電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2015.10.30
2015年7月2日にいわゆる「台湾RoHS」に関するWTO/TBT通報(G/TBT/N/TPKM/208)が出されました。
通告された台湾RoHSは、特定製品についてCNS15663-102年版〔2013年7月30日(電機電子類設備降低限用化學物質含量指引:Guidance to reduction of the restricted chemical substances in electrical and electronic equipments)〕による認証申請、制限物質含有状況表示宣言(限用物質含有情況標示聲明書:Declaration of the Presence Condition of the Restricted Substances Marking)や表示が要求されます。
この宣言はEU RoHS指令の適合宣言書(DoC)のイメージで、商品検査法第49条(市場監視の商品検査)で当局が疑義を感じた場合などで、28作業日(当初10作業日)以内に関連文書で適合性を説明することが求められています。
適用は、公布日から現行法と並行適用され、台湾歴106年(西暦2017年)5月1日に現行法が停止され、新法に切り替えられます。
商品検査法第3条では、指定輸入農工鉱製品は検査対象とされ、第5条で経済部標準検験局(BSMI:The Bureau of Standards, Metrology and Inspection)により検査がされます。
検査方法としては、次の4方法です。
商品検査法第6条により、検査基準に満たない製品は製造、輸入ができません。
各商品の検査基準、検査方式はBSMIが公告によるとしています。
103年度中央政府予算案決議で、電気電子製品の検査基準はCNS15663-102年版とされ、第5節の「含有表示」が要求されました。
CNS15663の適用範囲は、交流1,000V、直流1,500V以下の電気(電機)電子製品で、軍事製品の適用除外などが附録Cに収載され、用途の除外は付録Dに収載されています。
対象製品等は関連資料とともにBSMIで公開されています。「含有表示」対象は付録Aで次の6物質が示されています。
台湾RoHSは、商品検査法による電機電子製品を対象とした商品検査方法として、従来の基準に「含有表示」〔CNS 15663(102年版)第5節〕が追加されるものです。台湾RoHS法が存在するのではなく、商品検査法による検査品目追加と検査方法の追加の公告案が台湾RoHSに相当するものです。
公告「含有表示」が追加されるのは次の6商品で、C.C.Cコード(最初の6桁がHSコードで、それに台湾独自の記号追加)で明確化されています。
(1)対象製品
WTO通告の英語版では、認証登録申請モジュールも記載されています。
品目 | C.C.Cコード | 認証登録申請手順 |
---|---|---|
パソコン | 8471.30.00.00-8等 | モジュールII+III 又は型式検査 |
プリンター | 8443.31.00.00-2A等 | モジュールII+III 又は型式検査 |
複写機 | 8443.31.00.00-2B等 | モジュールII+III 又は型式検査 |
テレビ | 8528.72.00.00-0等 | モジュールII+IV 又はII+V 又はII+ VII 又は 型式検査 |
モニター | 8528.59.10.00-5等 | モジュールII+IV 又はII+V 又はII+VII 又は型式検査 |
PCモニター | 8528.41.00.00-8等 | モジュールII+III 又は型式検査 |
モジュール方式による検査方式はEUのCEマーキングに類似しています。
I | 企業適合宣言 |
II | 製品試験 |
III | 型式一致宣言による書面審査 |
IV | ISO9000の審査結果による書面審査 |
V | |
VI | |
VII | 訪問検査 |
(2)使用制限物質の含有状況表示声明書
日本のJIS C 0950に類似した、制限物質の含有表示表の作成が要求されます。
日本のJISや中国RoHS管理規則では、ユニット単位で含有基準値を超えていれば「×」マーク、超えていなければ「○」マークを表示します。
台湾RoHSでは、「×」マークに代えて「0.1wt%を超過(超出0.1wt%)または0.01wt%を超過(超出0.01wt%)」とし、用途の除外項目(付録D)は「-」マークを付けます。
この含有状況を使用制限物質の含有状況表示声明書として作成します。公告案に表示例が示されています。
含有状況の表示は、商品本体、包装、ラベルまたは取扱説明書に記載します。ウェブサイトで含有状況を開示している場合は、URLを商品本体、包装、ラベルまたは取扱説明書に記載します
(3)認証登録申請
商品試験登録申請または型式認可申請をする場合は、「使用制限物質の含有状況を表示する位置」「含有表示表」「声明書」等を提出します。
認証の有効期限は3年とされています。
一般的に、電気電子製品はモジュールの組合せによる商品試験登録申請が行われ、型式検査(含むロット検査)は、少量生産商品で使われています。
認証登録申請は、検査基準の追加となるものです。
(4)商品検査マーク
検査結果によりマークが決まります。
基準値を超えていない | 基準値を超えている | |
---|---|---|
商品試験登録(RPC) | ![]() |
![]() |
型式検査+ロット検査(TABI) | ![]() |
![]() |
XXは使用制限物質の化学記号で、カドミウムと鉛が制限値を超えている場合は、RoHS(Cd,Pb)のように記述します。
ロゴに示されている30001の5桁の数字は、申請者の番号です。登録費用については、FAQに例示があります。
(5)関連事項
検査についてはFAQ(商品檢驗業務 常見問答集)があります。このなかに費用についての項目があります。
2015年8月の説明会資料では、前記部分の解説とともに、8試験機関名も示されています。
また、測定はIEC62321によることや、合理的な管理としてEN50581やISO9001をベースとしたQC080000(IEC Quality Assessment System for Electronic Components)などの品質管理を要求しています。
台湾RoHSはEU RoHS指令をベースとしつつも、中国RoHSや日本の資源有効利用促進法によるJIS C 0950に類似した内容といえます。
中国RoHSの改正の動きが気になるなかで、有害物質の含有表示、根拠文書の整備やマネジメントシステムの要求などが、中国RoHSの改正内容を示唆しているように思えます。
(松浦徹也)