EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
1.製品に箔捺された製品名、ロゴのREACH規則附属書XVII#23での扱い
熱転写箔は着色層を凸版で印刷し、その裏面の接着層を熱で活性化し、成形品などに箔を転写するものです。主としてプラスチック材料などに転写され、ホットスタンピングとも言われているものです。
転写箔のインク層を接着層で被転写体である製品に転写するので、製品に印刷や塗装のように直接着色するのではありません。製品名やロゴをインク(顔料)で印刷し、転写により製品である被転写体に着色し、簡単に剥離しません。
また、転写箔は接着層、着色層、保護層で構成され、塗装ではなく、被転写体と一体となったプラスチック樹脂と考えられます。
REACH規則附属書XVIIのカラム23には、カドミウムおよびその化合物の使用制限条件があり、プラスチック材料、塗料、めっき、ろう付け、宝飾品などに関する条件が記載されています。
(1)下記に示すプラスチックで生産された混合物と成形品には使用してはならない。
上記プラスチック材料から製造される混合物、成形品にカドミウムを(Cd金属として)0.01wt%以上の含有率で上市してはならない。
以上の通り、被転写体から剥離されない転写箔に、カドミウムを含有する樹脂(制限された材料)の使用はできませんので、附属書XVIIの制限条件が適用されると考えられます。
2.可塑化成形品への熱転写箔のREACH規則附属書XVII#51、#52での扱い
附属書XVIIのカラム51を例にしますと、DEHP、DBP、BBPのフタラート類に関して、「玩具および育児用アーティクルにおいて、その可塑化された材料(plasticised material)の0.1wt%より高い濃度で、物質としてまたは混合物の成分として使用されてはならない」とされています(以下、略)。
DEHP、DBP、BBPのフタラート類はプラスチックの可塑剤として使用されます。可塑化された材料とは、可塑化されたプラスチック成形品のことになります。あとから転写される印刷箔は含まないと考えられます。つまり、転写された印刷箔は可塑化された成形品とは別の部材となります。