EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2013.03.29
2012年5月18日付けコラムにおいて取り上げていましたChesarのver2.2が2013年3月6日にリリースされました。
Chesarとは「Chemical safety assessment and reporting(化学物質安全評価および報告書)」を意味しています。Chesarは、化学物質安全性評価(CSA)を行い化学物質安全性報告書(CSR)を作成する義務のある企業の支援を目的にECHA(欧州化学物質庁)により開発されたITツールです。
本件に関連するECHAのリリースの概要を以下に紹介します。
Chesar ver 2.2はREACHの物質登録者が幾つかの簡単なマウスクリックを行うことで彼らの化学物質安全性評価からサプライチェーンに対する情報交換のために暴露シナリオを生成することを可能にしています。このことは、物質登録者の安全性データシステムに対する情報を手作業で移行すること、および/または安全性データシートの附属書に化学物質安全性報告書の全体の章をコピーする手間を回避することを支援することとなります。
Chesar 2.2は、また2013年3月初めに欧州化学産業協議会(Cefic)により刊行されたESComフレーズカタログをChesar互換形式(compatible format)に取り込むことが可能である旨を提案しています。
Chesarの新機能により物質登録者は、包括的な化学物質安全性報告書を作成するだけでなく、化学物質安全性報告書と十分に一貫性のある作業者、消費者および環境に対するリスクをどのように制御するかに関する川下使用者向けの拡張安全性データシートを生成するためにChesarを使用することができます。
ESComカタログおよびChesar暴露シナリオのレイアウトへのリンクは、サプライチェーンにおける安全使用に関する情報の標準化に向けた第1ステップであると位置づけられています。
Chesar 2.2は使用者の作業を効率化するよう利便性に関するいくつかの改善点を含んでいます。新バージョンの詳細な情報はリリースノートおよび関連するユーザマニュアルで利用可能です。
上記ユーザマニュアルの「パート0 イントロダクション」に以下の記載があります。
Chesarは物質の異なる使用に対する標準的な安全性評価を実行するための構造化されたワークフローを提供しています。同時に、評価されたデータまたは他の暴露評価ツールに基づいた評価を適応させるに十分なツールです。
このツールは暴露評価とリスク特定に求められる情報を構造化し透明性のある化学物質安全性評価(CSR)の生成の促進を支援します。
Chesarを使用するために物質登録者は物質の性質、物質の用途、関連するトン数帯および使用時の条件について利用できる十分な情報を持っていることが必要です。それらを入力することにより、ツールは予測無影響レベル(the predicted no-effect level)と比較し、暴露評価を算出します。この比較の目的は物質の安全な使用が確立されるかどうかです。
Chesarにより提供される作業者の暴露評価は「ECTOC TRA worker」ツールを使用して算出されます1)。
環境暴露評価は「EUSES 2.1 fate model」に基づいています。消費者暴露評価は「ECETOC TRA consumer」ツールを用いて算出されます1)。
Chesarは、その他の暴露評価ツールまたは評価されたデータに基づいた評価を支援しますが、暴露評価の自動算出はできません。
物質の危険性が特定され、予測無影響レベルが利用できない場合、Chesarは質的なリスク特定化により、暴露シナリオ構築を支援します。データ交換機能により、Chesarは物質登録者または産業共同者により十分に準備された評価または評価ビルディングブロック(評価構成要素)の再利用を可能とします。この機能は用途記述および安全使用条件記述の産業間の調和を促進します。
ECHAはChesarの使用者に対し、将来の更新のためにツール使用に関するフィードバックをするよう奨励しています。
(瀧山 森雄)