EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
まず、用語の定義を整理します。
成形品からのrelease(リリース)、すなわち、成形品から離れるという意味です。
リリースが意図されているかです。リリースが機能として必要であるか、逆にリリースがないと商品価値がないような場合を指します。
通常の使用条件は言葉どおりです。予想される使用条件は解釈が難しい場合があります。
自動車のエアバックで事故時にガスが発生されますが、このガスは予想される使用条件でのリリースです。
電池の電解液は、異常時に漏洩する仕組みになっていると聞いています。この解釈ですと電解液がリリース物質です。
通常の使用条件でも、タイヤの摩耗やブレーキパッドの摩耗は意図的かどうか論議されていますようにグレーな部分はあります。
この定義により、防錆剤(油)について検討してみます。
防錆剤を含浸させた防錆紙であれば、防錆紙という成形品から防錆剤をリリースしていると解釈できます。その用途が登録されていなければ登録対象になり得ます。REACH規則による登録はこれからですから、意図的放出が1t以上であれば予備登録することになります。
防錆剤を成形品の表面に塗布したような場合は戸惑うところです。一般的な防錆剤は、成形品の表面に塗布し空気を遮断しているだけで、リリースはしていないと考えられます。防錆剤は徐々に蒸発していきますが、これは意図した蒸発ではないと解釈できます。この蒸発は機能上必要ではないリリースです。したがって、登録は不要となります。しかし、防錆剤は環境へのリリース(蒸発)や作業者への付着などがあり得ます。この非意図的リリースは暴露シナリオに入れられ、リスク評価がなされる必要があります。
また、防錆剤は1t以上使用するか、これも検討する必要があります。1t以上であれば、REACH規則での義務が生じる可能性があります。リスクマネジメントの視点で次の対応も必要になります。
まず、供給者に当社の使用方法(防錆用途)を暴露シナリオに入れてリスク評価をしてSDSで情報提供するように要請をします。この用途を含めて登録を併せて要請します。EU域内であれば川下ユーザーの権利として認められています(第37条)。
サプライヤーが登録をしてくれない場合は、他社で同一物質を防錆用途で登録しているかを調査します。どこでも防錆油として登録されていない場合は、貴社で登録することも選択肢の一つです。貴社が登録することで商品を差別化することができます。
作業者保護や環境暴露は今後厳しくなりますので、この点を踏まえて検討することが重要と思います。