EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
REACH規則では、単体の化学物質やその混合物である調剤中の物質および成形品中の意図的放出物質について登録義務があります。
クラフト紙は、その製造工程でさまざまな化学薬品が使用されています。例えば、パルプ化工程(繊維化の工程)では水酸化ナトリウム(NaOH:苛性ソーダ)や硫化ナトリウム(Na2S)が使用され、以降の工程でもさまざまな薬品を目的に合わせて使用しています。例えばインクの滲みを防止するサイズ剤、繊維がむけてこないようにするための接着剤、紙を水に対して強くするための耐水化剤などの機能強化剤です。これらの機能強化剤は繊維と一緒に混ぜられて、紙を抄く工程で繊維の中に抄き込まれます。
以上の説明のようにクラフト紙は針葉樹のチップと調剤を原料として加工されており、それが調剤であるか成形品に該当するかは、関係する工業会やメーカーの立場により見解が分かれており、現状では微妙な状況にあります。ただし、クラフト紙を材料として製造された包装資財(紙袋)は、次項で述べる定義に照らして成形品であると言えます。
REACH規則〔第3条(3)〕では、「成形品とは、化学組成によって決定されるよりも大きく機能を決定する特定の形状、表面またはデザインが生産時に与えられた物体を指す。」と定義されています。
貴社の輸出商品である包装紙財(紙袋)はクラフ紙の原反ロールを加工して作られており成形品に該当します。貴社の包装紙の登録の要否有無は、包装紙に意図的放出する物質を添加しているかによります(例;徐々に放出する錆止め剤のようなものが添加されていれば、その物質については登録が必要。なければ登録の必要はなし)。
また、REACH規則では、成形品中に含まれる物質が以下の2つの条件を満足する場合は当該物質が登録の対象になります。
ただし、その用途について、すでに登録されている物質については適用されません。
ご質問のケースではクラフト紙の繊維の中に抄かれた物質が通常の使用において意図的に放出されることはないと考えるのが自然ですから、登録の必要はありません。