EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2008年5月26日にECHA(欧州化学物質庁)から「成形品に含まれる物質に関する要求事項についてのガイダンス(Guidance on requirements for substances in articles)」が公表されています。その第2章の「REACHにおける成形品中の物質に対する要求」の中で、「成形品に含まれる物質の届出義務は、輸入商品の包装として、別々に製造または輸入される包装材にも適用される。包装材は、それが包んでいるすべての対象物から分離して評価される」と記載されています。
キャリアテープは小型の電子部品の保管や流通段階での破損防止などの目的で緩衝材として使用されることもありますが、キャリアテープの用途の多くは小型の電子部品をマウンター(電子部品実装機)にセットするために利用されます。マウンターにはキャリアテープと電子部品が一体となって使用されますが、プリント基板などに実装されるのは、キャリアテープから取り出された電子部品で実装後のキャリアテープは廃棄物となります。
したがって、キャリアテープは小型の電子部品の特殊な容器であり、緩衝材の場合は包装材となります。いずれにしても、小型の電子部品とは別の成形品として評価することが適切と考えられます。
また届出の義務は以下の2つの条件を満たす場合に必要となります。
(1)成形品中のSVHC濃度が0.1wt%以上であること
(2)成形品中のSVHCが製造者または輸入者あたり年間1t以上である場合
(1)の成形品中のSVHCの濃度計算については、分母は成形品の全重量を使うことになっており、以下の計算式で求めることができます。
SVHCの濃度(%)=SVHCの含有量(g)/成形品全体の重量(g)×100
つまり、小型部品、キャリアテープそれぞれを上の計算式に当てはめ、SVHCの平均濃度を計算します。その結果、0.1wt%以上のSVHCの含有が確認された場合はその製品中のSVHCが届出の対象になります。
なお、成形品中のSVHCの濃度算出の分母については、近い将来「成形品中の異なる部品ごと」に変更される可能性があります。現在ECHAにて検討中であり結論は出ていませんが、あらかじめ対応を考えておかれることをお勧めします。
(2)の年間1t以上の算出方法は、「製造者または輸入者あたり」であることに注意が必要です。つまり貴社の成形品に含まれる当該SVHCの量のみならず、同じ製造者また輸入者が扱う他の成形品などに当該SVHCが含まれている場合には、その量を合算する必要があります。