EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
REACH規則では、フタル酸ジ2-エチルヘキシル(DEHP)は認可対象候補物質(SVHC)と認可対象物質としてのの両方の規制の対象となります。その他、制限物質リストにも収載されている物質(制限物質)です。
DEHPを含有する成形品については以下の義務が発生し、貴社および顧客企業は対応が必要になります。
(1)認可対象候補物質リストに収載されることで発生する義務
a.届出の義務
輸出品(成形品)中のDEHPが下記条件に該当する場合には、欧州化学品庁(ECHA)に届出を行う義務が発生します。届出の義務はEU域内の成形品の製造者、輸入者または成形品(部品を含む)の輸出者が任命する唯一の代理人(以下届出義務者)にあります。
ご質問の場合では、顧客が届出に必要な情報を管理し、EUの輸入者または唯一の代理人にSVHCの含有の有無や含有率の情報を提供する必要があります。
貴社は顧客に対して必要な情報を提供する必要があります。
b.情報提供の義務
成形品中にDEHPが0.1wt%以上含まれている場合、EU域内のサプライチェーンの川下企業に対して、安全に使用できるための情報を提供する義務が発生します。また、消費者から要求があった場合には45日以内に安全に使用できるための情報を無償で提供する義務があります。
ご質問のケースでは、届出の場合と同じく、顧客は輸出先に情報提供が必要です。貴社は顧客に対して必要な情報を提供することが必要です。
(2)制限物質リストに収載されることで発生する義務
DEHPに関しては玩具や育児用製品内に他のフタル酸エステル類であるDBP、BBPを一組として、合計0.1wt%以上含有する場合、上市が禁止されています。
貴社および顧客の使用用途は自動車関連とのことですので、DEHPの制限条件には該当していません。
なお、REACH規則ではありませんが、RoHS2では使用が制限される物質の見直しが行われており、DEHPは物質のリストである附属書IIへの追加収載が検討されている物質の中に含まれています。
追加収載されるとすべての電気電子機器に対して閾値以上の含有が禁止されます。自動車関連の製品に関しては輸送用機器として適用除外になりますが、輸出されます部品が電気電子機器に使用される可能性がある場合は、貴社および顧客企業は非含有とする対応が必要になります。
EU域外から認可対象物質を含有する成形品を輸出される場合は、認可の対象ではありません。しかし、DEHP自体または混合物をEU域内に輸出する場合、下記の認可申請の義務が発生します。
認可対象物質リストに収載されると、EU域内では使用の認可を受けないと、日没日以降EU域内で上市または使用することができません。認可の申請義務者はEU域内の輸入者、製造者およに川下ユーザーまたは唯一の代理人になります。ちなみに日没日とは認可を受けない限り物質の上市または使用することができない日のことです。認可の義務は、認可対象候補物質のように数量や濃度の条件はありません。
DEHPの日没日は2015年2月21日です。18カ月前までに申請して受理されれば、認可の申請に対する決定が下りるまで継続して使用が可能です。DEHPの認可申請の期限は2013年8月21日と既に終了しています。そのため、申請の期限までに使用の認可申請が行われていない場合は日没日以降上市、すなわち輸出することはできません。