EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
貴社がどのような機械を製造しているか分かりませんので一般論としてお答えします。機械メーカーですと金属、プラスチック、セラミックス、カーボン、ガラス、ゴム、繊維、皮革などを材料に用いて自社で加工し、一方購入した部品、カートリッジなどを組み合わせて機械を製造していると思います。
REACHでは化学物質は一部の除外規定に入るものを除いて、すべて規制の対象になり、それら化学物質を混ぜ合わせた調剤は、その中に含まれる物質が年産1t以上の場合は調剤でなく、それら物質を登録しなくてはなりません。鉄などの金属も物質として登録の対象であり、鉄鋼やそのほかの合金は調剤に当たります。
成形品の場合はその中に「意図的に放出される物質が1t以上ある場合」に登録対象となり、特定の懸念の高い物資を0.1Wt%以上含有し年産1t以上ある場合は届出対象になります。
電気器具、自動車、機械部品のような成形品でもその中に含まれる化学物質が規制の対象になります。機械メーカーであっても上記のような材料や調剤を購入し、カートリッジのような成形品を購入する場合はREACH規則を念頭におくことが必要です。貴社の生産品である機械が国内だけを対象にしたもので、海外に出ることがなければREACH規則は関係ありませんが、海外向けに出荷される可能性がある場合には使用する材料、調剤、成形品はサプライチェーンの川上において予備登録または登録の予定を確認しておく必要があります。
確認はサプライチェーンの情報と川上の供給者から川下の使用者に受け渡される当該物品の用途が記述内容に含まれる安全性データーシート(SDS)や売買契約書で行います。
貴社では装置にブレーキライニングがあり、マシンオイルを使用していますが、これら成形品や調剤は注意しておく必要があります。ブレーキライニングはかっては石綿を摩擦調整材として使用していましたが、石綿が使用禁止になった後はほかの代替物質に変わっています。これら摩擦調整材は何を使用しているか外に表れにくいので、サプライチェーンを通じて構成材料や登録情報を確認しておくことが肝要です。なお、自動車業界ではブレーキライニングの磨耗は意図的放出には該当しないと主張しています。
また、マシンオイルは手差しの潤滑箇所に用いたり、グリースの製造原料に用いるなど潤滑油としては添加剤を含まない専用性のない油です。機械メーカーで使用する潤滑油ですと作動油とか加工油とかギア油などそれぞれの用途の潤滑油が使われているケースが多く、その場合には添加剤が使用されていますので、調剤である潤滑油中の物質の登録情報を確認しておきます。
機械メーカーですと、調剤や成形品を使用しても下流に近いところに位置しているので、製造品の総体から見るとREACH規則の重要度が減ってしまうかもしれませんが、出荷した後からカートリッジや部品(潤滑油なども含む)を送る必要が出てきたりすることもあり得ますので、サプライチェーンと情報を交換しておくことが肝要です。