電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
現行のRoHS指令では、製品の表面にコーティングを何層かした場合、結論としてトータル重量ではなく、コーティングの各層を分母として含有率を測定して、各層ごとに判断すべきだと考えます。つまりそのどれか1つの層でも閾値を超えるとその製品は不適合となります。
RoHSでは規制物質の均質材料中の含有率を以下のように定めています。
含有率を計算する分母である均質材料(homogeneous materials)はRoHS指令では定義されていず、2006年8月に改定されたFAQの2.3項で以下のように説明しています。
均質材料とは、異なる材料に機械的には分離できない材料を意味する。
「均質」とは「全体にわたって均一な組成」であることであり、例として単一のプラスチック、セラミックス、金属、合金、紙、ボード、樹脂、コーティングがあげられる。
「機械的な分離」とは、材料が、ねじの取り外し、切断、破砕、研削、研磨など機械的なプロセスによって分別されることを意味する。例えば、
この説明から、前述の通りコーティングの各層を分母として含有率を測定して、各層ごとに判断すべきだと考えられます。分離の手法については「FAQでの定義は、試験サンプルは機械的に分離されたものに限るということではないので、分析目的のために化学的方法をもってすることも可能だ」という見解も示されていますので注意が必要です。
また、日本のJ-Moss(JIS C0950)では均質材料自体の定義はRoHSと同様ですが、付属書中の「含有率算出の考え方」の項で、「基準値の分母」をつぎのように示しています。
「(基準値の分母は)塗装、印刷、めっき等の単層。また、複層の場合には、それぞれ単層ごとの状態。ただし、複層を分離してそれぞれの単層ごとの数値を求めることが困難な場合には、分離可能な最小単位を均質な単層とみなす」
「困難」をどの程度と判断するかはケースにより異なってくると思いますが、デューデリジェンス(なすべきことをする)を踏まえてご参考となさってください。
なお、中国RoHSでは、標準SJ/T11363-2006「電子情報製品中の有毒有害物質の限度量に関する要求」で、「金属めっき層には鉛、水銀、カドミウム、六価クロムは故意に添加してはならない」とされています。「故意に添加してはならない」については、「『電子情報製品の汚染制御管理方法』良くある質問(四十六問答)」で、要約しますとつぎのように説明しています。
ご参考ですが、現在EUではRoHS指令改訂の検討が進められています。その欧州議会の改訂草案では、
を均質材料と定義することが提案されています。今後の情報に注意が必要です。