EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
アメリカの化学物質規制はTSCA(有害物質規制:Toxic Substances Control Act)とHPV(高生産量化学物質評価:年45.4t製造・輸入)で運用されています。既存化学物質はHPVで評価を行い、新規物質はTSCAで評価を行います。
TSCAの下でアメリカでは国内で製造・輸入される化学物質はすべて「TSCAインベントリ」と呼ばれるリストで管理されています。TSCAインベントリに収載されていない新規化学物質を製造・輸入する場合、当該化学物質がTSCAの規制対象であるか否か、新規化学物質登録から免除されているかどうかを確認し、免除対象でない場合は、少なくとも90日前までに米国環境保護庁(EPA)に対して物質情報・ハザード情報の届出(製造前届出:PMN)を行います。
EPAは、届出審査を行い、リスク管理を要する場合には、当該化学物質は、製造、輸入または利用を制限または禁止される重要新規利用規制(SNFR)の適用を受け、PMN提出者は、同意命令を受けることになります。この届出によりTSCAインベントリに追加されることになります。
TSCAではREACH規則と異なり、新規化学物質リスク評価義務は化学物質を製造・使用する企業ではなく政府にあるとされています。政府によるリスク評価だけでは物量的に限界がありますので、TSCAによる化学物資規制はREACH規則ほど有効的に働いていないという意見も一部にはあります(注1)。
REACH規則のリスク評価義務を企業側に負わせるということは基本的に製造コスト増大につながります。製造コスト増大により投資と技術革新が低迷する可能性があるということで、企業側はREACH規則に類似した法律の制定に慎重な傾向にあります。このような環境においても子ども、労働者および消費者の有害物質への曝露を低減するための有害物質規制法(TSCA)を修正する法案が2008年5月20日下院に提出されました(注2)。
この法案は採択されてはいませんが、環境保護庁(EPA)長官の求めに応じ化学物質のリスク評価を企業に負わせるREACH規則の理念に準じたものになっていることは注目に値します。そして、既存化学物質の評価の範囲をHPVからMPV(中生産量化学物質評価:年11.35〜45.4t製造・輸入)に2012年までに広げるの取り組みなどもEPAは行っています(注3)。
基本的に環境を重視する民主党政権が誕生したことにより、REACH規則に準じた法規制制定に対する論議が今後高まっていくことが予想されます。
(注1)http://www.euractiv.com/en/environment/us-eyes-reach-style-law-chemicals/article-172968
(注2)http://thomas.loc.gov/cgi-bin/bdquery/z?d110:HR06100:@@@D&summ2=m&
(注3)http://www.chemical-net.info/pdf/USChAMP_DrHenry.pdf
http://www.epa.gov/champ/