EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2011.09.09
2011年8月29日に、ECHAからCandidate Listに収載する候補が公表され、2011年10月13日まで意見募集が行われています。これらの物質については、提案の附属書XVの説明書が2011年8月1日までに提出されたものです。
#9の4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールは、今回初めてCMR以外の物質として、57条(f)に該当する内分泌かく乱性物質として提案されています。
#4、5 の耐火セラミック繊維は、すでにCandidate Listに収載されているものの組成と異なる組成の耐火セラミック繊維が、すでにCandidate Listに収登録されたことにより、この種の耐火セラミック繊維は、CLP規則の調和された分類に従い、発がん性カテゴリ1Bの有害性に分類されることから、全ての組成をカバーすべきとして、再提案されています。
すなわち、すでにSVHCとして収載されている「耐火セラミック繊維」は、CLP規則(EC No 1272/2008)附属書VI、パート3、表3.1のインデックス番号650-017-00-8の範囲であり、次の2つの条件a、bを満たす繊維とされていました1)。
今回の提案は、耐火セラミック繊維の組成を、主成分のaの条件(Al2O3とSiO2およびZrO2の組成)で規定するのでなく、添加されるアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物(Na2O+K2O+CaO+MgO+BaO)の組成を18%と等しいかそれ以下の組成の耐火セラミック繊維と規定しています。すべての組成の耐火セラミック繊維をカバーするものです。
#7、20はCMR物質ですが、まだ登録されていません。EU内では、1t以下しか生産されていないか、輸入されていないことになります。
今回候補となりました物質は、これまですでに収載されている六価クロム、鉛化合物が追加されています。
気になるものとしては、これまで汎用の溶剤として広く使用されていた、#11、12、15等が、将来、EUでは認可対象になりますと、工業的には代替の検討を早く進めないといけないように思われます。
今回の候補物質が、このままCandidate Listに収載されますと、これまでの53物質に加え、18物質が加わりますので71物質になることになります。
# | 物質名 | EC# | CAS # | 提案SVHC 特性 |
主な用途 |
---|---|---|---|---|---|
1 | トリス(クロメート)ニクロム | 246-356-2 | 24613-89-6 | 発がん性 | 金属表面処理剤 |
2 | ヒドロキシオクタオキソ二亜鉛酸二クロム酸カリウム | 234-329-8 | 11103-86-9 | 発がん性 | 防蝕剤 |
3 | クロム酸八水酸化五亜鉛 | 256-418-0 | 49663-84-5 | 発がん性 | 防蝕剤 |
4 | アルミノシリケート耐火セラミック繊維(RCF) | - | - | 発がん性 | 断熱材 |
5 | ジルコニアアルミノシリケート耐火セラミック繊維 (Zr-RCF) | - | - | 発がん性 | 断熱材 |
6 | ホルムアルデヒド、アニリンとのオリゴマー反応生成物 | 500-036-1 | 25214-70-4 | 発がん性 | 合成原料。エポキシの硬化剤 |
7 | フタル酸 ビス(2-メトキシエチル) | 204-212-6 | 117-82-8 | 生殖毒性 | 未登録。ポリマー、ペンキ、インクの可塑剤に使用 |
8 | 2-メトキシアニリン;o-アニシジン | 201-963-1 | 90-04-0 | 発がん性 | 染料原料 |
9 | 4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、(4-tert-オクチルフェノール) | 205-426-2 | 140-66-9 | 57条 (f)同レベルの懸念物質 | ポリマー原料。接着剤、コーティング材、インク、ゴム成形品成分。 |
10 | 1,2-ジクロロエタン | 203-458-1 | 107-06-2 | 発がん性 | 合成用原料。溶剤 |
11 | ビス(2-メトキシエチル)エーテル (ジエチレングリコールジメチルエーテル) | 203-924-4 | 111-96-6 | 生殖毒性 | 反応用溶剤。電解質用溶剤。その他用途の溶剤 |
12 | ヒ酸 | 231-901-9 | 7778-39-4 | 発がん性 | セラミックガラス溶融体からの脱泡剤。多層回路基板の製造 |
13 | ヒ酸カルシウム | 231-904-5 | 7778-44-1 | 発がん性 | 銅、鉛、貴金属製造用輸入原料に存在。精錬工程中にヒ酸カルシウムと酸化ヒ素に変換し。ヒ酸カルシウムは廃棄、酸化ヒ素はさらに使用される。 |
14 | ヒ酸鉛 | 222-979-5 | 3687-31-8 | 発がん性、生殖毒性 | 銅、鉛、貴金属製造用輸入原料に存在。精錬工程中にヒ酸カルシウムと酸化ヒ素に変換し。ヒ酸カルシウムは廃棄、酸化ヒ素はさらに使用される。 |
15 | N,N-ジメチルアセトアミド (DMAC) | 204-826-4 | 127-19-5 | 生殖毒性 | 工業的溶剤 |
16 | 2,2'-ジクロロ-4,4'-メチレンビスアニリン(MOCA) | 202-918-9 | 101-14-4 | 発がん性 | ポリマー架橋剤。他の物質原料。建設、芸術用途 |
17 | フェノールフタレイン | 201-004-7 | 77-09-8 | 発がん性 | 実験室用、及び医用指示薬 |
18 | アジ化鉛,ジアジド鉛(Ⅱ) | 236-542-1 | 13424-46-9 | 生殖毒性 | 起爆剤、発火装置の開始剤 |
19 | スチフェニン酸鉛 | 239-290-0 | 15245-44-0 | 生殖毒性 | 小口径とライフルの弾薬のプライマー。民生用花火、粉体作動装置と起爆装置 |
20 | ビスピクリン酸鉛 | 229-335-2 | 6477-64-1 | 生殖毒性 | 未登録。アジ化鉛、スチフェニン酸鉛と同様爆発性。同様用途 |
1)http://echa.europa.eu/chem_data/authorisation_process/candidate_list_table_en.asp
(林 譲)