EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
ご質問の機器などの成形品に含まれる化学物質について、RoHS指令とREACH規則の両方の視点から以下に整理します。
(1)RoHS指令
RoHS指令〔改正RoHS指令(2011/65/EU)〕では、軍事用機器や大型固定装置、輸送用機器等の一部例外を除き、直流1,500v以下、交流1,000v以下で稼動するすべての電気電子機器に原則適用されることになります。このため、電気を利用する製品であれば、軍事用機器や大型の据付用産業用工具などを除くほとんどすべての電気電子製品が対象となります。
RoHS指令では、鉛・水銀・カドミウム・六価クロムの4物質が元素として規制され、ポリ臭化ビフェニル(PBB)・ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)の2物質は化学物質として規制されています。また、その最大許容濃度はカドミウムが0.01wt%(重量比)、それ以外が0.1wt%(重量比)です。
ここで成形品中の化学物質の含有量の重量比を算出する分母は、RoHS指令では均質物質であり、「全体的に一様な組成」で「機械的に分離できる最小単位」です。分子は、鉛・水銀・カドミウム・六価クロムではその元素単体となります。
(2)REACH規則
REACH規則では、EU域内で物質を製造、使用または上市するときに人や環境に容認できないリスクがあり、かつEU全域で対処が必要と判断されたときに「制限」として、使用に制限条件を付けたり、禁止する措置が取られます。
「制限」の対象となる物質はREACH規則附属書XVIIにリストアップされており、化学物質毎に「特定製品への使用禁止」、「一般公衆(the general public)向け製品への使用禁止」、「完全な使用禁止」などの条件が定められています。
ご質問内容から、RoHS指令の対象となる物質がすべてREACH規則の制限物質にリストされているかを検討してみます。
Pb、Hg、Cd、六価クロムについては、すでに多くの物質がリストされていますが、工業的に使用されている物質がすべてリストされているかは確認が非常に難しい状況です。
難燃剤のPBBについては用途を限定して制限リストに存在します。この用途以外で電気電子機器に使用されていれば、RoHS指令を順守できないことになります。
また、難燃剤のPBDEについては、改正されたリストではオクタ臭素化PBDEだけがリストに残っています。従い、REACH規則だけの遵守ということであれば、RoHS指令を順守しないことになります。もっとも、PBDEについては多くの異性体がPOPs条約で制限されていますので、この規則を順守する必要があります。ただ、デカ臭素化PBDEはREACH規則、POPs条約のいずれでも制限されていませんので、これらの規則を順守していてもRoHS指令を順守していることにはなりません。
以上のように、REACH規則は、化学物質を制限対象物質とした使用制限が中心であり、一方、RoHS指令は重金属元素成分とPBB,PBDEを限定した最大許容濃度の制限です。
上述のように、REACH規則の制限物質がすべてのRoHS指令対象をカバーしていない状況から、REACH規則を満足していれば必ずRoHs指令を満足することにはならないと考えられます。