EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2018.10.19
韓国の改正「化学物質の登録、評価等に関する法律」(以降、K-REACH)は、2019年1月1日から施行されます。施行令、施行規則の意見募集も終わり、近々公布されるものと考えていますが、実施に必要な下記の行政予告案が2018年10月12日に公表され、意見募集が行われています。
今回のコラムでは、これらの告示案のうち、(1)の「重点管理物質の指定」と(2)の「'21年までに登録しなければならないがん、突然変異、生殖能力以上を起こすおそれがある既存の化学物質」について告示案の概要をご紹介します。
K-REACH第6章「化学物質含有製品の管理」では、第32条で「製品に含有する重点化学物質の申告」、第33条では「製品に含有する重点化学物質の情報提供」の規定があります。「重点化学物質」については、K-REACH第2条第10の2号で、下記の物質を懸念のある化学物質として、施行令第3条の2の規定により指定するものとされています。
K-REACH第2条(定義)
10の2.「重点管理物質」とは、次の各項目のいずれかに該当する化学物質のうち危害性があると懸念され第7条による化学物質評価委員会の審議を経て環境部長官が定めて告示するものをいう。
- (イ)発がん性、変異原性、生殖毒性または内分泌かく乱のおそれがある物質
- (ロ)人や動植物の体内での蓄積性が高く、環境中に長期間残留する物質
- (ハ)人がばく露を受けた場合、肺、肝臓、腎臓などの臓器に損傷を引き起こす可能性がある物質
- (ニ)人や動植物に(イ)から(ハ)までの物質と同等のレベルまたはそれ以上の深刻な危害を与える可能性がある物質
告示案には、別表1に785物質、別表2に410物質、合計1,195物質が指定されています。施行日については、別表1は2019年4月1日、別表2は本告示の施行日より2年後となっています。
指定されている物質には、下記のように、定義の項目(イ)を分割し、更に当初分類以外にEU REACHのSVHCとして取り上げられている呼吸器感作性を追加して、下記の有害性の分類が示されています。
表1、表2は指定された物質がどのような有害性を持つかに着目して整理してみました。合計1,195物質の内、CMRの有害性の物質は、表1(別表1)では686物質、表2(別表2)では338物質、合計で1,024物質となっています。
その内訳は、CMRのみの有害性の物質は,表1では566物質、表2では222物質、合計で788物質、EDC、PBTあるいはSTOTなどと2種の有害性を有する物質は表1では109物質、表2では115物質、合計224物質です。さらに、CMR/STOT/PBTの3種の有害性を有する物質は、表1,2の合計で12物質です。
有害性の種類 | CMR | EDC | PBT | STOT | EU SVHC |
合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
当該有害性 | 566 | 1 | 38 | 52 | 8 | 665 |
2種の有害性 | 109 | 1 (CMR) |
20 (CMR) |
88 (CMR) |
- | 109 |
3種の有害性 | 11 (STOT,PBT) |
11 (STOT,PBT) |
11 (CMR,PBT) |
- | 11 | |
合計 | 686 | 2 | 69 | 176 | 8 | 785 |
有害性の種類 | CMR | PBT | STOT | 合計 |
---|---|---|---|---|
当該有害性 | 222 | 31 | 41 | 294 |
2種の有害性 | 115 | 11 (CMR) |
104 (CMR) |
115 |
3種の有害性 | 1 (STOT,PBT) |
1 (CMR,STOT) |
1 (CMR,PBT) |
1 |
合計 | 338 | 43 | 146 | 410 |
なお、異性体のある物質については、それぞれのCAS番号で指定されています。例えば、キシレンについては、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレンおよびその混合体がそれぞれ個別に指定されています。
また、EU REACHの認可対象候補物質リストに収載されている物質(CL物質;いわゆるSVHC)のうち、呼吸器感作性のある物質として下記の物質が指定されています。
重点管理物質を含有する消費者向けの製品(混合物、成形品)については、下記の義務が課せられます。
この義務は、EU REACHのCL物質を含有する成形品の義務と類似していますが、K-REACHでは、混合物も対象ですので注意が必要です。
K-REACH第10条2項で、2021年12月31日までに登録することを求める既存化学物質として、(1)年間1t以上の、指定・告示される人または動物に発がん性、変異原性、生殖毒性などの異常のおそれがある物質(CMR物質)、および(2)年間1,000t以上の物質が規定されています。
この告示案は、登録の対象とするCMR物質(1)を指定するものです。
告示案には、544物質とそれらの水和物があります。前節で説明しました重点管理物質リスト物質のCMR物質は1,024物質でしたが、2021年までに登録しなければならない物質数の方が少なくなっています。まだ、物質ごとの照合は詳細にできていません。
告示案で登録対象に指定されているCMR物質の多くは重金属含有物質です。代表的なものは下記の通りです。
これらの化合物で、対象物質の約70%近くになります。
気になりますのはフタル酸エステル化合物の扱いです。重点管理物質のリストに記載されており、EU REACHですでに認可対象物質のフタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジブチル(DIBP)、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)やフタル酸ブチルベンジル(BBP)などは、2021年期限の登録対象には指定されていません。他方、フタル酸ジヘキシル(DHP)、フタル酸ジペンチル(DPP)などは、重点管理物質にリストされ、同時に、登録対象にもなっています。
参考資料
1)https://opinion.lawmaking.go.kr/gcom/admpp/24981?announceType=TYPE6&mappingAdmRulSeq=2000000259587
2)https://opinion.lawmaking.go.kr/gcom/admpp/24982?announceType=TYPE6&mappingAdmRulSeq=2000000259588
3)https://opinion.lawmaking.go.kr/gcom/admpp/24983?announceType=TYPE6&mappingAdmRulSeq=2000000259589
4)https://opinion.lawmaking.go.kr/gcom/admpp/24984?announceType=TYPE6&mappingAdmRulSeq=2000000259590
※以上のページでは、詳細の告示案は添付されていません。添付ファイルは下記のURLを参照ください。
http://www.me.go.kr/home/web/index.do?menuId=68
(林 譲)