電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2011.11.25
改正RoHS指令で生産者(輸入者)の義務として、新たに附属書VIIによる適合宣言書とCEマーキングの貼付が追加されました。現行RoHS指令では、製造段階を含めて非含有であることを自己宣言しています。CEマーキング導入は、RoHS指令の適用範囲の不明確さ、適合性評価方法や市場監視の加盟国による差もあり、不適合製品が数多くあることへの対応とされています。電気電子機器の適合は均質物質単位での6物質の非含有(カドミウム0.01wt%、その他0.1wt%以下)ですが、完成後のテレビやパソコンなどでは確認は困難であり、製造段階での適合性を確認するしかありません。 改正RoHS指令第7条の規定は以下です。
CEマーキング制度は、EU 統合の一環として、産業界の技術上の統一を図るために、1985 年5 月に「技術的な整合と規格へのニューアプローチ」が決議されました。ニューアプローチ指令は現在22指令ありCEマーキングが要求されています。
ニューアプローチ指令の仕組みは以下です。
ニューアプローチ指令で規定された製品については、必須要求事項に適合していなければならなく、この要求事項に適合している製品のEU 域内での出荷、流通のためには、CE マーキングが貼付されている必要があります。ニューアプローチのガイドもあります。
なお、ニューアプローチ指令以外でCEマーキングが要求される「屋外用機器の騒音」と「エコデザイン」もあります。
ニューアプローチを補完する仕組みがグローバルアプローチです。審査方式は製品ごとに異なるため複雑となり、加盟各国でも違いが出てくる恐れがあり、ニューアプローチ指令の規定の適合性審査に関する基本方針を示し、「モジュール」という考え方をグローバルアプローチは導入しました。モジュールにより定型化することで審査方式の域内での統一が図られます。
改正RoHS指令は「モジュールA( Decision No 768/2008/ECの付属書II)」が適用されます。
モジュールAは公認認証機関の審査が不必要で適合宣言(自己宣言)だけで済むものです。あくまで生産者の自己責任に基づくものですが、監視によって違反摘発されれば市場で製品を再び販売ができなくなる厳しい処置があります。
モジュールは社内の設計・生産管理が対象となりますが、補足モジュールとして2方式があります。
A1:内部生産管理と製品試験(Internal production control plus supervised product testing)
製品試験は生産者の選択で、社内公認組織またはnotified bodyが行います。
A2:内部生産管理と製品のランダムチェック(Internal production control plus supervised product checks at random intervals)
製品試験は生産者の選択で、社内公認組織またはnotified bodyが行いますが、製品試験は製品の技術的な複雑さと生産量を考慮に入れます。
技術文書は10年間保管が要求されます。技術文書は指令の要求への適合の根拠を示す文書であり、通常、以下の情報を含みます。
ニューアプローチ指令固有の用語があります。
CEマーキング貼付製品が使用され、安全、健康、または公共の利益を損なう可能性がある場合、加盟国は、その製品の市場投入を禁止または制限するため、あるいはその製品を市場から撤退させるために適切な措置をすべて講じられます。
EU域内に初めて製品を上市(またはサービス開始)することを指します。加盟国は製品が意図された目的に対して適切に設置、維持管理および使用される限り、製品の上市・サービス開始に関わらず、安全、健康、またはその他の公共利益がリスクにさらされることのないように、必要な措置を講じる義務を負います。
ある製品をEU域内で初めて上市およびサービス開始する際、当該製品はニューアプローチ指令に準拠していなければなりません。
改正RoHS指令では、現行RoHS指令のput on the marketからplacing on the marketに用語を変更しました。第3条でplacing on the marketの用語の定義を「EU市場において製品を初めて入手できるようにする最初の行為を指す(making available an EEE on the Union market for the first time)」としています。
上市とは、EU域内での流通または使用を目的として製品を初めてEU市場で入手可能にする初期の活動です。入手方法が有料・無料のいずれであってもこれにあてはまります。
サービス開始は、EU域内でユーザーが製品を初めて使用する時点を指します。
上市とならない事例は以下です。
EU域内で製造された新製品および輸入された全製品(含む中古)は、EU市場で初めて入手可能となるとき、適用される指令の条項に準拠していなければなりません。
自己宣言書の記載項目は改正RoHS指令の附属書にあります。
自己宣言は日本では信頼性が乏しいとされますが、CEマーキング貼付後、製品に問題が生じた時は、適合宣言書の署名をした製造業者に製品に関する責任がかかることになります。不適合が当局に確認された場合には、製品を速やかに市場から引き上げる、または製造業者が、禁固刑や罰則の対象になることもあります。
CEマーキングの自己宣言は日本の感覚の自己宣言ではなく、かなり厳しいものがあります。
(松浦 徹也)