ここが知りたいRoHS指令

ここが知りたいRoHS指令

電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介

2012.08.17

(続)EU RoHS(II)のFAQから-CEマーキングへの対応-

前回はFAQのなかの大型装置の解釈に関する解説をしました。EU RoHS(II)の大きな変更点のもう1つが「CEマーキング」制度の導入です。
 RoHS(II)は、2013年1月2日までに加盟国の国内法への転換がされてRoHS(I)が廃止されて適用がされます。CEマーキングと適合宣言に関する要求事項は、同日から実施されます。

1.CEマーキングとは

FAQの解説の前にCEマーキング制度の基本事項について整理します。

(1) ニュー・アプローチ(New Approach Directives)指令
ニュー・アプローチ指令(低電圧指令(2006/95/EC)、電磁環境両立性指令(2004/108/EC)、機械指令(2006/42/EC)、その他医療機器、ラジオ・通信端末設備に関する指令など20を超える指令)のすべての要件に適合した製品には、原則として「CEマーク」をつけることが義務づけられています。

(2)適合性確認
個々の指令では詳細な技術的要求は規定せず、やや抽象的な要求である「必須要求 (essential requirements)」が規定されます。必須要求事項の技術仕様は、整合規格(Harmonised Standards)として、CEN(欧州標準化委員会)、CENELEC(欧州電気標準会議)やETSI(欧州電気通信標準化機構)が定めます。 整合規格に適合した製品は指令が定めた必要な法的要件をすべて満たしていると見倣されて、域内での製品の移動の自由が保証されます。 なお、適合性確認では、整合規格の採用は任意とされていますが、整合規格を用いない場合は第三者機関が試験し証明する必要があります。

(3)グローバル・アプローチ

グローバル・アプローチは、ニュー・アプローチ指令の規定の適合性審査に関する基本方針を示し、「モジュール」という考え方を導入しています。適合性審査方式は製品ごとに異なるため複雑となりますので、モジュール審査方式の域内での統一を図り加盟各国での審査結果の差異を防止しています。

RoHS(II)では、モジュールAが指定されています。モジュールAは「EC適合宣言(自己宣言)」方式で、製造業者が指令の要求事項に製品が適合していることを自ら宣言するもので、認証機関(Notified Body)による認証は必要ありません。適合宣言書と技術書類を作成し、10年間保管する義務があります。 詳細はCEマーキングのガイダンス文書(Guide to the implementation of directives based on the New Approach and the Global Approach)に記載されています。

(4)モジュールAの製品検査の要求事項
 モジュールAはA1とA2の2方式があります。
【A1(内部生産管理と製品試験)による製品検査】
 製造された各製品に関し、その製品が法律文書の該当する要求事項との適合性を検証するために、製造業者、またはその代表者は、製品の1つまたはそれ以上の特定の側面に対し、試験を1つまたはそれ以上の試験を実行するべきである。
試験を実行する方式について、製造業者の認可した内部認定機関が実行するか、または製造者が選定した公認機関(NB)の責任のもとに実行するかは製造業者が決めるものとする。 試験がNBで実行された場合、製造業者はNBの責任のもとに、製造工程において公認機関の識別番号を貼り付けるべきである。

【A2(内部生産管理と製品のランダムチェック)による製品検査】
 製品内部検査の品質を実証するために、特に、製品の技術的な複雑さおよび生産の品質を考慮して、製造業者の任意選択で選定された内部認定機関またはNBのいずれにせよ、検査の実施機関は製品検査、または規定された間隔でのランダムチェックを行うべきである。 市場に出る前、同機関に抜き取られた完成品の適正サンプルは検査されるべきであり、また、製品が立法文書の関連要求事項との適合性を確認するよう、整合規格および/または技術仕様の関連部分に認定される適切な試験、または等価試験は実行されるべきである。 採用されたサンプル抽出検査手順は、製品の製造工程が許容できる範囲内で機能するかどうかの判定に応用される。
試験がNBに実行された場合、製造業者はNBの責任のもとに、製造工程においてNBの認証番号を貼り付けるべきである。

なお、A1およびA2ともに、技術文書の要求事項に「技術文書は、関連要求事項に定める製品適合性への評価につながり、リスクに対する適切な分析および評価を含むべきである」とされています。A1またはA2の選択やサンプル抽出手順はリスク評価が前提にあることに留意しなくてはなりません。
 RoHS(II)に関する技術文書要求はEN50581に規定されます。CENELECから2012年8月13日に発行が予定されています。
各モジュールの詳細手順はwebサイトで確認できます。  EN50581の案内もwebサイトで確認できます(原稿執筆時はApproved段階でした)。

2.FAQのポイント解説

CEマーキングに関するFAQは第9項に詳述されています。CEマーキングに関する質問を多くいただいていますので、冗長になりますがFAQの番号に合わせて主要部分の要約と抜粋をして解説します。

【Q9.1 「新しい法的枠組み(NLF:the New Legislative Framework)」とは何ですか?】
A:製品の販売に関して、製品の自由な流通を妨げる障害を取り除き、効果的で首尾一貫した欧州の法的枠組みを作り上げるために、新たにDECISION(決定)768/2008では、製品の売買のための共通枠組みを設定しました。EUの決定はEU機関に対してしか拘束力がありません。これを運用可能にするためには、決定で定めた規定のモデルを、現行の指令を次に改正する際に、指令に組み込むことが必要です。この手続きは、「アラインメント」として知られています。
NLFの目的は、域内の商品の市場がよりよく機能するように支援することと、幅広い分野の工業製品をEU市場に上市するための条件を強化し、最新のものにしていくことです。NLFにある対策のパッケージは、次のようなものです。
・第三国からの輸入も含め、市場監視ルールを改善し、消費者と職業人の保護を強化し、 ・評価機関の通知要求のルールをさらに明確で強固なものとすることによって、製品の適合性評価の質を向上させ、
・CEマーキングの意味を明確にし、
・工業製品に関する共通の法的枠組みを、将来の立法の際に用いる手段をまとめたものとして確立する。
 なお、RoHS(II)はNLFが適用されます。同時に違反を確認した当局は、EUの緊急警報システムRAPEXで1つの国で摘発された事項がEU全体に通報する仕組みを使うと思います。 

