費者健康影響の調査を行うことを決定し、あわせてガイダンス文書を公表することとなりました。
本ガイダンスでは、OFRの具体的な物質は示されていませんが、NPO団体が提出した請願3)には、OFRとして1,2-bis(2,4,6,-tribromphenoxy)ethane(BTBPE)やDi(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)、Polybrominated diphenyl ether(PBDE)、Tris(2-chloroethyl)phosphate(TCEP)などの25物質がOFRとして示されていました。
現時点では、義務事項ではなく、あくまでもガイダンスとして位置づけられていますが、今後の動向が注目されます。
消費者製品は、その名のとおり、専門性を持たない一般市民が幅広く使用することから、製品含有化学物質規制としても真っ先に規制が検討される製品であると言えます。
今回取り上げたフタル酸エステル類やOFRに関する動向では、成形品中の含有について他国では規制されていない物質も対象になっています。そのためこれらの米国CPSCの動きが、他国の製品含有化学物質管理規制にも影響を及ぼすことも想定されます。
(井上 晋一)
1)連邦官報(特定のフタル酸エステル類を含有する玩具および育児用品の禁止に関する最終規則)
2)特定消費者製品中の非ポリマー有機ハロゲン難燃剤に関するガイダンス文書
3)請願文書