EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2010.12.10
2010年11月30日に、REACH規則の段階的導入物質の最初の登録が終わりました。 登録義務のあったものは以下の3分類の物質です。
登録物質数は段階的導入物質の3,400を含めて4,300、登録ドシエ数は2万4,675件(2010年期限は2万723件)との発表がありました1)。予備登録からは、物質数は約4,700、登録ドシエ数は2万5,000-3万8,000件と予測されていましたが、予備登録された物質や件数は予測より少なかったようです。
内訳は以下の通りです。
登録の種類 | 提出ドシエ数 | 登録完了 | ||
---|---|---|---|---|
合計 | 2010年期限 | 合計 | 2010年期限 | |
通常の登録 | 19,702 | 17,174 | 14,265 | 12,312 |
輸送用の分類された中間体 | 3,544 | 2,692 | 2,699 | 1,979 |
オンサイトで分離された中間体 | 1,429 | 857 | 1,037 | 492 |
合計 | 24,675 | 20,723 | 18,001 | 14,783 |
共同提出と個別登録の内訳は以下の通りです。なお、このうち唯一の代理人による提出は19%です。2011年2月末までには、すべてのドシエがチェックされ詳細なデータが公表されます。
内訳 | リード登録者当たりの メンバー平均数 |
|
---|---|---|
共同提出:リード登録者 | 12% | |
共同提出:メンバー登録者 | 82% | 6.7 |
個別登録者 | 6% |
約400のCMR物質は、150以上の水性毒性物質が登録されているとのことですが、Candidate-ListのSVHCのうち27物質が登録されていると発表されています。登録された段階的物質のリストを確認しますと、つぎの26物質が登録されていることがわかりました。
# | SVHC | EC# |
---|---|---|
1 | 4,4'-ジアミノジフェニルメタン | 202-974-4 |
2 | アクリルアミド | 201-173-7 |
3 | アントラセン | 204-371-1 |
4 | アントラセンオイル | 292-602-7 |
5 | アントラセンオイル、ペースト | 292-603-2 |
6 | アントラセンオイル、ペースト、軽質留分 | 295-278-5 |
7 | コールタールピッチ、高温 | 266-028-2 |
8 | アントラセンオイル、低 | 292-604-8 |
9 | フタル酸ブチルベンジル | 201-622-7 |
10 | フタル酸ビス2-エチルヘキシル | 204-211-0 |
11 | フタル酸ジブチル | 201-557-4 |
12 | フタル酸ジイソブチル | 201-553-2 |
13 | ヘキサブロモシクロドデカンおよびすべての主要な異性体 | 247-148-4 |
14 | トリス(2-クロロエチル)ホスフェート | 204-118-5 |
15 | トリクロロエチレン | 201-167-4 |
16 | ピグメントレッド 104 | 235-759-9 |
17 | ピグメントイエロー 34 | 215-693-7 |
18 | ホウ酸 | 233-139-2 |
19 | 四ホウ酸二ナトリウム無水物 | 215-540-4 |
20 | クロム酸ナトリウム | 231-889-5 |
21 | クロム酸カリウム | 232-140-5 |
22 | 二クロム酸ナトリウム | 234-190-3 |
23 | 二クロム酸カリウム | 231-906-6 |
24 | 三酸化ヒ素 | 215-481-4 |
25 | ビストリブチルスズオキシド | 200-268-0 |
26 | 二塩化コバルト | 231-589-4 |
注) #は筆者の整理番号。
#19の四ホウ酸二ナトリウムについては、無水物以外に水和物もCandidate-Listに収載されています。登録物質リストには水和物はリストされていませんが、登録では無水物と水和物は同一物質とされていますので、発表の27物質には水和物も含めているのではないかと考えています。
2010年12月1日までにCandidate-Listに収載されたSVHCについては、成形品に0.1%以上含まれている場合、その用途が登録されていますと届出は不要となりますが、1t以上になりますと、2011年6月1日までに届出が必要です。
登録物質の情報については、企業秘密以外のものが公表されます。すでに186物質について公表されています。その情報には、用途の情報も公表されています。2010年以前に登録された未公表の情報は、2011年3月1日以降には公開されます2)。例えば、樹脂の可塑剤として広く使用されている4種類のフタル酸エステル類については、登録に可塑剤の使用として登録されていますと、届出は必要がないことになります。ただし、供給先や消費者から要求があった場合の情報提供は、登録されていましても義務は引き続きあります。
2010年8月30日に、11物質がCandidate-Listへの収載のためのパブコメが募集されていました3),4)。11物質のうちトリクロロベンゼンの3種類の異性体はSVHCに特定できないが、残り8物質をCandidate-Listへ収載することが加盟国委員会で合意されました(12月3日発表5))。8物質のうち2-エトオキシエタノール以外は登録されています。
また、2010年7月1日に発表された附属書XIVに収載する認可物質8物質の勧告案6)についても加盟国委員会が合意しました5)。この結果、附属書XIV収載される物質は2009年6月1日に出された勧告案の中の6物質4)と合わせて14物質となります。
1) http://echa.europa.eu/news/pr/201012/pr_10_23_registration_deadline_20101201_en.asp
2) http://echa.europa.eu/news/na/201010/na_10_59_dissemination_20101018_en.asp
3) http://echa.europa.eu/doc/press/pr_10_16_svhc_consultation_20100830.pdf
4) /well/reach/column/100924.html
5) http://echa.europa.eu/news/pr/201012/pr_10_24_msc_20101203_en.asp
6) http://echa.europa.eu/consultations/authorisation/draft_recommendations/recommendations_en.asp
(林 譲)