電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2016.02.19
2016年7月21日に有効期限切れとなるRoHS指令附属書IIIに収載された適用除外用途については、多くの電気電子製品で活用されているものもあります。そのため、RoHS指令の動向としては読者の関心が非常に高いものとなっています。
欧州委員会からの委託を受けて適用除外用途の追加や見直し等の調査を行っているOeko-Institutは、2月2日、附属書IIIに収載された4種の適用除外用途(パック7)の調査結果を取りまとめた最終報告書を公表しました1)。
本調査プロジェクトは2014年12月末に開始され、2015年9月末に完了する予定となっていましたが、報告書の日付は1月21日であり、2月2日に公表されました。
本報告書では、2016年7月21日に有効期限を迎える次の4種の適用除外用途〔7(b)、9(b)、13(a)、13(b)〕について、産業界から提出された更新申請に関する検討した結果、欧州委員会への勧告として次のような内容が示されました。
7(b)については更新申請が撤回されたため延長は行われませんが、13(a)についての勧告は、現状の適用除外用途の対象範囲を変更せず、有効期限を最大期間延長する内容となっています。
一方、9(b)、13(b)についての勧告は、有効期限の延長は認めつつも、更新申請内容を踏まえて現状の適用除外用途の文言を変更し、適用除外用途の対象範囲を限定するよう変更されています。
また、これまで製品カテゴリー1~7および製品カテゴリー10については共通の適用除外用途でしたが、9(b)の勧告では製品カテゴリー1(大型家庭用電気製品)のみに限定した上で、有効期限の延長を3年間のみ認める内容となっています。
附属書III No |
勧告(英) | 勧告 | 終了/見直し期限 |
---|---|---|---|
7(b) | 申請者による申請撤回 | ||
9(b) | Lead in bearing shells and bushes for refrigerant-containing hermetic scroll compressors with a stated electrical power input equal or below 9kW for heating, ventilation, air conditioning and refrigeration (HVACR) applications | 暖房・換気・空調・冷凍(HVACR)用途における定格電力9kW以下の冷媒含有密閉式スクロールコンプレッサのベアリングシェルおよびブッシュに含まれる鉛。 | カテゴリー1:2019年7月21日 |
13(a) | Lead in White Glasses Used for Optical Applications | 光学的用途に用いられる白色ガラス中の鉛。 | カテゴリー1~7、同10:2021年7月21日 カテゴリー8、同9:2021年7月21日 カテゴリー8(体外診断用医療機器):2023年7月21日 カテゴリー9(産業用監視および制御機器):2024年7月21日 |
13(b) | Lead in ion coloured optical filter glass types, or cadmium in striking optical filter glass types or lead and cadmium in glazes used for reflectance standards - excluding applications falling under Ex. point 39 of Annex III | イオンカラード光学フィルターガラス中の鉛、またはストライキング光学フィルターガラス中のカドミウム、反射標準に用いられるガラス中の鉛とカドミウム。 ただし、附属書IIIの39項目に該当する用途は除く。 |
カテゴリー1~7、同10:2021年7月21日 |
Cadmium and lead in filter glasses and glasses used for reflectance standards | フィルターガラスおよび反射標準に用いられるガラス中の鉛とカドミウム。 | カテゴリー8、同9:2021年7月21日 カテゴリー8(体内診断機器):2023年7月21日 カテゴリー9(産業用監視および制御機器):2024年7月21日 |
適用除外用途の更新についてはRoHS指令第5条5項において、「欧州委員会は、正当な理由がない限り、既存の適用除外用途の有効期限日の6カ月前までに更新申請の決定をしなければならない。欧州委員会による更新申請の決定が行われるまで、既存の適用除外用途の有効性は継続する」と定められています。このため本来であれば2016年1月21日までに欧州委員会が更新申請の決定を行わなければなりませんでした。
しかしながら、2014年10月から2015年1月21日までの間に上述のパック7に加え、29種の適用除外用途(パック9)に対する83件の更新申請が寄せられたことを受けて、欧州委員会環境総局のWebページでは、「多数の更新申請が提出されていることから、更新申請の決定には、更新申請日から18カ月~24カ月程度かかるものと見込んでいる」と記載されています。
このことから、最も早い更新申請日(2014年10月7日)に提出された9(b)について今回報告書が公表されましたが、欧州委員会の決定自体は2016年4月~10月頃にずれ込むことが想定されます。また、83件の更新申請を対象とするパック9については、調査プロジェクトが2015年6月に開始され、ステークホルダーからの意見募集を2015年10月まで実施し、2016年3月に終了する予定となっているため2)、欧州委員会の決定はさらにずれ込むことが想定されます。
一方、RoHS指令第5条5項では「欧州委員会による更新申請の決定が行われるまで、既存の適用除外用途の有効性は継続する」ことが、さらにRoHS指令第5条6項では「更新申請が認められない場合には、欧州委員会の決定から12~18カ月後に当該適用除外用途は有効期限切れとなる」ことが定められています。つまり、更新申請が提出されている適用除外用途については、仮に欧州委員会が現時点(2016年2月)に廃止決定されたとしても、猶予期間として少なくとも2017年2月頃までは、当該適用除外用途は有効となります。
多くの電気電子製品で使用されている適用除外用途が対象となっているパック9の内容については、みなさまのご関心が高いことと思います。プロジェクトの完了予定である2016年3月頃には新たな情報も公表されるものと思われますので、これらの動向に関する情報を入手しましたら、本コラムを通じて適宜ご提供していく予定です。
(井上 晋一)
1)
http://rohs.exemptions.oeko.info/fileadmin/user_upload/reports/20160129b_RoHS_Exemptions
_Pack7_Final_Report.pdf
2)http://rohs.exemptions.oeko.info/fileadmin/user_upload/RoHS_Pack_9/RoHS_Ex_Project_Description
_Pack_9_R.pdf