電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2017.05.26
玩具指令は、36か月未満の子供の使用が意図される玩具や口に入れることが意図されるその他の玩具に対しCLP規則において発がん性、変異原性、生殖毒性に分類される化学物質(CMR物質)、アレルギー性芳香物質および特定元素によるリスクに対処するため、それら物質の移動制限(migration limit)および含有制限(content limit)を設けています。そのような制限値が採択された場合、当該物質はその制限条件を含めて玩具指令附属書II付録Cに収載されます。
以下に玩具指令附属書II付録Cへの収載物質の動向を整理します。
1. 2015年11月23日に以下の3指令が公布され、該当物質に課される制限が2017年5月24日と11月24日から施行されます。
物質名 (指令名称) |
CAS番号 | CLP区分 | 制限値 | 施行日 |
---|---|---|---|---|
ホルムアミド (Directive(EU)2015/21151)) |
75-1-7 | 生殖毒性1B | 200mg/kg以上を含む発泡体玩具材料で、放出試験から最大28日後で、20μg/m3 (放出限界) | 2017年5月24日 |
1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン (Directive(EU) 2015/21162)) |
2634-33-5 | 皮膚感作性 | EN71-10:2005、EN71-11:2005に規定されている方法にしたがい水性玩具材料中5mg/kg(含有限界) | 2017年5月24日 |
下記の物質からなる反応混合物:5クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン[EC no. 247-500-7]および 2-メチル2H - イソチアゾル-3- オン[EC no.220-239-6](3:1) (Directive(EU) 2015/21173)) | 55965-84-9 | 皮膚感作性 | 水性玩具材料中1mg/kg(含有限界) | 2017年11月24日 |
5-クロロ-2-メチル-イソチアゾリン-3(2H) -オン (Directive(EU) 2015/2117) |
26172-55-4 | 区分外 | 水性玩具材料中0.75mg/kg(含有限界) | 2017年11月24日 |
2-メチルイソチアゾリン-3 (2H) - オン (Directive(EU) 2015/2117) |
2682-20-4 | 区分外 | 水性玩具材料中0.25mg/kg(含有限界) | 2017年11月24日 |
ホルムアミドは、溶剤、可塑剤あるいは発泡体の発泡剤として使用されています。
1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンは、ホビー用ペイントやフィンガーペイントなどの水性玩具の防腐剤として使用されています。
「5-クロロ-2-メチル-イソチアゾリン-3 -オン」と「2-メチルイソチアゾリン-3(2H)-オン」の3:1のからなる反応混合物、および「5-クロロ-2-メチル-イソチアゾリン-3(2H)-オン」はそれぞれが、ホビー用ペイント、フィンガーペイント等の水性玩具の防腐剤として使用されています。
2. 2017年5月3日に官報公示されたDirective 2009/48/EC附属書II付録Cを修正する委員会指令(COMMISSION Directive(EU)2017/7744)ではフェノールの制限値が適用されています。
物質名 (指令名称) |
CAS番号 | CLP区分 | 制限値 | 施行日 |
---|---|---|---|---|
フェノール (Directive(EU) 2017/774 |
108-95-2 | 変異原性2 | EN71-10:2005およびEN71-11:2005に規定されている方式に従い、ポリマー材料中5mg/l(移動制限) | 2018年11月4日 |
フェノール(CSA 番号 108-95-2)は樹脂接着木材(resin-bonded wood)製造においてフェノール樹脂用モノマーとして使用され、ポリマー中のフェノール抗酸化剤(phenolic antioxidants)の分解により玩具中のフェノールが増加する原因となっています。フェノールはゲーム機のコンソール、子供用テントおよび包装フィルム等からの放出が確認されています。そして、浴室玩具やその他の膨張式玩具でのテスト結果、ポリ塩化ビニール(PVC)中に存在していると考えられています。フェノールはシャボン玉製品や水溶性インキ(例えば、フェルトチップマーカーペン)のような水溶性の液体玩具の保存剤として使用されています。フェノールは、CLP規則において変異原性区分2に分類されています。
口に入れることが意図される点では類似性のある食品接触材料に使用されるモノマーとしてのフェノールに対する一般的移動量制限があるものの、移動量制限を導出する基礎となる仮定は玩具中のモノマーとしてのフェノールに対する移動量制限とは違っています。保存剤としてのフェノールの使用制限は食品接触材料に対しては規制されていません。
(瀧山 森雄)
1)http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:32015L2115&from=EN
2)http://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/TXT/PDF/?uri=CELEX:32015L2116&from=EN
3)http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:32015L2117&from=EN
4)http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:32017L0774&from=EN