【Q9.2 適合宣言(DoC)とは何ですか?】
A:製品が上市されるときには、製造業者またはEU域内の権限ある代理人は、適合性評価手続きの一環として、EU適合宣言(EU DoC)を行わなければなりません。この宣言では、製品が適用される指令の要求事項を満たしていることを確実にしなければなりません。
すなわち、RoHS(II)に関しては、電気・電子機器がRoHS(II)の物質制限を順守しているということです。

【Q9.4 CEマーキングへの移行期には、どのように対処すればよいでしょうか?】
A:電気電子機器はいずれも、物質制限の適用日以降は、CEマークをつけ、DoCでRoHS(II)に言及しなければなりません。
RoHS(II)の規制対象になり、物質制限、手続的要件やその他の要件を満した電気電子機器が、この指令の発効日(2011年7月21日)以降に上市される場合は、物質制限がまだ適用されていない場合であっても、CEマークをつけ、DoCにRoHS(II)への言及も含めることができます。

【Q9.5 スペアパーツには、CEマークをつけDoCを行うことが必要ですか?】
A:第4条でスペアパーツも物質制限を順守することを要求しています。しかし、第15条に基づいてCEマークを貼付するという要求は、完成品の電気電子機器に限って適用されます。 したがって、スペアパーツは、CEマークをつけることもDoCを行うことも必要ありません。プリンターのカートリッジのように、電気電子機器にも該当するスペアパーツは当然、CEマークをつけDoCを行うことが必要です。
なお、電気電子機器は第3条1項でスペアパーツは第3条27項で定義されています。

【Q9.6 部分組立品にCEマークをつけることが必要ですか?】
A:部分組立品は、製造業者によって電気電子機器に組み立てられることのみを意図して利用されるか、スペアパーツとして使われる場合は、電気電子機器には該当せず、したがって、単独ではCEマークをつけることもDoCも必要ありません。
 ただし、部分組立品で単独で機能するユニットとして利用されるものは関連するすべての要件を満たさなければなりません。

【Q9.7 カテゴリー8と9に属する機器と新たに規制の対象になる機器が、まだ物質制限の適用を受ける前でも、CEマークとRoHS(II) のDoCが必要ですか?】
A:第2条2項は、RoHS(I) の規制の対象外であったが、RoHS(II) の規制の対象になった非準拠の製品については、第4条3項と第4条4項で適用開始日が特定されていない限りは、2019年7月22日までは、完全な市場アクセスができると定めています。
第2条2項の目的に沿っていえば、「非準拠」が意味するのは、製品が物質制限を順守する必要がないということだけでなく、DoCやCEマーキングを含むRoHS(II)の手続き上の要求にも従う必要がないということです。
したがって、DoCやCEマーキングには移行期間がないものの、カテゴリー8と9に属する機器は、物質制限が適用されるまでは、CEマークをつけることも、DoCにRoHS(II) を含めることも必要ありません。
RoHS(I)の規制の対象外で、RoHS(II)の規制の対象になったその他の電気電子機器は、2019年7月23日以降に上市されるのでなければ、CEマーキングもRoHS(II)のDoCも必要ありません。

【Q9.11 RoHS(II)が製品全体に適用される場合、電気電子機器に該当しないパーツについて、DoCとCEマーキングに関連する技術文書を作成しなければなりませんか?】
A:DoCは、第4条に基づき上市される製品に言及しなければなりません。これは通常は、上市される製品全体の型番かこれに類似する表現になります。
RoHS(II)は、機器と、工具、容器、ケースなども含め機器を構成するすべてのパーツに適用されます。しかしながら、RoHS(II)は機器の構成要素にならないマニュアル、文書、消耗品等には適用されず、同様に、機器が供用されるとすぐに捨てられることを意図した包装にも適用されません。
ただ、第7条b項で要求される技術文書には、上記のすべてのパーツが適合しているという情報を含まなければなりません。

【Q9.15 トレーサビリティのための、製品マーキングの要求事項は何ですか?】
A:第7条g項は、製造業者に対し、型式、バッチ、シリアルナンバーその他の製品の識別が可能な要素を、機器にマークすることを要求しています。生産ラインのものかどうか別として、バッチや個別のシリアルナンバーをマーキングする頻度は、ビジネス上の決定の問題です。不適合の製品が識別されて、市場関係者の行動が求められた場合には、製品の不適合を是正し、市場で適合と不適合の電気電子機器をより分けるために必要な行動を決めるときに、製品の識別を利用することができます。

CEマーキング制度は多くの指令(ニュー・アプローチ指令)で適用され、適用されるすべての指令に適合していなければCEマークの貼付はできません。多くの電気電子機器はLVD指令やEMC指令が適用されてCEマークを貼付しています。これにRoHS(II)が追加適用されることになります。この追加はDoCに記載されます。
 RoHS(II)ではCEマーキングの適合宣言は「自己宣言」でよく、NBによる認証は不要となっています。CEマーキングの専門家の話では、EU域外国の場合は、何か事が生じた場合の当局とのやりとりでのリスクを考えるとNBの関与を推奨していました。LVD指令やEMC指令でNBを利用している場合は、RoHS(II)への対応について相談することをお勧めします。

(松浦 徹也)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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