電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2014.09.05
欧州委員会環境総局は2014年7月「水銀に関する水俣条約」実施に関する最終報告書を公表し、同7月31日まで意見募集を実施しました。
欧州委員会の水銀に関する情報には、EUの水銀に関する見解、今回の最終報告についての意見等が記載されていますので以下に概要を紹介します。
水銀は世界レベルで拡散し、人の健康に重大な被害を及ぼす非常に毒性の高い金属で、また化学元素であるため消滅することはなく、常温で液体である唯一の金属である。
水銀およびその化合物は人、動物および生態系に対して非常に有毒である。バクテリアの存在で水銀はその最も有毒な形態であるメチル水銀に変化する。
人のメチル水銀に対する暴露は主に食物連鎖、特に魚の摂取を通じた蓄積による。高摂取は人に対し致命的となるが、比較的に低摂取であっても神経システムに重大な影響を与える。
そして心臓血管、免疫および生殖システムに有害な影響の可能性が関連づけられてきた。メチル水銀は胎盤と血液脳関門の両者を容易に通過する。そのため出産年齢の女性および子供の暴露は最大の懸念である。
水銀は国境を横断し、生物は長距離を移動するグローバルな汚染物質であるため、水銀問題はEUおよび国際的レベルで取り扱われるべき必要がある。
EUは2005年に水銀戦略を開始しているので、グローバルな水銀への対処へのチャレンジにおいてかなりの進歩をしてきた。
EUの水銀戦略は、EU域内と地球規模との両方の水銀汚染に対処する包括的計画を含んでいる。上記の戦略には水銀排出を削減し、供給と需要をカットし、特に魚類で見出されたメチル水銀への暴露に対する保護のための20の措置が含まれている。
これはなかんずく以下の結果をもたらしている。
2012年12月7日に欧州委員会は水銀に関する共同体戦略のレビューに関するコミュニケーション(Communication on the review of the Community Strategy concerning Mercury)を採用した。
EU水銀戦略の実施において、製品中の水銀使用に関し以下のように多数の制限が課されている。
水銀戦略実施の重要措置の1つは水銀輸出禁止および金属水銀の安全貯蔵に関する規則 (EC)No1102/2008の採択であった1)、2) 。
加盟国当局と関連企業はこの規則の第5条および6条において予見される情報を電子メールあるいは郵送で委員会に報告しなければならない。
大気中の広域移動、環境中長期滞留、生態系中蓄積および人の健康と環境への重大な負の影響の効果で水銀はグローバルな懸念化学品として認識されている。
多年にわたりEUは水銀問題を取扱うための強力な国際的活動を唱導してきた。
グローバルレベルで水銀問題を処理するための第1ステップとして無防備な人々を特定し、広範囲な活動を通して暴露を最小化し人が発生させる水銀放出を削減するためにすべての国が目標を採択し行動を取ることを促進するための水銀プログラムが国連環境プログラム〔the United Environment Programme(UNEP)〕によって2003年に確立された。
2009年2月にUNEPの統治会議(Governing Council)は決定的ステップを取り、2013年の統治会議の第27回通常国会に先立ち、それらに結論するための目標を持った水銀に関するグローバル・リーガリー・バインディング・インスツルメントについて交渉を始め、その交渉プロセスは2013年1月20日にGenevaにおいて終結した。
2013年10月7日~11日に日本で開催されたDiplomatic Conferenceにおいて署名のために開かれた新しい水銀条約は、1950年に最悪の水銀汚染の発生した日本の都市に因み「水俣条約」と命名されている(詳細はUNEPのwebsiteを参照のこと)。
【EUによる水俣条約の批准と実施】
欧州委員会は、新しい水俣条約への全面的コンプライアンスのために必要である既存のEU政策と法令を変更するための全般的なアセスメントを約束している。委員会はこのタスクを実施するためコンサルタントに支援されている。
この課題の文脈においてステークホルダーコンサルテーションミーティングが2014年7月7日にブラッセルにおいて開催された。コンサルタントの報告の序文の所見はこの機会に提供された。すべてのステークホルダーは2014年7月31日までに文書でコメントを提出するために招待された。
入力はEメールでCOWI(CC:Pavlos Mouratidis)または郵送で行う。送信者が明確に秘密扱いとしていなければ、受領されたすべてのコメントは秘密扱いとされず委員会のウェブページに公開される。加盟国と他のすべてのステークホルダーから受領された論評と意見(comment and remark)は報告書の最終版に考慮される。最終報告書は2015年の早期に水俣条約批准パッケージの準備をサポートする。
【歯科用アマルガム】
歯科用のアマルガムはEUにおける二番目に大きな水銀の意図的使用であると特定された。欧州委員会によるコンサルテーションに従い、環境と健康リスクコミッティー(SCHER)と緊急で新規特定健康リスクコミッティー(SCENIHR)は2008年に意見を発行した。その意見は、欧州委員会により更なるアクションの正当性を十分に提供しないものであった。しかし、2010年の「Review of the Community Strategy Concerning Mercury」において委員会はさらにその問題を調査する必要があることを特定した。
1)http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32008R1102
2)http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32011L0097
(瀧山 森雄)