EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
特定フロンは、無毒で不燃性に加え安定した物質であるうえに液化しやすいという数多くの利点を持っていました。しかし、オゾン層を破壊する効果が問題視され、モントリオール議定書により1996年までに全廃することが決められました(開発途上国は2010年まで猶予)。その結果、2010年に全廃されました。
代替フロンHFCはその問題を受けて、特定フロンの代わりに使用されることになりました。代替フロンのHFCは塩素を含んでおらず、主に業務用や家庭向けの冷蔵庫に冷媒として使用されています。特定フロンのようにオゾン層を破壊することはありません。
代替フロンHFCには主に以下のような種類があります。
項 | 名称 | 化学式 |
---|---|---|
1 | HFC-23 | CHF3 |
2 | HFC-32 | CH2F2 |
3 | HFC-125 | CH2FCF3 |
4 | HFC-134a | CH3CF3 |
5 | HF2-152a | CHCHF2 |
1.代替フロンHFCがRoHS指令の対象となるか否か
欧州委員会は2015年6月4日にRoHS指令の特定有害化学物質を規定している附属書IIの修正について官報公示を行いました。
従来、RoHS指令の特定有害化学物質は、鉛、水銀等の6物質でしたが、今回の改正が確定することにより、フタル酸エステル類4物質が追加されることになります。これらの中に代替フロンHFCが入っていないため、RoHS指令の対象とはなりません。
2.代替フロンHFCはREACH規則の対象となるか否か
RoHS指令とは異なり、REACH規則はすべての化学物質が対象となるため、代替フロンHFCも当然対象となります。
年間1トン以上の代替フロンHFCをEU域内に輸入もしくは製造するEU域内の事業者は登録する義務が発生します。
代替フロンHFCに関しては認可対象候補物質リスト、認可物質リスト、そして制限物質リストにも収載されていないので、登録以外の義務は発生しません。
3.代替フロンHFCが規制されているその他の規制
(a)世界規模の規制
代替フロンHFCは温室効果が高く、地球温暖化係数(二酸化炭素の温室効果の何倍の効果を有するかを表す値:GWP)は約数百~4000になると言われています。そのため、代替フロンは京都議定書の対象物質となり、各国に使用削減を求めています。
そして、モントリオール議定書においてHFCの製造・消費を規制すべきだとの提案が出され、継続して議論されています1)。それを踏まえて、日本の環境省と経産省は代替フロンのHFCを使用しない冷媒に転換することを検討しています。
(b)EU独自の規制
代替フロンHFCは、WEEE指令附属書VIIに収載されている化学物質であり、WEEE指令の対象となります。そのため、WEEE指令の対象となっている電気電子機器(EEE)を処理する際は代替フロンHFCをEEEから分離して処理することが求められます。
その他、代替フロンHFCはEUのFガス規則(the F-Gas Regulation)の規制対象物質となっています2)。なお、Fガス規則は2015年1月に改正規則が施行され、高GWP冷媒の使用禁止となる特定用途の追加など、より規制内容が強化されています。
このような背景から、IEC62474でも開示対象物質となっており、それに伴い日本の大手電機メーカーではグリーン調達基準などにおいてHFCを使用制限物質に指定しているケースも多く見受けられます。
1)
http://www.env.go.jp/earth/ozone/montreal/cop26_result.html
2)
http://ec.europa.eu/clima/policies/f-gas/index_en.htm